ダンジョン

第1話

 翌日、ゆっくり休んだリックとレスリーの2人は昼前に家を出て街に繰り出した。他の3人はとっくに出かけていた様で誰もいなかった。


「男2人が歩いてもサマにならないよな」


「全くだ。とは言っても女性陣の買い物には絶対に付き合いたくない!」


 レスリーが断固としていうと歩きながらリックも全くその通り、なんであんなに買いもしないのにずっと見てられるんだ?と2人にとっては理解不能は女性の行動をぼやきながら通りを歩いていき、


「やっぱり俺達はここだよな」


「そうそう」


 そう言ってオズの店の扉を開けた。綺麗な鈴の音がすると奥からエルフのオズが顔をだしてきた。


「リックとレスリーかい。しばらく見ないけどどこかに行ってたのかい?」


「辺境領の西の端にある村まで行ってきましたよ。2ヶ月程ここを不在にしてた」


 リックが答える


「なるほど。あんた達は冒険者だからね。あちこち移動していて当然か」


 リックとオズのやりとりを聞きながらレスリーは店の陳列物を見ていて


「この前来た時よりもアイテムが増えてるね」


 オズは顔をリックからレスリーに向けると


「ああ。最近新しいダンジョンが見つかったらしくってね。そこに行ってきた冒険者が宝箱から見つけたアイテムを持ち込んできたのさ」


「新しいダンジョン?」


 オズの言葉にリックが食いついた。


「ここから南に歩いて2日ほどのところにあるらしい。まだ10層ちょっとしか攻略されてないらしいけど新しいせいか宝箱が多いらしくてね」


「それでこれを持ち込んできたのはランクAのパーティかい?」


 聞いてきたリックに頷くオズ。


「そうだよ。彼らが言ってたのは10層まではなんとか攻略できたけど11層はちょっと様子を見た限りだと結構きつそうなフロアだから無理せずに帰ってきたって言ってたね」


「きついってどう言う事だろうか」


「魔獣のレベルが上がってるか、あるいは固まってるか。どっちかだろうな」


 レスリーの疑問には何度もダンジョンに潜った経験があるリックが答える。そのリックもレスリーと一緒に陳列されている装備を見ながら、


「いい装備が出ているな。なんで自分たちで使わないんだろう」


「この前の言ったけど装備より武器って風潮は変わってないからね」


「この装備だけで武器を1ランク上げるくらいの性能はありそうなのに」


「そう言ってくれるのはリックらのパーティメンバーだけだよ。大抵の冒険者は装備の値段が高いとか言ってるね。それじゃあ伸びないよ」


「高いと言うがこれらの値段は十分に性能見合いだと思うけどな」


 店に並べてある装備品に視線を移しながらリックが答える。レスリーも全くその通りだと思っていたのでそうだよなと相槌を打つ。


「あんた達も一度そのダンジョンに挑戦してみたらどうだい?10層までしか潜れなかったAランクのパーティよりあんた達のパーティの方がずっと強いよ。深くいけばもっと宝箱があるかもしれないよ」


「そうだな。それも悪くないな。そうして出てきたアイテムをここで鑑定してもらおう」


「それくらいお安い御用さ、いつでも持っといで」


 リックとレスリーの2人はオズの店を出るとそのまま商業区の中の武器屋や防具屋を覗いてから自宅の一軒家に戻ってきた。


 女性2人はまだ戻っていなかったがマイヤーが既に自宅に戻ってきていて2人を見て


「色々と収穫があったぞ」


「こっちもだ」


 マイヤーの言葉にリックも返しじゃあ全員が揃ったら打ち合わせをしようということになった。


 夕方になってマリアとアイリーンも宿に戻ってきた。少し休憩してから全員が居間に集まって打ち合わせをする。


 居間のテーブルに自作の地図を広げたマイヤーが


「南に行くってことで情報を集めて地図に書き加えておいた。ついでに東方面についても得られた情報は地図に載せている」


 確かに地図には南方面とまだ行っていない東方面にもいくつか新しく書き加えられた跡がある。西方面は街道沿いを中心に結構詳細な地図になっていた森や川、草原そして農業に適している場所、適していない場所などが一眼見てわかる様になっている。


 マイヤーは地図を指さして説明をしていく


「ここアルフォードから辺境領最南端の村まではこの通り道が蛇行しながら続いている。これは山や森を避けて草原の中だけを通る様に街道を作ったからだ。従い途中で出会う魔獣はせいぜいBランクまでらしい。アルフォードから南の村と西の村とは大体同じ距離にあるがこっちは道が蛇行している分街道を歩くと日数が多くかかるだろう」


「なるほど。蛇行して時間はかかるが、行き交う人の安全を第一に考えて作られているんだな」


 リックの言葉にその通りと言い、そして地図の上にある印に指先を置くと


「この南の村に伸びている街道の近くにあるここ、これは最近見つかったダンジョンだ。南の村に行く途中にこのダンジョンに寄っていかないか?ここは王都から2日ほど歩いた場所になる」


 マイヤーの話を聞いていたリックとレスリーは思わず顔を見合わせた、そしてリックが


「それって10層までしか攻略されていないダンジョンだろう?」


「よく知ってるな、その通りだ。この街のAランクのパーティが10層まで攻略しているがそこから先はまだ攻略されていない。難易度が高いというギルドの評価だ」


 間違い無いなとリックが言い、


「実は俺とレスリーもそのダンジョンに行こういう提案をするつもりだったんだよ」


 そう言ってオズの店での出来事を3人に話していく。


「じゃあ11層より下にはまだ宝物がある可能性が大きいってことね」


 アイリーンの言葉にリックが頷いて


「そうなるな」


 マリアも


「レスリーとはダンジョンに行ったことがないし、それがまた新しいダンジョンで宝物のがありそうだってことなら面白そうじゃない。私は賛成よ」


 アイリーンが私も同然賛成とマリアに続けて言う。一同を見ていたリックが最後にマイヤーに顔を向けて


「方針が決まったな。南にあるダンジョンに潜ってみてから最南端の村を目指そう。レスリーもそれでいいかな?」


「ああ。全然構わない」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る