第3話
11層も今までのフロアと同じ石の壁でできている通路だがやけに分岐が多い。同じ様な作りの通路なので何も考えずに進むと道に迷いそうな造りになっている。一行はレスリーの指示通りに通路を進んでいく。時折出会うランクAの魔獣も事前にレスリーからその敵の場所や数を聞いているので慌てることなく討伐して11層をしらみ潰しに探索していた。
「通路の奥に宝箱がある!」
先頭を歩いていたリックが声をあげる。確かに通路の突き当たりの壁の前に茶色っぽい宝箱がポツンと置かれていた。レスリーが手で全員の動きを止めるとその場で小さな渦巻きを作ってそれを宝箱に飛ばしていく。
「大丈夫だ。ミミックじゃない」
ミミックとは宝箱の形そっくりの魔獣で不用意に近づくと蓋が開いてその中にある大きな牙で噛み付いてくるやっかいな魔獣だ。魔獣のランクもAで物理や魔法に対する耐性も高い。レスリーは風を飛ばしてその箱が完全な人工物であるのを確認する。
そうしてリックが宝箱を開けるとその中には腕輪が1つ入っていた。
「腕輪だな。オズの店で鑑定してもらう」
そう言って魔法袋にその腕輪を収納すると再び通路を歩き出していく。
その後も通路を歩き、行き止まりなら奥まで調べながら時間をかけて11層をクリアした一行。出会う魔獣はランクAばかりだ。そして通路が入り組んでいるので迷いがちになる。おそらくこの迷路の様な通路で危険と感じて11層の探索を中止したんだろうというマイヤーの言葉に頷くメンバー。
11層をクリアして12層に降りたところで階段にある石板にカードをかざして地上に戻ってくると外は日が完全に暮れていた。
ダンジョン入り口の近くの草原で野営の準備をして夕食を取りながら
「レスリーがいなかったら迷っただろうね」
「マリアの言う通り、マッピングして進むにしても魔獣の数も多かったし相当苦労するだろう」
マイヤーがそう言ってからレスリーのおかげだなと言うと皆そうだねと頷く。当の本人は風の術しか使えないのをよく知っていて、役に立ってよかったよと言っているが周囲はレスリーの貢献度が高いことは分かっていた。
翌日12層に降りて渦巻きを飛ばして探索するレスリー。
「ここも複雑な造りになっている。魔獣はランクAだ」
「11層と同じ感じ?」
隣に立っていたアイリーンが聞いてきた。
「同じだけど11層よりもフロアが広そうだ」
そうしてリックを先頭にフロアを隅々まで探索していく
「その先の角の右側に2体」
「1体はレスリーが足止めしてくれ」
リックの言葉に分かったというとその場で竜巻を作り飛ばしていく。竜巻の強風で足止めしている間に他の4人で1体を討伐、それから竜巻を消すとフラフラになっていたもう1体の首をアイリーンの片手剣がはね飛ばした。
「ほとんど死んでたわね。これレスリーの竜巻でも普通に倒せたんじゃない?」
ダンジョンの石の床で光の粒になって消えていく2体の魔獣を見ながらアイリーンが言うとその通りだねとリックも言う。
「弱らせることはできるけど倒すまでいくかどうかはわからないよ。安全を考えたら剣や魔法で止めを刺す方がよくないかい?」
「じゃあ次からはレスリーとマイヤーで組んでもらって風水術と精霊魔法で倒してもらおうか。こっちは俺とアイリーンで」
リックの提案に皆同意して再びフロアの探索を始める。ゆっくりと時間をかけて隅々まで見ていき、このフロアでは2つの宝箱を発見し中から腕輪とバンダナを入手した。
ランクAの魔獣を倒しながらのフロア探索なので時間はかかるがそれでも12層をクリアした一行は13層に降りてきた。
「同じ様な造りのフロアが続くわね」
階段からフロアを見ているアイリーンが言っている横で飛ばした渦巻きから情報を得ているレスリー。
「ここも広い。そしてランクAの魔獣は単体じゃなくて複数体固まって徘徊している」
「なるほど。難易度が徐々に上がってきてるな。気を引き締めて行こうか」
リックが言い、マリアが全員に強化魔法をかけてからフロアの攻略を開始する。このフロアは魔獣が単体ではなく常に2体、3体と固まっておりリックらを見つけると唸り声を立てながら襲いかかってくる。レスリーが竜巻でそれらを足止めしている間にリックとアイリーンが剣で、マイヤーが魔法で確実に敵を倒しては危なげなく討伐していく。
「レスリーが竜巻で足止めしてくれるから楽ね」
「全くだ」
複数体いる魔獣を討伐しながら通路にポツンとある宝箱を見つけては中身を回収していく一行。既にこのフロアで宝箱を2つ見つけ指輪と腕輪を回収していたメンバー。そうしてフロアの中にある長い一直線の通路を歩いていると、
「ちょっと待って」
前に進んでいたリックとアイリーンに声をかけるレスリー。何事かと振り返った2人、マイヤーやマリアも顔をレスリーに向ける。
「隠し部屋がある」
「「隠し部屋?」」
「ああ、この中の風がおかしな流れをしているんだ」
そう言ってレスリーが先頭になって少し歩いてから通路の右側の石の壁を軽く叩き、
「ここだ、この奥が部屋になっている。中に魔獣はいないみたいだ」
そうして5人で壁の石を見ていると、
「見てこれ」
壁の下の方を見ていたマリアが声を出した。そこを見ると石で作られている壁の石の一つの色が周囲とは違っている。薄暗いフロア、立っている位置からだとまず見つけられない壁の一番下にある1つの石。リックがその色の違う石を手で押すとギギギと音を立てて壁が横にスライドしていった。中は小部屋になっていてその中に宝箱が2つ並んでいる。皆がレスリーを見ている中、渦巻きを飛ばして宝箱をチェックして
「大丈夫だ」
その声を聞いてリックとアイリーンがそれぞれ宝箱を開けた。
「すごい、金貨よ」
宝箱の中には大量の金貨が入っていた
「こっちは片手剣だ。見た限りなかなかの業物みたいだ」
全員で金貨を数えていくと1,000枚入っていた。それを魔法袋に入れ片手剣も同じ様に魔法袋に収納する。
「レスリーが言わなかったらまず見つからなかったな」
「その通りだ。隠し部屋なんて噂だけだったしな。普通ならまず見つけられない」
マイヤーとリックが話をしているのをその通りだと聞いているマリアとアイリーン。レスリーはダンジョンが2回目なのでよく分かっていなかったが彼らの話を聞いていると滅多に見つけられないということなので役に立ててよかったと思っていた。
そうしてその後も探索をして広い13層をクリアすると14層に降りていく。
「ここはやばいな。ランクSばかりだ」
レスリーがいえばリックが、
「なるほど、14層からはランクSのフロアか。時間も経ってるし一旦地上に戻ろうか」
そうして一行は地上に戻ってきた。日は大きく西に傾いている草原でマイヤーが全員を見て、
「どうする?明日14層から探索を続けるかい?」
「他にどう言う選択肢があるんだ?」
リックがマイヤーを見ると
「3つある。1つは今言った明日も俺たちが潜れるところまで潜る。ランクSのフロアだから攻略には時間がかかるだろう。2つ目はこのまま南を目指す。そして3つ目はアルフォードに戻って鑑定をしてもらってから南を目指す」
「マイヤーの意見は?」
リックに振られたマイヤーは
「俺の意見は3番目だ。ランクSのフロアでリックとマリアに万が一があるとまずい、そして今回見つけたアイテムが価値のあるものならこれからの移動がずっと楽になる。そういうことで一旦アルフォードに戻ってから再度南を目指すのはどうだろうか?ランクSがいるこのダンジョンは避けて南を目指す」
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