第5話
「彼はしばらくこの街で活動するって言ってただろ?」
リックが言うとそう言ってたわと答えるギルマス。リックは頷き、そしてメンバーの顔を見てから
「当人にはまだ言ってないけど彼に俺たちのパーティに入ってもらおうと思ってる」
リックが続けて言った言葉にびっくりするオリーブ。
「いいの?だって貴方達は」
その言葉にリックは大きく頷くと、
「この旅というか今のこの立場はもちろん国の中の様子を自分の目で見るというのが目的の1つになってるけど、それ以外に国内にいる優秀な人材を見出すという目的もあるんだよ。冒険者になってこの街をベースにあちこちの街へ出かけたけどなかなかそういう人物には出会わなかった。そんな中彼を見つけてね。ここにいる3人とも話をしたんだが彼は将来この国にとって必要な人物になるだろうということで意見が一致してね」
リックに続けてマイヤーが
「自然と共生できる彼はリックのブレインとして将来絶対に必要になる人材だよ」
「なるほど。災害を未然に防いだり土壌の改良ができるから食料の確保や国民の安全に貢献できるってことね」
その通りと頷くリックとマイヤー。
「わかったわ。彼については私も話をした限りだけど素直で良い人間だと思う。ギルドのレポートでも素行については問題ないと書いてあるし。もし彼が、レスリーがリックのパーティに加入したら教えて頂戴。こちらも一応ギルドに報告する必要があるから」
レスリーはギルドの紹介を受けた宿に部屋を取ると背中に背負っていた大きめのリュックから荷物を取り出して部屋に並べるとそのまま宿を出て街の中に出ていった。
港町アイマスはラウダーと同じくらいかそれよりも少し大きな街で通りにはいろんな露店や店が並んでいる。港町らしく魚介類を売っている露天や地方の物産を並べている店などラウダーとはまた違う雰囲気の街だ。
この街を拠点にしばらく周囲の山や森を探索するつもりの彼は雑貨屋に入って野営に必要な商品を補充する。必要なものを買ってからそのまま店内をぶらぶらと見ていると1つの商品を見て目が止まった。
「魔法袋だ。売ってるのか」
独り言を呟いたその声が聞こえたのかこの店の主人っぽい男が近づいてきて、
「たまたま2日前に入荷したんだよ」
魔法袋とは見かけ以上に中が広くなっているカバンだ。リュックの様な形をしているがその中には相当の品物が入ると言われている。当然レアな商品なので価格も高い。
「いい値段してるな」
値札には金貨100枚と書いてある
「そりゃそうさ。滅多に売り物として出てこないアイテムだ。冒険者には必須だろう?時間が止まってる訳じゃないから食べ物は腐っちまうが何よりもたっぷりと中に詰め込めるし重さを感じないしな」
レスリーの手持ちのお金は金貨80枚ちょっとだ。欲しいが手が出ないなと思いながらも未練がましくしばらく魔法袋を見ていると、
「あら、レスリーじゃない。どうしたの?買い出し?」
と声が聞こえて振り返るとそこには私服姿のマリアとアイリーンの二人が店の入り口に立っていた。二人とも戦闘時とは違ってスカートで女性らしい格好をしている。レスリーは二人を見て
「ああ。明日からこの街の周辺の森に入ろうかと思って買い出しに来たら魔法袋が売ってあるのを見つけたんだけどさ、いい値段してるんだよ」
「へぇ、魔法袋が売り物に出るなんて珍しいわね」
マリアがそう言うとレスリーが見ている魔法袋を見る
「金貨100枚か、確かにいい値段ね」
「でもあると便利だよね」
隣からアイリーンも声をかけてくる。
「そうなんだよ。でも高くて手が出ないんだよ」
「そうなんだ」
そう言うと女性二人で顔を見合わせて小声で話をすると、
「ちょっとここで待っててね」
そう言って二人は店から出ていった。何が起こったのかわからないままに店の中にいると長くは待たずに今度はリックらパーティ全員が店に入ってきた。
「やあ。魔法袋が売りに出てるんだって?」
店に入ってくると気さくに声をかけてくるリック。レスリーも挨拶を返すと
「そうなんだよ。でも高くてさ」
「レスリーの手持ちはいくらあるんだい?」
「金貨80枚ちょっとかな」
その言葉に頷くリック。
「なるほど。俺たちは全員魔法袋を持ってる。レスリーもあると便利だぜ?」
「わかってるんだが先立つものがないとな」
「貸してやろう。やるんじゃないぞ、貸すだけだ」
リックの申し出はレスリーには有り難い話だがと思っているとリックは続けて
「ただし条件がある」
「条件?」
「そうだ。それはここじゃあ話しできない。とりあえずはこの魔法袋を買ってからにしようか。誰か他の奴らが買う前にな」
そう言うとレスリーから金貨80枚をもらい、自分が20枚の金貨を出して100枚にすると店の親父に渡し、代わりに魔法袋を手に入れた。それをレスリーに渡して
「俺達の家に来てくれよ、話しはそこでする」
そう言って店から出た4人に続いて通りを歩いていくレスリー。彼らについて歩いていくと通りから少し入った場所にある一軒の民家の前に着いた。庭が広くて家自体も部屋数が多そうな立派な建物だ。
レスリーは通りから家を見上げながら、
「宿じゃなくて家を借りているのか」
「色々と便利だからな」
「それにしても立派な家だな」
誘われるままに家に入るとリビングに案内されそこのソファに腰掛ける。リック始め他のメンバー全員もそれぞれがソファに腰掛けたところでリックが口を開く。
「条件というのはレスリー、君に俺たちのパーティに入ってもらいたい」
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