5話(2)
兄様、豪快ですねー。お兄様は、腕力が強かったんですねー。
わぁ。マリーが1メートルくらい飛んでるー。マリーはぎょっとなってて、ちょっと鼻水が出てるなあー。
私はのんびりとその様を眺め、そんなマリーはやがて両足で(ガニ股になって)着地した。
「でぃっ、でぃでぃでぃディオン殿!! なにをしている!?」
「心臓が止まるかと思いましたわっ!! あまりに突然で生きた心地がしませんでしたわっっ!!」
「驚かせてしまい、申し訳ありません。……ですがこれで、証明されましたね。貴方が負傷などしていない事が」
兄様の瞳と人差し指が、ギプスに包まれた右足を鋭くさす。
全治2か月の大怪我を負っているのに、ちゃんと使えている。平然と立てている。
これは、言い訳のできない証拠だよね。
「全治2か月。自力の歩行は困難。診断書にあった内容とは、大違いですね。フィルマン殿、そしてマリー・レーヴァ。説明をお願いします」
「「………………………」」
「一体何がどうなって、大きな誤りが信用に値する材料となったのか。なぜ捏造をする必要があったのか。納得のゆく説明を、お願いします」
「「………………………」」
兄様の言葉に、フィルマンとマリーは何も返せずにいる。
二人は青褪めた様子で黒目をせわしなく動かし、そのまま静寂が1分近くも続いた頃だった。フィルマンが「そうか……。そうだったのか……」と呟き、マリーに歩み寄った。
「マリー・レーヴァ。俺達は、貴様の術中に嵌っていたようだ」
「で、殿下? 何を仰って……」
「全ては、虚言。リーズは、抱いていた感情を利用されたんだ」
「あたしに、りよう、された……? えっ……?」
「確かにリーズは貴様の容姿に思うところがあったが、妬んでいたのは貴様も同じ。同い年かつ同じ地位にある人間が、選ばれてしまった事が憎かった。そこで貴様は件(くだん)の5人と結託してリーズにありもしない罪を被せ、俺に婚約を破棄をさせた――王太子妃の座から、引きずり降ろしたかったのだろう?」
フィルマンのハッとした目は確信めいたソレへと変わり、更には怒りを孕んだものへと変化する。
「五人および担当医を、どうやって懐柔した? 何かしらの、地位の約束か? それとも物なのか?」
「殿下……? もしかして……。貴方は、あたしを――」
「吐く気がないなら、それでいい。……関係者を調べ上げれば、証拠は出てくるはずだ。大至急全員を調査してくれ!」
彼は手を打ち鳴らして従者の男性を呼び、彼は丁寧に一礼をしたあと部屋を出ていった。
……最大の元凶、フィルマン・オズナウ。コイツは自分が助かるために、マリーを切り捨てようとし始めた。
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