第43話 反省室
僕達は教員に連れられて、高等部の指導室に来ていた。
「君はダイス君だね。そっちの小さいのは初等部だよな?ここで何してる?授業はどうした?」
初等部でも間違えられたけど、やはり僕は中等部の生徒には思われないらしい。
「あの、僕も中等部の生徒です」
「それにしては小さすぎる気がするが……ドワーフやエルフではないよな?」
「先生、こいつがエルクです。飛び級してるのでまだ小さいんです」
ダイスくんが説明してくれる
「ああ、君が噂の子か……」
どんな噂なのかすごく気になる
「俺達は授業の一環で模擬戦の見学をしていました。騒ぎを起こしてしまったことに関しては謝りますが、悪い事はしていません。観戦しながら昼食を食べていただけです」
ダイスくんが観戦していたかについては疑問が残る
「確かにあそこでの飲食は禁止していないし、火器の使用も制限していないが、あんな事をすればどうなるかの想像くらい出来なかったのか?」
この先生の言うことは間違っていない
反論する余地が残っていない
「すみませんでした。以後気をつけます」
僕は謝ることにする。迷惑を掛けたのは確かだ。
「3人とも中等部の生徒なんだよな?」
「はい」
「指導については中等部の教員に任せることにする。中等部に戻ったら、指導室に向かうように。私からあちらの先生には話をしておく」
「わかりました。ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
僕達は指導室を出て中等部に馬車で帰る
「結構、大事になっちゃったね。ごめんね、僕が肉を焼こうなんて言ったから…」
「いや、俺たちも止めなかったんだ。エルクのせいだけじゃねえよ。それに試合が終わるまでずっと食い続けてたのは俺だ。その前に片付けておけば問題にはならなかった」
「うん、私もずっと食べてたし。エルクくんだけの責任じゃないよ。お肉美味しかったし、怒られたけど後悔はしてないよ」
「そうだな。あんな美味い肉食ったんだから、怒られるくらいなんでもねえよ」
「うん、ありがとう」
「食うのに夢中で聞いてなかったんだが、あの肉は何の肉だ?」
「……あの肉は僕の故郷の肉だよ。この辺りには流通してないみたい。僕のアイテムボックスは時間の影響を受けないって言ったでしょ。それで保管できてるだけだよ」
嘘は言っていない。故郷(地球)ってだけた。
「そうか、残念だな」
「3人で食べる分にはまだあるから、また今度食べよう」
実際にはどんだけでも創れるけど、それは言わない
「いいのか?貴重だったりしないのか?」
「別に売るつもりとかもないし、気にしないでいいよ。1人で食べるよりも誰かと食べた方が美味しいしね」
「そうだな!ありがとな」
「うん、ありがとう」
2人とも思うところがあるようで、大きく頷いた
ラクネはお姉さんのことで、ダイスくんは両親の事だろう。
早くお姉ちゃんに会いたいなぁ
村にも帰りたいし……
僕は少しホームシックになる
ワイワイと話しながら中等部に帰ってくる。
指導室に呼ばれているとは思えない空気だ。
指導室に行くと担任の先生が待っていた
「高等部から連絡はもらった。実習先で面倒事を起こすんじゃない。反省はしているか?」
「「「はい」」」
僕達は返事をする
「反省している顔には見えんな。普通なら高等部から帰ってくる間にもっと落ち込むものだ」
確かに悪いとは思ったが、落ち込んではいないな。さっきまで楽しくおしゃべりしていたくらいだし……
「まあ、騒ぎを起こしただけで規則を破るような事はしてないからな。反省室で1日反省するように。停学にはしないでやる。持っているものを全て出せ」
反省室……?僕は牢屋みたいな独房を想像する
「「はい」」
2人は返事をしてしまった。
え、僕はいやだよ……
話は終わったというように、先生は僕達の荷物を持って出て行ってしまった。
「しょうがないし反省室に行くか。停学にならなくて良かったな。まあ停学って言われたら抗議しようと思ってたけど、あの先生はその辺りのラインがわかってて助かるな」
「軽そうに言うけど、反省室ってどんな所なの?」
僕のイメージだと、暗いジメジメした所だ。
「俺も中等部の反省室は入ったことないけど、多分エルクが想像しているよりはマシだと思うぜ」
「その言い方だと初等部では入ったことあるの?」
「ああ、一度だけな。妹がいじめられててな、下級生に魔法を使っちまった。やり過ぎたとは思ってるけど、今でも後悔はしてない」
「……殺してはないよね?」
「バカ、そこまでやってたらここに居るわけないだろ!」
「そ、そうだよね。よかった」
反省室に着いて入るとベットが4つとトイレと机があるだけの普通の部屋だった。
朝までここから出なければ反省したとみなされるらしい。
一応、反省文は書かないといけないので、その為の机のようだ。
まだ子供だとはいえ、男女同じ部屋でいいのだろうか?
このメンバーで間違いが起こる事はないと思うけど……
強いて言うなら、僕がラクネの耳を触るのを我慢できなくなるくらいだ……というか、これを機に触らせてもらいたい。
「うし、サクッと反省文書いてその後はゆっくりしようぜ」
「うん」
反省文なんて書いたのはいつ振りだろうか……。多分、前世の高校生だった時だ。確か…友達とふざけてて教室の窓ガラスを割ったんだったな。
昔の事を思い出しつつ反省文を書く。
精神年齢というか、性格はもう完全に子供だけど、意識すればちゃんと前世の俺が出てくるな。変な感覚だ。
「ヨシ、出来た」
「エルクくん、もう書けたの?」
「うん」
「見てもいい?私こういうの書いた事なくて……」
「いいよ。こういうのはとりあえず謝っておけばいいんだよ。ごめんなさい、反省してます。ご迷惑をお掛けしました。もうしませんって」
「エルクくん、書き慣れてるみたいに言うね……」
前世で何回か書いた事があるなんて言えない
「前に反省文の書き方って本を読んだんだよ」
「なんで、そんなピンポイントの本を読んでるの?」
さすがに苦しかったようだ
「たまたま目に入っただけだよ。勉強の息抜きに読んだんだ」
「ふーん、そうなんだ」
納得はしていないようだ
「俺も書けたぜ」
「ダイスくんも書き終えちゃったの?わたしも早く書かないと」
ラクネは「うーん」と悩みながら書いていく。
この中で反省文の意味を成しているのはラクネだけのようだ。
「やっと書けた」
ラクネも書き終えたようだ
「寝るにはまだまだ早いしなんかして遊ぼうぜ!」
ダイスくんは反省室で遊ぶ気のようだ
「試合のレポートをまとめたりしなくていいの?」
ラクネは真面目にレポートをまとめたいようだ
「そんなのメモだけ取っておいて最後にまとめればいいんだよ。そもそも2試合目を見てねぇ」
ダイスくんは当然のように言い切った
「でも、最後一気にやるのは大変だよ。少しずつやろうよ」
これはあれだな。夏休みの宿題をダイスくんはやらずに最後に焦るタイプでラクネはコツコツと計画通りやるタイプだ。
「そうは言っても、ラクネも試合見てないだろ?」
「みてない。でも時間はあるわけだしやろうよ」
やっぱりラクネも見てなかったようだ
宿題は僕もダイスくんと同じタイプだけど、それは1人の場合だ。
「2試合目は僕がレポート書くから、2人で1試合目のレポート書いてよ。分担すればすぐに終わるだろうから、その後遊べばいいよ」
僕はラクネの肩を持ちつつ、ダイスくんに妥協点を提示する
「エルク、お前なら俺の味方をしてくれると思ったのにな。しょうがない、先にやることやるか。てか、6歳なら何も考えずに遊ぶ方に飛びつけよな」
ダイスくんは渋々ながらもやることにしたようだ。
年齢のことは聞かなかったことにする
「エルクくん、ありがとう」
「先にやった方が気兼ねなく遊べるからね」
そもそも反省室で遊んではいけない気がするけど、それは一旦忘れることにしよう
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