5話(3)
「フィルマン殿下が推理された通りでした。五人の家からは、マリーが購入して渡したアクセサリー達が。医師の家からは多額の現金が見つかり、全員が白状致しました。『マリー・レーヴァに話を持ち掛けられた』、と」
あれからフィルマンが、慌てふためくマリーの両親へ――事情を全く知らずに混乱していた両親への説明などを行って、およそ2時間後。彼の従者が国王直属の兵士2人と共に帰ってきて、室内にいる全員に向けて証拠品を掲げた。
フィルマンも関与していたものを、さもマリーが独断でやったように捏造して。
「……やはり、そうだったか。ディオン殿が疑問を抱かれなければ、まんまと騙されていたな」
「でんかっ――フィルマンっっ! それは貴方が渡したものでしょうっ!! あたしを裏切るつもりですのね!?」
すっかり声がしゃがれているマリーが、ヒステリックに目を剥く。
コイツは待機中も、ずっと裏切りと連呼した。だけどフィルマンは――兄様も一切相手にせず、今に至る。
「ここにいるこの男が主犯! 何度も行ってるけどっ! こいつは、あたしと結婚したがっていましたの!! あたしを信じてっっ!!」
「はぁ。見苦しいぞ、マリー・レーヴァ。俺とお前に、接点はない。深く関わっていない相手に、惚れるはずがないだろう」
「あたし達はっ! 二週間前から密かにお城で会っていましたわっ!! 会ったという証拠はありませんけどっ!! リーズがなれるのならあたしだってなれると思い、体を使ってアプローチをしたらこの男はあっさり心変わりをして――」
「それも、何度も聞いた。しかし逆に、貴様の罪を証明するものが見つかってしまったな?」
「こちらの物品および自白が、動かぬ証拠ですね。フィルマン殿を共犯とするのは、無理がありますよ」
間髪入れず兄様も同意をして、ソレを確認したフィルマンが顎をしゃくる。そうすれば控えていた兵士がマリーに近づき、左右の腕を掴んで拘束した。
「フィルマン殿。妹は現在伯爵家令嬢ですが、後日ジェナの第一王女となる存在です。この件は伯爵家へではなく、王族に対する罪として対応をお願いしたします」
「ひぃっ……っ。お、おう、ぞく……」
運が良くて強制労働を伴う無期懲役で、基本的には極刑が待っている。兄様の言葉でそれに気付いてしまったマリーは、脱力してその場に崩れ落ちてしまう。
「でぃ、でぃおん、でんか……っ。ちがい、ます……。しんじて、ください……。リーズに――リーズさまにしたことは、あやまりますから……っ。はんせいして、いますから……っっ。ちゃんと、しらべなおしてください……っ。おねが、っ、します……っ!」
「残念ながら、貴方の犯行は明白です。フィルマン殿」
「承知しました。この女を連れていってくれ」
「「はっ!」」
今なお座り込んでいる、マリー。彼女はズルズルと乱暴に引きずられていき、
「いやだぁっ! おとうさまおかあさまっ! だれかっ! あたしをたすけて! しにたくないっっ! いやぁああああああ!! いやぁぁぁぁぁぁぁぁっぁああああああああああああああああああああぁぁあああああああああああああああああああぁああああああああああああああぁぁああああああああ――………………」
泣き喚いて声にならない声をあげ、やがて恐怖で失神。あたしを陥れた元凶の片割れは、哀れな姿で扉の向こう側に消えたのでした。
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