テーアイ飛空012便墜落事件③:チーム結成
○レイル=バルタザーレ(カカナ連邦 飛空艇事故調査委員会 テーアイ飛空012便墜落事件チーム主任捜査官)の証言
「そのとき私は、難問だった別の事件を苦労の末どうにか解決し、報告書を提出し、やっとゆっくり週末を迎えられると、自宅でビールを開けようとしたところでした。
箱形の秘書ゴーレムが『調査委員会から緊急』と鳴いて通信を繋げ、セントラル島の沖でエデ帝国の飛空艇が失踪した、という連絡を入れてきました。招集です。
『週末はまた今度か』
と思いながら、今抱えている仕事を他の人間に引き継がせ、事故調査委員会へ向かいました。
飛空艇事故調査委員会は、カカナ連邦での飛空艇事故に関する調査と原因究明、そして対策の研究と勧告を行う、連邦政府直属の国家機関です。
今回のケースではカカナ連邦の海で起きた事故のため、我々は情報と資材を集められるだけ集めました。
そして事故機が、キシー藩国の要人を乗せていたのだと分かりました。
これは大事になるぞと思い、メンバーを集めました。精鋭をね」
○ミリィ=セレネイド(カカナ連邦 連邦飛空局 空獣害防除課 国家魔術師)の証言
「私の仕事ですか?
私は普段は空港の空獣害、鳥とかペリュトンとか、滅多にないけどハーピーとかワイバーンとかが飛空艇や牽引用ゴーレムに悪さしないようあれこれ見張る仕事をしてます。出来るだけ傷つけないように追い払うのでけっこう大変なんですよ(と彼女は金髪を揺らして苦笑)
で、その日はオックスラント空港で、飛空艇にグリフォンが近付いてくる騒ぎがあって、それをなんとか解決した直後でした。
師匠のとこのガルがいきなり空港にやってきて、
『セントラル島沖で飛空艇事故が発生しました。調査チームへの参加をお願い致します』
って相変わらず綺麗な銀髪と綺麗な女の子の顔で言うもんだから、
『え? なんの話?』
って聞き返したんですね。でガルはいつもの無表情で、
『セントラル島沖で飛空艇事故が発生しました。調査チームへの参加をお願い致します。詳細は現地にてバルタザーレ捜査官からお聞き下さい』
『なんで私?』
『マスターの推薦です』
『師匠の?』
『バルタザーレ捜査官は調査チームを結成中です』
『なるほど』
まぁ私も普段からダークスターの一番弟子で一番美人な弟子って言いまくってますから、無理もありませんわねって思って、防除課の上長に話を通して、セントラル空港に行きました。ガルも一緒に。
で、着いてみてセントラル空港の一室に作った対策室で、初めて調査チームの顔合わせをしたんですね。
びっくりしちゃいましたよ。
なにしろ調査チームに、エデ帝国の軍人さんがいたんですから」
○アキラ=ムラセ(エデ帝国 派遣調査官)の証言
「セタ様の乗った飛空艇が消息不明だと聞かされたのは、ちょうど登城したときでした。
まず思ったのは
『与太者どもの仕業か?』
というのも、殿は藩国王に就任してすぐ、藩国内で狼藉を働く無宿の博徒どもの駆逐に邁進しました。この無頼漢どもは闇市場を形成し、不正な品や取引が藩国内で横行する温床となっていたのです。
代々悩みの種であった彼らを見事に一掃し、健常な状態にすることに成功した殿の勇名は帝国中に轟きました。
我が殿は大将軍の継承権があり、大将軍になった暁には、帝国の中でのさばる悪漢どもを成敗して下さると皆が口にしました。
そしてその一斉摘発の任を拝命されたのが、ご家老のセタ様だったのです。
ですので、あの輩どもが報復のためにセタ様を抹殺したのではないかと思ったわけです。
殿はセタ様の悲報を聞くや、すぐにご公儀にカカナ連邦に協力を申し出るよう進言し、私を派遣調査官として調査チームのメンバーになるよう命じられたのです。
つまり私は、エデ帝国側の調査担当として参加し、必ず012便を発見しなければなりません」
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