第44話 反省室②

僕は2試合目のレポートを作る。


課題は自分達のチームならどう動くかだ。


僕は土魔法で籠城した側と籠城された側の2パターンのレポートを書く。


まずは籠城した側だ。

元々このチームが勝っているから大きな問題は無い。

強いて言うなら相手が土壁をすぐに破壊出来ない事と、増員がない事が前提の作戦だ。

土壁が破壊された後の動きはわからないけど、まとまってしまっているので不利にはなるだろう。


僕達のチームがこの作戦をするなら、僕とラクネで土壁を作って、土壁の上からダイスくんが遠距離攻撃を仕掛ける

相手の魔力が無くなるのをじっと待つ必要はない。こちらからも攻撃してより多くの魔力を使わせるべきだ


次は籠城された側だ。

こっちは正直難しい。

僕達のチームで出来る作戦は思いつく限りだと2つだ。

まずは正面突破。力技で壁を破壊しにいく。

試合と違うのは全魔力を使ってもいいくらいの勢いで突っ込む。温存を考えたらダメだ。壊しても修復されたらその分の魔力は無駄になる。

もう一つは水又は火責めだ。


あの土壁は上側は空いていた。なので上から水魔法で放水する。壁の中に入れるだけなら難しくはない。

水を排出するために動けばそこが弱点になる。


火責めなら土壁の周りを徹底的に燃やす。中まで熱が伝わるように。魔力が無くなるのが先か、暑さに耐えられなく出てくるのが先かの我慢比べだ。火魔法を使えるのは僕とダイスくんなので、暑さから逃げ出してきた所をラクネが仕留める。


よし、うまくまとめれたと思う。


「僕の方は出来たよ」


「こっちも終わってるぜ」

既にダイスくん達の方は終わっていた。


見せてもらう。


「うまくまとまってるだろ?昔から書類仕事はやってたからこういうのは得意なんだよ」


ダイスくんの言う通り、うまくまとまっていた。

内容の方は正統派って感じだった


「確かにキレイにまとまってるね」


「だろ?エルクのも見せてくれよ」


僕はレポートを2人に見せる


2人はレポートを見る


「う、うん。まとまってるね」

ラクネは複雑そうな顔で言う


「ラクネ、ちゃんと言わないとダメだ。この作戦はえげつないと。騎士道精神が欠如していると」


僕の考えた作戦は不評のようだ。


「ダメかな?火魔法とかかなり勝率が高いと思うけど……」


「本当の殺し合いなら良いと思うけど、あれは模擬戦だ。ルールにはないが暗黙の了解で絡め手は使わない」


それは知らなかった。


「知らなかったよ。じゃあそこの部分だけ消して提出しようか」

僕は正面突破だけにしようする


「いや、これはこれで面白いからこのまま提出しよう。これも経験だ。どんな評価が返ってくるかも気になるしな」


「評価が下がったりしない?」


ダイスくんが一文追加する

「これで良しっと」


僕は追加された一文を見る

“実戦を想定する場合”


確かにこれなら問題なさそうだ


「よし、今日の分は終わりだな。ここからは遊ぶぞ!」


「この部屋で何するの?荷物持ってかれたから何もないよ。」


「うーん、それもそうだな。」


「とりあえず、休憩しようか。結局肉を食べたから、これは食べてないでしょ?」

僕は炭酸入りのオレンジジュースとチーズケーキを3つずつ取り出す


「そうだな、結局飲んでなかったな」

ダイスくんはオレンジジュースを飲む。炭酸初体験だ


「おおうぅ。あー、これは癖になるな」

ダイスくんはお気に召したようだ


僕達は反省室でお茶会をする。

チーズケーキを食べた後はクッキーとチョコレートを出す


どうでもいい話で盛り上がっていると先生が見回りにやってきた。

僕はすぐにお菓子とジュースをアイテムボックスにしまう


「ちゃんといるか?」

先生が中を確認する。ギリギリしまうのが間に合った


「はい、いますよ。大丈夫です」

ダイスくんが返事をして扉を閉めようとする


「待て!」

先生が声を上げる。もしかしてバレたか?


「な、なんでしょうか?」

僕は確認する。少し動揺が表に出てしまった


「なんで全員この部屋にいるんだ。男女同じ部屋で良いわけがないだろ!ラクネくんは向こうの部屋に行くように!」

僕も少し思ったけど、やっぱりダメなようだ。


「え、え?」

ラクネが先生に連れられて行ってしまった。


「行っちゃったね」


「ああ、よく考えたら男女は別の部屋だったわ。忘れてた。初等部で入った時は1人だったしな」


「ラクネを仲間外れにして続けるのも気が引けるし、そろそろ寝る?」


「そうだな。少し早いけど寝るか」


僕達は反省室で就寝した。


結局、何も反省はしなかったな。


翌朝、反省室を出るとラクネが待っていた


「私が出て行った後もパーティを続けたの?」

ラクネにとってあのお茶会はパーティだったようだ。

確かにお誕生日会みたいに考えればジュースとケーキにお菓子が並んでたらパーティかもしれない。

ケーキも前にお嬢様が食べる物って言ってたし


「ラクネがいないと盛り上がりに欠けるからあの後すぐに寝たよ」


「ほんとに?」


「本当だよ。また今度続きをやろう」


「うん、約束だよ」


「その時はちゃんと俺も呼んでくれよ」


「もちろんだよ」


「よっしゃ!先生に反省文提出して高等部に行こうぜ!」


ちなみにダイスくんは僕が言ったまま『ごめんなさい、反省してます。ご迷惑をお掛けしました。もうしません』と反省文に書いていて先生に内容が無さすぎると怒られていた。


高等部に行くのはもう少し後になりそうだ

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