第113話 恩賞授与
週末、僕とラクネはダイスくんに言われた服飾屋に来ていた。
どんな高級店だろうかと心配していたけど、前にラクネとフレイの別荘に行く前に来た店だった。
「ダイスくんなりに気を使ったのかな?この店だったらあんなにしないよね?」
僕は前に来た時の価格を思い出して言う。仕立ててもらっても高くて金貨1枚くらいだった筈だ。
安くはないけど、ダイスくんはこの何倍もの金額を言っていた。
「謁見用だし高いのかもしれないよ」
ラクネはそう言うけど、僕は中途半端に払える金額だと僕達が払うと言うと思って、ダイスくんがわざと高く言ったと思っている。
「話はしてくれてるって話だし入れば分かるよ」
「そうだね」
僕達は店の中へと入る、
「いらっしゃいませ。あれ、あの時のぼっちゃんじゃないですか。あの時は助かりました。お陰様でお客様に喜んでいただけました。本日は何をご入用でしたか?」
「あの、国王様に謁見する用の服をつくってもらいにきました。先に話はしておくと聞いてはいますけど……」
僕は店主に用件を伝える
「ぼっちゃん達がそうでしたか。偶然もあるものですね。デザインなどはこちらに任せていただけると伺っておりますが、よろしかったでしょうか?」
「はい。お願いします」
何がいいとかわからないので任せないと困ってしまう。
「お嬢様の分の仕立て代は頂いていますが、ぼっちゃんの分はご自身で払われると聞いていますがよろしかったですか?サービスをさせては頂きましたが、金貨4枚になります」
「え、あ、はい。大丈夫です」
ダイスくんから聞いていた金額よりは安いけど、普通に高かった。
ダイスくんからは金貨5枚くらい掛かると言われていたから、大分サービスしてくれたのだと思う。
ローザ経由で売った石鹸のお金とか、前にこの店で売った糸のお金があるので問題はない。
元々創造で創った物で得たお金は使うつもりはなかったのだから、眠っていたお金が使われるだけだ。
「それでは採寸しますので、こちらにお願いします」
僕達は採寸される。
「それでは仮縫いまで終わりましたらご連絡致しますので、もう一度サイズの確認をさせて頂きます。その後本縫いして引き渡しとなります」
「わかりました。お願いします」
数週間経ち、服は完成した。
僕の服はもっと早く出来ていたようだけど、ラクネの服に時間が掛かったようだ。
やっぱり女物の服は高いだけあって、作りが細かかった。
勝手に派手なドレスを想像していたけど、完成したのはドレスではあるけど、装飾の少ないシンプルな物だった。
舞踏会に参加するわけでもないし、考えてみれば当然か。
褒美の準備も終わったようで、遂に恩賞が授与される日になってしまった。
これで今日から準男爵か……。気が重い。
でも褒美のことを考えると待ちに待ったとも言える。
まあ、僕がお願いした褒美には準備の時間が掛かりすぎるので、もらったところで完成するまでは意味をなさないのだけれど……。
寮の前で待っていると、豪華な馬車が迎えに来た。
ラクネが既に乗っている。
ダイスくんは別で既に城に行っているらしい。
「その服、やっぱり似合ってるね」
「ありがとう。エルクくんも似合ってるよ。でも高い服だから汚さないか心配で……早く着替えたい」
「ははは、そうだね。僕もこの服は窮屈だから早く脱ぎたいよ」
ラクネと話しながら城へ向かう。
僕もだけど、ラクネもかなり緊張しているようだ。
城に到着して、待合室みたいなところに通される。
しばらく待っているとダイスくんが入ってきた。
「準備は万端って感じだな」
ダイスくんが言うけど、全然万端ではない。万端なのは見た目だけである。
内心ガクガクしている。
「そろそろなの?」
僕はダイスくんに予定を聞く
「今は定例の会議をしているはずだ。それが終わったら親父が王座に移動して準備が出来次第始まる」
「失礼のないように教わった通りにやればいいんだよね?」
「親父の前で片膝をついてジッとしていれば勝手に進行していく。爵位をもらう時だけ教えた通りにすればいい」
「間違えたらどうなるの……?」
難しいことではないけど、緊張で頭が真っ白になるかもしれない。
「どうもならない。貴族が陞爵するなら完璧にこなさないと周りの目があるから、その家としてマズいことになるが、2人の場合は間違えてもそれはよくある光景だ。周りも緊張しているのを理解しているから何も問題ない。ただ、発言には気をつけろよ。わからなくなったらしゃべるな。返す言葉を忘れたなら無言で頷いておけばいい」
それを聞いて少し安心した。
「うん、わかったよ」
それからしばらくして、王の間に入るように言われた。
僕達は緊張しながら王の前まで行き、片膝をつく。
とりあえず、ダイスくんと同じことをしていれば大丈夫だ。
恩賞をもらう理由に関しては勇者の件が極秘になっていることから、詳しくは話されなかった。
国として長年探し求めていた装備を見つけて献上したことになっている。
勇者という部分を隠しているだけで、間違ったことは言っていない。
僕達は黙って話を聞く。
その後も聞いていた進行通りに進んでいき、爵位をもらった。
緊張していたけど、なんとかやり遂げた。
体がカチカチでうまく動いていなかったような気がするけど、大きなミスはなかったと思う。
最後に褒美の話になる。
褒美が爵位や領地など、他の貴族にも関係する事であれば、ここで内容まで言われるようだけど、僕とラクネはそんなものを望んではいないので、別室に用意してあると言われた。
だけどダイスくんの褒美は別だ。
今まで軟禁されていたお母さんの罪を無かったことにする。もちろんダイスくんのお母さんは王妃なのでこれは大きな意味を持つようだ。
参列している貴族の多数は話を聞かされていなかったようで、部屋の中がざわついた。
貴族の中にはフレイのお父さんもいた。驚いていないところを見ると、前もって聞かされていたようだ。
他の貴族の人は見たことがないので知らない。ローザやアメリの親もいると思うけど、会ったことがないので分からない。わざわざフレイのお父さんが城まで来ていることを考えると、今回の為に遠方の貴族も呼びつけたと思われる。
理由は恩賞の件ではなく、王妃の罪が許された件を伝える為だろう。
多分、落ち着いている人はダイスくんの派閥で、ざわついている人が第二王子の派閥なんだろう。僕は勝手に予想する。
その予想通りだとすれば、ダイスくんの派閥は少ないようだ。
ダイスくんがわざとらしく周りの貴族をぐるっと見た後、僕達は王の間から退出した。
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