サーシャの告白(3)

「僕一人なら、この場面を乗り切れなかった。サーシャ、ありがとう。一緒にリーズの笑顔を守ってくれて、ありがとうございました」

「ぁ、え……。は、はい……。い、痛み入ります……」


 ワタシに向けられた表情と声には、大きな感謝の気持ちが宿っていました。

 弱いや、守りきる。何も知らないワタシにとってはソレらはあまりにも大袈裟で。理解に苦しみましたが、リズに対する気持ちが本物という事は理解できました。


「あ、あのねっ。私のせいでサシャと兄様がこんな風になって、ごめんな――」

「サーシャが君の為に怒ってくれたのは、僕の言葉足らずが原因なんだよ。謝るのはお兄ちゃんの役目で、リーズからはお礼だけ聞きたいな」

「………………ん。サシャ、ありがとうございました。兄様、ありがとうございました」

「うん、よっし。それじゃあ、このお話はお仕舞いだね。いつまでもこうしてると紅茶が冷めちゃうから、みんなで頂こう」


 そうしてワタシも含めたお茶会が始まり、不意に発生した『事件』は幕を閉じたのでした。



 何かが発生すると視野を広げて物事を目視し、リズに悪影響が一切出ないように動く。

 こんなことは、強い想いがないとできません。できるわけがありません。

 ですのでワタシの認識は180度変わり、ユーグ様が心から尊敬できる人になりました。そして、それから次第に――。


 こほん。


 つい、口が滑りかけましたね。

 そういう感情を抱いた時もありましたが、今はリズとユーグ様が――ディオン様が、笑い合っている姿が見られれば満足です。

 どうやらワタシは、従者気質なのでしょうね。愛する人が幸せにしている事が、何よりの喜びになるのです。


 人によっては『変』と感じるでしょうが、人も恋も千差万別。十人十色なのです。

 こんな形があっても、よいのでしょう――


「サシャっ。一緒におやつを食べましょっ」


 ――おや。リズに呼ばれてしまいました。

 ワタシは、リーズ・クノアスの侍女であり親友。友人からの誘いを断るわけにはいきません。

 それでは#過去の振り返りは__自室での休憩__#はここまでにして、向かうとしましょう。


「この匂い。今日はカップケーキと、ふふ。これは、アールグレイね」

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