第4話 やあ、何を争っているんだい ?

為すべき事を成してケンタローは彼自信の異世界へと辿り着くことができた。

やがて、ケンタローは帰路に就こうとした。が、しかし思えばブラウニーはテイムされていたのだが……

ケンタローはその事に気が付いたけれどブラウニーは気を失ってしまったので知らなかったんだよね。


人や獣人なんて、テイムしたことがないからケンタローもどうしたら良いのか分からない。

ブラウニーの立派な家から出て「バイバーイ」と言って帰ろうとした。

「帰っちゃうの ? なんか寂しい。 こんなの初めて……」


そう言われると黙って帰るわけにもいかず、ケンタローはテイムしてしまった事を正直にありのまま話したのだ。


「あー、それだ ! その通りよ、もう離れられないって感じ。フフフ、嬉しい ! これからはケンタローの使い魔なんだね。可愛いがってよ !」

「ひょっとしたら怒られるかと思ったんだ。受け入れてくれて良かったぁ」


しかし、今までのように同じ勇者パーティーなら良かったかも知れないけど、ケンタローは追放されてしまったので明日からは別々の道を行かなくてはならないのだ。


二人は話し合いをして、主従関係はハッキリしたけれど主人と使い魔としてはこれからどうしたら良いのか分からなかった。

ケンタローの考えとしては聖女として活躍するブラウニーを無理に連れ去るまではしたくないと彼女に伝えた。


なのでとりあえず各々の家に帰って、又いつか会おうということになったんだ。

ケンタローは意気揚々と小さな自宅に帰り、ブラウニーは淋しい気分で家に入った。

彼自信の殻を見事に打ち破ったケンタローは肩の上に乗ったスライムと共に意気揚々と自宅に向かった。

見るもの全てが輝いて見えるし身体もとても軽く、空も飛べそうだった。


あれっ ? んんっ ? おかしいぞ ! 男を磨いて軽くなった気がする、よりももっとずっと軽いぞ。そういえば魔力も漏れ出る程に感じるしな。童貞じゃなくなると、こんなに身体や魔力がパワーアップするのか ? 聞いたことないな。


ケンタローは試しに指先をライトの魔法で光を照らしてみたんだ。

すると、物凄く眩い光が指先から放たれて目つぶれるかと思うほどだった。

「うわあーーーーー 眩しー ! ってか、どんだけ眩しいんだーー !!」

「キューーーー !!!」


あー、自分で突っこみたくなるほど眩しかったぜ !

スライムもこっちを見て怒ってる。

"眩しいなら、先に言って"

"ゴメン、ゴメン"

ケンタローは言葉にしなくても魔物と念話で通じ会えるスキルを持っていた。


やっぱりそうだ ! 魔力が溢れそうだ。鑑定してみると、全体的にステータスが上がっていて、特に魔力は大きく上がっていた。


回復魔法はヒールしか使えなかったけど、ハイヒールどころかグレートヒールまであるし、魔法防御何てのまである。どういうことだ ?

強い魔物をテイムすると、主人のテイマーのステータスが上がるんだけど、こんな劇的な変化は珍しい。あっテイムマネージャーからテイムマスターに昇格してる。


使い魔のステータスが高ければ高い分だけ上げ幅も大きいんだ。

聖女ブラウニーをテイムした事が俺のステータスに影響したのは間違いない。

しかし、ここまでパワーアップするとは驚いたな。

あっ、だからさっきの二度目の必殺技がパワーアップしたのかも知れないな ? なるほど ! これは暫く検証が必要だな。


「ただいまー !」

"おかえりバウ"

小さな家の前には使い魔の魔狼コテツが待っていて、念話で答えてくれた。

コテツは町の中では姿を変え子犬に扮している。頭を撫でてあげると喜んだから、もっとワシャワシャしてあげたんだ。



翌朝

勇者パーティーを追放されてしまったので特にすることも無いけど、今日からは一人でやっていかなければならないんだよな。

厳しいけれど俺には使い魔の仲間がいるだけありがたい。コテツとスライムを連れて町を出た。


「あいつらはいるかな ? コテツ、頼むよ」

「バウー。 ワオウーーーーーーー !!」

ピューーーーーー !

魔狼コテツは分かった、と答えた後、遠吠えで仲間を呼んだ。

俺も指笛で使い魔を呼ぶ。


すると、待っていたかのようにすぐに、使い魔の3頭のダークウルフが現れた。

ブルーコンドルも肩に降りてきた。

「良ーし、良い子だ」

そう言って撫でてあげると彼等は喜んだけど、コテツも呼んだ俺も褒めてと言わんばかりにスリスリしてきたので、ワシャワシャと可愛いがってあげた。


ブルーコンドルは上空に飛び立ち、何か異変があれば知らせてくれる。

勇者パーティーの時は勇者バーキンよりも目立つと嫌な顔をされるから、気を配ってコイツ等は陰ながら支えてくれていたんだけど、ソロなら自分のやりたいようにすれば良いからね。


弱い魔物をどんどん倒して進む。ゴブリンの左耳のような討伐証明部位や売却できそうな部位は魔法の袋に回収するんだ。あと、オークや鳥などのお肉もね !


すると突然、ブルーコンドルから念話で"前方に多くのゴブリンを発見"と伝えてきた。


息を殺して近づくと、ゴブリン同士で争っているようだった。

前の方では下っ端ゴブリン同士が殴り合い、メイジゴブリンの風魔法や土魔法も飛び交っているな。


いったいどうなっているんだ ? 気でも狂ったのか ? ゴブリン同士の戦争なのか ?


訳が分からなかったのでダークウルフ達に聞いたんだ。

「この森はゴブリン同士の争いが多いのか ?」

「バウー ? 」と答えたよ。これは多分、わかんない、だな。

聞いた相手が悪かったね。都合が悪いと念話じゃなくって狼語かよ。


しょうがないから近くに行って調べてみることにした。

木の陰に隠れてゴブリンの様子を窺っていると、すぐ後ろに居たウルフが聞いてきたんだ。


"コイツら食べて良いのか ?"

「えっ、もしかしてお前達の好物なのか ? とても旨そうには見えないけど……」

"不味い ! でも、腹へって死にそうなら食べる"



しっかりと隠れて、ケンタロー本人は、完璧だ、絶対に見つかって無いだろう、と思っていたけど、ケンタローの後ろから、ダークウルフ達とコテツが付いて来ていたので、ゴブリンの集団に、あっさりと見付かってしまったよ。あ~あ。


わーっと争ってさわがしかったゴブリン達に緊張きんちょうが走り、一瞬の静寂せいじゃくが訪れた。

ゴブリンにとってダークウルフは天敵だったんだ。

それを率いるのは魔狼なのだ。最悪だ ! ゴブリンにとっては、絶体絶命のピンチだしね。


近くに居るゴブリンはきっと、恐怖で震えが止まらないだろうね。


しかし、そこに普通の人間が一人ポツンと居るのだ。

何故だ ? 魔狼の活き餌か ? 彼らは理解に苦しんだ、それが静寂に輪をかけたのだった。


ケンタローはゴブリン達が静止し固唾かたずを呑んで見守る中で、見つかってしまったものは、もうしょうがないと思い、

"やぁ、こんにちは。何を争っているんだい ? " と、念話で挨拶をしてみたんだ。



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