第4話
翌日2人は宿を出るとそのままドーソンの市内を横切って東門を目指して歩く。
西門は王都に続く街道に面しているので往来が多いが、東門を出る人はほとんどいない。背後が山とその間も草原で何もないからこの門から外にでるのはたまに魔獣退治にでる冒険者位だろうと話をしながらドーソンの市内を通り抜けて東門を出るとすぐ目の前に草原そしてその先に高い山々が連なっているのが見えてきた。
「綺麗な景色。それに手を加えた跡がないわね」
門から外にでるとその場で立ち止まってぐるっと周囲を見てアイリーンが言うと、
「その通り。手をつけられた跡がない。自然のままだよ」
草原に入るとしゃがみ込んで土を手に掴んでみてみる。
「ここもいい土壌だ。きっと山からの水が地下水になってこの地面の下を流れているんだろう」
「じゃあここも農作物を植えたらよく育つってこと?」
同じ様にしゃがみ込んでレスリーが持っている土に視線を送りながら聞いてくるアイリーン。
「おそらくね」
そう言って立ち上がると先に行こうとアイリーンを促し2人で再び草原を歩いていく。
膝ほどの高さの草が一面に生えている草原の中を歩いては時折しゃがみ込んで土の状態を見るレスリー、そして1人でうんうんと頷いてはまた草原の中を歩き出す。
日が暮れてきたので草原の中で野営をする2人。お風呂はないがレスリーの癒しの水で2人とも身体はすっきりとしている。そうして周囲にいくつも風を飛ばしてテントの中で夜を過ごした2人は翌日再び東を目指して進んでいった。
そうして2日目の昼過ぎに東の山裾に着くと
「確かに山の中には魔獣がいるわね。気配がぷんぷんしてくる」
「ランクB程度かな?アイリーンなら問題ないだろう。このまま山の中に入ってみよう」
そう言って2人で無造作に山の中に入っていった。アイリーンは抜刀していてレスリーは渦巻を四方八方に飛ばして警戒しながら進んでいると前方で魔獣の気配を感知する。
こちらに気づいたランクBの魔獣が2体襲いかかってきたがそれの攻撃を交わしながらアイリーンの片手剣が一振りされると綺麗に2体の魔獣の首が撥ね飛ばされた。
「うーん、雑魚ね」
「まぁランクBだからね」
エルフのローブと業物の片手剣、そして日々の鍛錬の賜物でアイリーンの戦闘能力は以前よりずっと高くなっている。ドーソンのランクAのトミーが勝てないと言っていたのはお世辞でも何でもなく本当のことだ。
そうして山の中を歩きながら木の状態や下草の生え具合を見るレスリー。アイリーンは周囲を警戒しながら時折2人を見つけて襲ってくる魔獣をあっさりと倒していく。
「私の感知能力の鍛錬もしたいからレスリーは飛ばしてる渦巻が異変を感じても黙っていてくれる?」
そう言うとそれからはレスリーと並んで歩きながら周囲を警戒するアイリーン。隣で見ていたレスリーはアイリーンの探知能力もそこそこあるもんだと感心していた。
「ごめん、正直もっと狭いかと思ってたけど感知範囲が広いな。周囲50メートル位は探知できているんじゃない?」
「そうね。それくらいはあると思うわよ」
とたった今倒した魔獣の魔石を取りながらどや顔するアイリーン。このままアイリーンの鍛錬も兼ねてもうちょっと山の中を歩いてみようとその後も山を歩き回る2人。奥に行くとランクAの魔獣が次々と2人に遅いかかってきたがアイリーンがその身体能力の高さと片手剣の威力で問題なく倒していく。そしてランクAが複数体リンクするとレスリーが風水術で魔獣の足止めをしてそれらをアイリーンが次々と倒していった。
基本レスリーは戦闘をアイリーンに任せて木を触ったり、絡んでいる蔦を切ったりとしながら山の中の探索を続け、そうして日が暮れた頃に山を降りて草原に出てきた2人はそのまま少し歩いた安全な場所で2泊目の野営をした。
「私が見た感じだと山の中は魔獣はいたけどそれ以外は自然のままで何か悪いことがある様には見えなかったんだけど?」
テントの外で食事をしながらアイリーンが言うとその言葉に頷いて、
「山の中は問題ないね。成長している木が沢山生えていた。どれも皆元気な木だったよ」
「それで戻ったら領主様のところに行くの?」
「行くつもりだ。山はともかくここの草原はこのまま放置しておくのには勿体ないしね」
「やっぱり穀倉地帯にするの?」
「いや、それについては俺に1つアイデアがある。とは言っても最終的には領主様が決めるんだろうけどね」
そう言って自分のアイデアをアイリーンに伝えると、それはいいアイデアねと彼女も賛成してくれた。
草原で2泊した3日目、2人はドーソンの街に戻ってきた。東の城門から市内にはいるとゆっくりと市内を歩き、そしてそのままギルドに顔を出して倒してきた魔獣の魔石を換金してもらう。カウンターの上に大量のランクAとBの魔石を置いたアイリーンをびっくりした表情でみる受付嬢。
「これ全てお二人で倒してこられたんですか?」
魔石を見てから視線をカウンターの前に立っている2人に向ける受付嬢。
「そうよ、東の山の中に入ったら結構いたわよ」
と当たり前の顔をして答えるアイリーン。隣でレスリーも頷いている。
カウンターに積まれた魔石の山は酒場からも見えていて、ギルドに入って来た時から2人を見ていた冒険者達がその魔石の山を見てびっくりする。
「おい、何て数だよ」
「しかもランクAの魔石も結構あるぜ」
「トミーが言ってた通りだな。2人であれだけの数を倒してる。あの2人半端なく強いぞ」
酒場では冒険者達がそんな会話をしていた。魔石の査定を依頼したレスリーとアイリーンはその後魔石の代金を受け取るとギルドを出で宿に戻っていった。
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