旅立ち

第1話

 レスリーがいるのはクニスナ大陸という大陸で、この大陸には人間が住んでいる2つの国が存在している。一つはレスリーが所属しているリムリック王国。この国は大陸の西半分を支配しており、その国の北部に王都がある。


 そして大陸の東半分はフォレス王国という国だ。この2つの王国で大陸のほぼ80%を支配しており、それ以外に大陸の北部にある高い万年雪をかぶっている山々の奥のエリアには魔族がすむ国があるが現在は魔族と人間との間で相互不可侵の条約が結ばれており争いはない。


 リムリック王国の王都は国土の中央より北部寄りに位置しており当然ながら国内最大の都市だ。そして王都以外の大都市としては大陸中央部から西に移動したところにある港町のアイマス、南には辺境領と呼ばれる地域最大の都市であるアルフォードがある。そして王都から南に伸びている街道の途中にある道路の分岐点、西のアイマスと南のアルフォード、そして東のフォレス王国に向かう道に分かれる交通の要所から発展したラウダーの街がある。


 王都を出たレスリーはまずはラウダーを目指していくことにした。王都を出て南に向かう街道をゆっくりと歩くレスリー。


 冒険者はランクCになるとダンジョンに潜ることができる様になるため周囲からも一人前の本当の冒険者と言われる。そしてランクをB、Aとランクを上げていくとその冒険者の評価も上がっていくのだ。


 レスリーは既にランクBの冒険者なので普通なら周囲からそれなりの評価を受けてしかるべきではあるが、彼はずっとソロで活動をしてきたので周囲の評価の対象外に位置する冒険者であった。


 尤も彼自身が自分に対する周囲の評価を上げる様な振る舞いはしておらず、師と仰ぐ大木の下で鍛錬することに全てを注ぎ込んでいたのでそのことには全く拘っていない。彼にとってはこの世界を見て回ることが自分に与えられているミッションだと理解している。


 街道を歩きながらも時折森に入っては木々を見、土を手で掴んで状態を確認したりと普通の人の何倍も時間をかけて移動をしている。時折出会う魔獣は風水術で倒し魔石を取り出すと魔獣の死体を土に埋める。


 普通の旅人や冒険者より何倍も時間をかけて移動するレスリー。野営は草原や森の入り口でする。テントを張ると自分の周囲20メートル四方に風で作った目に見えない小さな渦巻きをいくつも放ち魔獣が来たら感知できる様にしてぐっすりと眠った。


 魔力ではないので魔力切れで結界が無くなることもなく、一度作った渦巻きはレスリーが次の命令をするまではずっとそのままで”仕事”をしてくれるので安心して夜を過ごし、朝起きると再び街道を歩き、途中で森や草原に入っては自然の状況を見ていった。


 そうして王都を出てから10日間、普通ならそろそろラウダーの街に着いている頃だがレスリーはまだ半分近く移動したところにいた。そして街道から外れ草原の中を流れている川に近づいていた。


 川に手を入れて水を掬い”癒しの水”と脳内で言うと手のひらの中の水がそのまま霧状になってレスリーの全身に降りかかる。そうすると疲れが取れ同時に汗ばんでいた身体がすっきりした。癒しの水は回復と洗浄の効果があるのだ。


 「川の水も綺麗だ。生き生きとしているのがわかるな」


 しばらく川の水面を見ていたレスリーはそう言うと立ち上がって再び街道に戻って街を目指していく。


 王都からラウダー、そして港町アイマスや辺境領のアルフォードへと続く道は国内でも有数のメインの街道であり道幅は広く、また定期的に冒険者が魔獣退治をしているので基本安全な道だ。とはいえ街道から森に入っていくとあたりを徘徊している魔獣が時折目に入ってくる。ランクはせいぜいC、たまにBクラスだがレスリーは森を探索しながらも目についた魔獣は討伐していった。


 そうして背中のリュックの中が魔獣の魔石でパンパンに膨れ上がった頃レスリーの目の前にラウダーの城壁が見えてきた。


 並んで城門から市内に入るとそこは王都よりは規模は小さいものの国内有数の都市に相応しい賑やかさだ。交通の要所でもあるので大きな荷台や馬車が多数広場に留まっておりその周りを商人や荷物を護衛する冒険者達が多数忙しそうに動いているのが目に入ってくる。賑やかな街だとそれらを少し見てからレスリーは通りに面しているギルドのマークを見つけるとその建物の中に入っていった。


 王都のギルドを一回り小さくした規模だがそれでも想像してたよりはずっと広いギルドの中。受付に行くとギルドカードを見せて


「王都から来たんだけど、しばらくこの街に滞在する予定でどこかいい宿はないかな?」


 レスリーが差し出したランクBのカード、そこに書いてあるジョブを見て顔を上げてレスリーを見る受付嬢。カードを戻すと


「そうですね、ランクBの冒険者ならこのギルドのある通りを少し進んで行ったところにある”煉瓦亭”はどうでしょうか。部屋も広くてお風呂もありますよ」


「そりゃいいな。そこにしよう。ついでにこの魔石を買い取ってもらえるかな」


 リュックから道中で倒してきたランクB,Cの魔獣の魔石を取り出してギルドのカウンターに置いてその場で査定、換金してもらうと財布も潤ったのでそのまま教えられた旅館に向かい、そこに部屋をとった。


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