第2話 聖女やのにあかんやろ !

レアスキル性鑑定を手に入れたケンタローはシャイな普通の青年でチェリーなテイマーなんだ。

彼は良い思い出となるような大人の階段を登りたいと夢見ているのだが…… さてさて。

初めての鑑定は冒険者エイプリル:美しさD、スタイルD……、状態 処女、最後に特筆 いつでも受け入れ可だった。


これは凄い、夢に一歩近付いたぞと思いつつ、周りを見渡して次のターゲットを探す。

ギルドは朝の出発ラッシュはとうに終えて、昼前にのんびり出てきた冒険者がポツポツといる程度だけど、それなりに人はいた。


勝手に鑑定するのは犯罪では無いものの、マナーとしては良いものでは無い。

感度の高い者には気付かれるし、自分の態度や雰囲気でバレることもある。

こういったやり取りは鑑定持ちとして俺も相当の経験を積んでいるから安心して欲しい。


バレなければチラ見と同じでどうってことはないけど、相手が盗賊や殺し屋だったら消されるかもしれない。なので安全な知り合いから、チラッと鑑定するのだ。チラッと。


えっ ? カッコ悪いって ?

全然モテないし、うだつの上がらないチェリーな俺は普段からこんなことしか楽しみが無いのさ。

あんたも女性の胸やスカートのチラチラする足元が少しは気になるだろ ? 倫理 ? そうだよ。倫理を越えてはいけないね。その線を越えたらアウトなのさ !! これはモテない男のロマンと倫理との終わり無き戦いなんだ !!!


あっ。熱く語っている場合じゃ無いぞ ! ターゲットを見つけた。美人冒険者のミリアだ。

美しさB、スタイルB、状態、通常、特筆、最低でも200万G(日本円で約200万円)

なっ ! 何だと ? 前から可愛いと思って、チラチラ見ていたミリアちゃんは200万だと ! 何て高級なんだ !

しかも、最低ということはそれでも足りないかも知れないという意味だね…… ちょっと現実的な考えからすると無理かな ? いつかミスリル鉱を当てるかも知れないから一応メモしといて…… 次… 次行こー !


あっ、美人女性店員のローリエさんを鑑定してみよう。

美しさB、スタイルC、状態、妻、子1円満、特筆、夫が今死亡したとして、更に半年待てば50%


何 ? ローリエさんはあの若さで旦那、子持ちなのか ? 知らなかった。それとも若く見えるだけなのかな ? イヤイヤ、やぶ蛇はやめておこう。

それに、なんと言っても特筆が厳しいぜ ! 身持ち堅過ぎだろ。キレイなお姉さんだと思っていたけど、ムリゲーだな。


こうやって全てが分かってしまうと、俺のような魅力の少ない奴には、普段いかに無駄なことをしてるのかって気付いてしまうな。だって誰がどんな気持ちだとか、何を内緒にしてるとかなんて全く分からないからね。


うーん。そんなに簡単にはいかないのか ? 何なら最初のエイプリルにお願いしても…… 等と、既に妥協案に流されかけていたら、ギルドの外をさっきまで同じ勇者パーティーだった、超美人で金髪ロングの聖女ブラウニーが通り掛かったんだ。


ブラウニーは町行く人の多くが振り返る程の美女なので、女性にシャイな俺は込み入った話なんてしたことないけど、仲は悪くないんだ。


鑑定してみた。美しさA、スタイルC、経験人数120人、特技、童貞喰い、名器、指性技、状態フリー、特筆、童貞を餌に拝み倒せ !


さすがっ、美しさAなんて初めて見たよ ! スリムだけどスタイルCなのは胸の影響かな ? だけど貧や微は越えているはずだ ! 鑑定さん、厳しいな ! えっ ? ブラウニーさん ! 120人って、特技童貞喰いって、聖女やのにあんたあかんやろ ! アウトー !! アウトやー !!


この鑑定スゴいなー。普通ならこんなの絶対分かんねーよ。

しかし待てよ。今までの鑑定を見返してみると、ブラウニーは美人で俺みたいな掃いて捨てるほどいる並の男なんて相手にしないだろうと思っていたけど、案外そうでもないみたいだぞ。


しかし、どうすれば良いんだ ? 弱ったぞ ! どうしよう ?

ええいままよ、今までの人生もずっとこうしてどうしよう ? とかばっかり言ってっからダメだったんだよ。

せっかく話もできる元だけど仲間なんだから、ここは覚悟を決めて鑑定先生の言う通りに拝み倒すしかないだろう !


とりあえず、さりげなくギルドを出てと。

「あっ、ん、ん」 ……テケテケテケ

うん、ドキドキすると、さりげなくは案外難しいぞ !

ケンタローはブラウニーの後を追った。


「や、や、やあブラウニー ! ぐ、偶然だね(汗)」

「はぁい、ケンタロー 何か色々と大変だったみたいね」

そう言われて、今さっきバーキンに追放を告げられた、人間だった時の記憶を思い出した。

ケンタローは性鑑定と女の子のことで頭が一杯になってしまい、サル並の知能になっていたのですっかり忘れていたんだ。


「あっ、うん、そうなんだ。さっきさ、勇者パーティーの資格は無いってバーキンから追放されちゃったんだぜ。最悪だよ」

「ああ、そっか。私もリーダーから聞かされて驚いたのよ。私はいつも後ろから見てて資格が無いとは思わないわ。私がもっと力があれば守ってあげられたかもしれないけど、新入りだからできなかったんだ。ケンタロー頑張ってたのにね。大丈夫 ? 」


「大丈夫かな ? ブラウニーがそう言ってくれると救われるよ。ハハハ」

ケンタローは力無く笑った。

ブラウニーは、その寂しそうな笑顔にちょっぴりドキッとした。


「元気出せよ、少年 !」

「うん、ありがとう。ってか俺が少年って年かよ !! 確かにブラウニーはお姉ちゃんて呼んでも良い感じだけどさ」

「年上の私から見たら少年だよ。んっ ? 今の良いわね、もう一回呼んでみてよ」


「何を ?」

「お姉ちゃんて……」

「えー ? 良いけど、変なの。 おねーーー ちゃん !!」

「キャンッ !」

ブラウニーは更にドキッとした。


「え ? あっそう言えばさ俺、実はまだあっちは未経験なんだよね……

それで、ブラウニーお姉ちゃんみたいな素敵な人にいろいろ教えてもらえたら嬉しいんだけどな !」

「私なんかで良いの ? あばずれだよ」

「えっ本当 ? 教えてくれるの ? やったー !!!!!」

「そういうとこが少年なんじゃない ?」

「ブラウニーが手を引いてくれるなら、少年でもショタでもなんでも良いよ !」




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