第30話
「ここは浴場か……元は旅館だけあって脱衣所も浴場も広いな」
脱衣所は二十人は同時に入れる程に広く、風呂場も内風呂は檜で作られた巨大な浴槽にサウナまで完備してある。更には露天風呂まであり、これから毎日増えるであろう美少女たちが身体を清めるには絶好の場所と言えるだろう。
「しかし汚れてるなぁ……いや、放置されてたんだから当然として掃除しなくちゃな」
「それならボクに任せてくれないかな?」
「カナリアさん?それならお願いしたいけど……君のような天才錬金術師に掃除をさせるなんて……」
カナリアさんは買って出てくれるのは嬉しいのだが、天才錬金術師がブルーカラーのような仕事を任せることに若干の抵抗を覚えていると彼女は俺の肩を叩き。
「あははは!心配はいらないさ!ボクがするんじゃなくて、錬金術で生み出したゴーレムたちにさせるのさ!それに拠点の改造を頼んだのは召喚師様だろう?ふふふ、このボクの錬金術とゴーレムたちによって立派なモノにしてあげようじゃないか!」
「それならお願いしようかな。どんな風に風呂場が変わるのか今から楽しみだ」
「あっはっはっ!ボクに任せてくれたまえ」
天才錬金術師カナリア・ゴードンは大の改造好きである。彼女のゲームの設定ではとりあえず物の発明と改造が趣味なのである。ストーリーモードでは鉱物を自動生成する画期的な錬金術を発明し、金を含む希少鉱物の価値を暴落させ、カッコいいからと意味もなく作った巨大ゴーレムを作っては敵国に奪われて街の一つが更地になったりと、彼女の偉業に対して汚点となる逸話が枚挙とある。
カナリアはしっかりと手綱を握らないと何を発明と改造を施すか分かったものじゃないから監視しとかないとヤバいな……カンダムの写真を見て作りたいねぇと零してたし。
天才であるが故にその才能が暴走しないようにカナリアに対する召喚師としての責任を強く心に誓う。それはそれとして彼女がどんなものを作り、改造するのか楽しみでもあるが。
「さてと、カナリアさん。それじゃ次の場所に行こうか。君が改造したくなるような場所がこの旅館にはきっとたくさんあるはずだよ」
「それもそうだね!いやぁ……こんな大事な拠点を全部がボクの手で弄っていいなんて楽しみで仕方ないよ!」
「カナリア……分かっていると思いますが、これはマスター様の大事な拠点。あまりおふざけをなさるのは許しませんよ」
「ん~?あはは、ボクだってそこら辺はしっかりと弁えているさ。それに何かあったら召喚師様がボクのことを止めてくれるんだろう?」
その目には信頼と期待が宿り輝いていた。凡人である俺に全幅信頼を寄せるカナリアに若干気圧されながらも、俺はこくりと頷き、無邪気な笑みを見せる彼女の姿にマキナは嫉妬の色を隠そうともせずに睨む。
俺はその姿にそっと頭に手を乗せて。
「みんなで仲良くやろう。中にはどうしても合わないメンバーがこれから増えるにしても、この程度でそんな嫉妬の色を見せたらこれからが大変だぞ?」
「……ッ!はい……私が軽率でした……」
「気にするな。これから気を付けてくれればいい。それにマキナは俺の妻なんだし嫉妬の一つや二つは可愛いものだ」
「ッ……ッ!!はぃ……」
顔を俯かせて俺の腕に身を預けるマキナを可愛いと思いながら、思い思いに地球の浴場を見て回る美少女たちに声を掛ける。
「おーい、そろそろ次に行くぞ!次はお前たちがこれから暮らす部屋となる客室を見回そうじゃないか!」
「主と共に過ごすに相応しい部屋を探さなければな!」
「私は主様のお傍で常に危険から御身を守る部屋に」
「それならば某も!」
「ボクは自前で研究室を増築しようかな」
「月の導きのある部屋で魔力チャージをするのです☆」
【お兄ちゃんの中で私はずっと一緒だよ……えへへ】
50部屋以上ある旅館だから今はまだキャパシティに余裕があるが、あと二ヶ月もしないうちに美少女が60人以上に増えて、いずれは従業員用の離れの方も改築しなくちゃなぁ……幸いにして錬金術師のカナリアの力で建物なんて一瞬で改築、改造を施せるとしても次は食料の問題が出てくる……うーん、問題は山積みだ。
俺の掛け声に反応する美少女たちを見ながら、これから日に一人というペースで爆発的に増大する新たなる美少女たちのことを考えて眉間に皺が寄ってしまう。世界は異能者たちにより大混乱に陥り、物流が滞った社会の中では食糧危機は目前に迫った避けられない事態だ。
「カナリアさんは錬金術で食糧を作れたりしない?」
「むぅ?錬金術で食糧そのものの錬成は厳しいねぇ……ゴーレムたちを使って農耕を始めたりは出来るだろうけど、金属を錬成するように食べ物を作ることはボクには出来ないよ」
「となるとドルイド系の美少女を召喚するしかないって訳か……」
流石に錬金術は食べ物を生み出す程に万能ではないようだ。味覚を気にしないのであれば味のない栄養食のような固形物は錬成出来るらしいが、流石にそんな食生活をこれから増える美少女たちに提供するのは心苦しい。
低レアリティに土属性の魔法や豊穣を司る権能を持つ美少女たちが居るので彼女たちを引く幸運に恵まれることを祈りることになりそうだ。
「ほれ、なにをそんな辛気臭い顔をしておるのだ主!これから我ら番いの部屋を探そうと言うのだぞ?くはははは!ほれ気合を入れんか!」
「ぐむっ……ちょっ、そんな強く首をホールドすると息が――」
フェラブルは俺の肩を引き寄せたかと思うとそのまま首をホールドして強引に引っ張っていく。だがそのおかけで袋小路に入りかけた心は解放され、ガッチリ掴んで離さない細く引き締まった腕と僅かな獣の匂いを放つワイルドな彼女によって頭が切り替わる。
「主は一人で考え過ぎだぞ?全く全くもって、我らが何の為にいると思っているのだか呆れるわ……だが、少しぬけている方が尻の叩き甲斐のある雄で我好みに育てられそうで楽しみだ?くはははは!」
「俺たちは一応は主従関係にあるのだけど……ごふっ」
「ぐははッ!今更何を言うのだ!我らはもう番いであり夫婦!妻として背筋の伸びきらん夫の背を正すのは当然のことだろう!――ほれ、この部屋など良いではないか、物はなく殺風景であるがこれから我らの色に塗り替えようではないか」
完全にフェラブルにペースを握られたまま一階にある大部屋へと向かわされる。元は家族向けの客室であったのか間取りは広く、だが彼女の言うように家具のない畳だけの埃被った部屋は哀愁が漂っていた。
俺はただ広いだけの味気ない和室を眺めていると――
「確かにこれなら自由に家具を置け――――えっ?」
「さて、棲み処の決まった番いのやるべきことをやろうか、主よ」
――気が付けば天と地がひっくり返り、畳の上に転ばされ天井を見上げる俺の胴体の上にフェラブルは肉食獣の笑みを浮かべて俺の上に跨っていた。
「もう我慢出来ん。番いになったというのに交わることもせんとは……奥手にも程があるぞ?」
「ちょっ……ちょっと待って!みんなの前で流石にこれは――ってあれ!?みんな何処に行ったの?!」
俺は跨がれて上半身が上手く動かせないままに首だけで助けを求めるように部屋の入口を見ると、マキナさんを除いた他のメンバーは退出していた。そして気が付けば体内にいるはずのフィスターニちゃんまで空気を読んで居なくなっており。
「既に他の者とは話が付いておるわ!大人しく観念せい!」
「いつの間に話を付けたの?!って、そんな無理やり服を引き裂かなくても……ッ!」
気が付けば俺は服をひん剝かれ、脱ぐと言う行為すら我慢出来ないほどに興奮しているのかフェラブルも自らの服を引き千切り互いに産まれたままの姿で俺は組み敷かれ、金色の瞳が大きく見開き熱い吐息が眼前から吹かれる。
「ふぅー……ふぅー……もう辛抱堪らんな。色恋などと無縁だった我がこれだけ雄である主を求めるなどと、過去の我に聞かせても絶対に信じなかっただろう」
あっ、完全にスイッチ入ってる。もうだめだ、これは何を言っても絶対に止まらない暴走列車状態だ。フェラブルの体力が尽きるまで俺は間違いなく絞り尽くされる!というか、さっきから能面のようにこちらを見つめているマキナが怖い……ッ!
俺はもう覚悟を決めたし、身体の方も完全にフェラブルに反応しちゃってるのでこのまま抱かれるのも問題ないのだが、何故か一人だけ部屋に残り俺たちの交わりを冷徹な瞳で観察しようとしているマキナが気になって仕方がなかった。そして俺の視線がマキナに向いていることに気付いたフェラブルは俺の顔を掴み強引に視線を合わせたあと――
「今は我だけに集中しろ。あの人形のことは忘れてただ互いに貪り合うのだ」
「そう言われても……あんなにガッツリ見られていると――んっ……ッ!」
「んっ……ぷはっ!我が忘れさせてやる……あの人形のことなど意識に付け入る隙も与えないほどに夢中にさせてやるからな……主よ」
――肉食獣のような貪るようなキス、その瞳には嫉妬と情欲の炎を灯して熱く火照る身体を四肢に絡ませて優しく締め付ける。
「我の主……我の夫……我の番い……あぁ、たっぷり我に相応しい主となるように身も心も染め上げてやるぞ……もう二度と他に番いを作ろうと考えられない程に溺れさせてやる」
これが肉食系女子ってやつなのかな……?
――マグマのように熱く、タールのように粘着質な情欲に歪みきったフェラブルの囁きに意識を飲み込まれながら、凶暴な人狼に心身ともに骨の髄までしゃぶり尽くされることになるのであった。
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