第2話
それから3日後5人はアルフォードを出て南に向かって歩き出していた。例によってレスリーが街道の左右の様子を見ながらなのでパーティの歩は遅いが誰も気にしていない。
アルフォードから南方面は小さな山がいくつも連なっており、その山間を縫う様に街道が伸びている。そうして歩いている南のずっと先には高い山々が連なっているのが遠目にも見えていた。
「あの山の麓かその奥に最南端の村があるんだな」
起伏のある街道のその上に立ってマイヤーがそう言うと皆が視線を上げて遠くの山々を見る。
「綺麗な景色ね」
マリアの言葉にそうだなと頷き、しばらくその景色を見た一行は再びレスリーを先頭にして街道を歩き出す。右手に小山が見えてくると右に外れてその中を探索しそうして再び街道を歩いて今後は左の小山や林の中と十分に時間をかけて歩くこと4日目、彼らの前にダンジョンの入り口が見えてきた。
このダンジョンは街道から東に歩いて少ししたところにありまだ見つかったばかりでもあり入り口には警備員が詰めている小さな小屋があるだけだった。
リックらが近づくと小屋から警備兵が出てきて
「ダンジョン攻略かい?そこの石板にカードを当ててくれ」
言われるままに5人がカードをあてると
「OKだ。気をつけてな」
「今誰か入ってる?」
「ランクBが1組だな、低層階で鍛錬するって言ってたよ」
ありがとうと言いダンジョンの中に入っていく5人。1階に降りるとそこは石の壁の通路になっているオーソドックスな造りのフロアだ。進もうとしたリックを手で止めたレスリーは杖を前に突き出す。そうすると多数の小さな渦巻きが現れてそれらが一斉に前方に飛び出していった。
「前方の警戒と次のフロアまでの最短ルートを探せる」
「なるほど、こりゃ便利だ」
感心するリック。風を飛ばしてからしばらくすると
「ランクBのパーティはこのフロアにはいない。そして最短ルートはこっちだ。途中にいる魔獣はランクCクラスだな」
「戦う前からそこまでわかれば楽だよ」
「本当ね」
リックとアイリーンが頷き、リックを先頭にして後ろからレスリーが指示する通りに進んでいき、途中で出会うランクCの魔獣を討伐して最短距離で2階に降りる階段についた。
同じ様にして2階、3階をクリアすると4階はランクBのフロアになった。そしてランクBのパーティもこのフロアにいる。
リックらはランクBのパーティを避けるルートで進み、魔獣を倒しながら5層に降りるとそのままダンジョンを攻略していく。レスリーの風の探知で最短距離を移動して9層に降りるとそこはランクBとランクAの魔獣が混在するフロアだった。
渦巻きを飛ばしたレスリーが、
「魔獣が固まってる場所があるな。ランクBだが3体固まっている。そして奥に行くとランクAが単体で通路にいる」
「分かったいずれにしても最短ルートを進もう。魔獣と遭遇したら全員で倒していこう」
リックの言葉に頷くと先頭で歩き出した、後ろからレスリーが分岐があると方向を指示する。
「前方の通路を曲がったところにランクBが2体。俺がやろう」
そう言うと大きな竜巻を2つ作ってそれを前方に飛ばしていった。しばらくして魔獣の叫び声がしたがすぐにその声が消え、リックらがその場所に行くと2体のランクBの魔獣は光の粒になって消えていくところだった。
「もうレスリー1人で行けるんじゃない?」
消えていく魔獣を見ながらアイリーンが言う。
「そんなことはないよ。ただ下に降りると強くなるだろう?魔法は出来るだけ今は使わない方がいいと思ってさ。こっちは風を使ってるから全く問題ないし」
「レスリーの言う通りだ。下に降りた時に疲れてない方がずっといいからな」
リックがレスリーの意見に同意してそのまま進み9層をクリアする。9層の奥にはランクAが単体でいたがリックがナイトのスキルを発動して魔獣のターゲットとなり、レスリーの竜巻とアイリーンの片手剣でさっくりと倒していった。
そうして10層に降り立った5人。レスリーが飛ばした渦巻きから来る情報を皆に伝える。
「魔獣はランクAしかいないみたいだ。そして通路が複雑になってきている。分岐が多いがそれは大丈夫だ。今最短ルートを見つけた」
そう言ってから
「ただ最短ルートだと宝箱を見つけられない可能性もあるけどどうする?」
「風水術でも宝箱まではわからないのね」
マリアがレスリーに聞いてきた。
「このダンジョンは人工物だからね、壁も宝箱も人工物。なので無理だね。魔獣は動いているからこちらの探知にかかるけど」
「マリア、宝箱まで風水術で期待しちゃダメだよ」
リックが笑いながらマリアに言うと
「でもレスリーなら何でも出来ちゃうと思っちゃうじゃない」
その言葉にはレスリー以外の他のメンバーもまぁマリアの言いたいこともわかるけどと言う。
「とりあえずこの10層は最短距離を進もうか。ここまでは攻略されているって話だしさ。そして11層からは時間をかけて探索してみよう」
そうして10層の攻略を開始したメンバー。相手がランクAということでマリアの強化魔法をもらったリックとアイリーンはレスリーの指示通りに通路を進んでいく。
「その角を曲がると1体」
「通路前方から向かってくる」
など事前に敵の動きが分かったので今までのフロアよりも時間はかかったものの危なげなく10層を攻略して11層に降りる階段を見つけた。
階段の踊り場で休憩している時に
「レスリーの指示も的確だけどオズの店で買った装備が本当に優秀だね」
10層でランクA相手に精霊魔法を撃ったマイヤーの言葉に他のメンバーも本当にすごい、効果があるねと同意する。
「アイリーンなんて動きもよくなってるじゃない」
「そうなのよ、マリア。素早さが上がる腕輪をしているんだけど本当に動きやすいの」
皆が休憩しながらそんな話をしている時にレスリーは例によって多数の渦巻きを11層のフロアに飛ばしていた。
「どんな感じだい?」
とマイヤー。
「10層と同じ様な造りのフロアだけど所々でランクAが2体固まっているところがある」
そう言ってから11層からはフロアをしらみ潰しに探そうということだったのでレスリーがその巡回ルートを頭の中で整理して、
「オッケーだ。巡回ルートが見えたよ。魔獣の位置もわかった」
「じゃあ攻略を開始しようか」
そうして立ち上がった5人はレスリーの指示する方向に11層を進み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます