4話(1)
「ディオン殿、お待たせ致しました。全員、到着しましたぞ」
「「「「「ディオン・クノアス殿下。よ、よろしくお願い致します……」」」」」
あれから1時間と40数分後。私達は二人の先導で別室に案内され、比較的簡素な大部屋には5人の少女がいた。
向かって左から、アイナ・フロー。リンル・レタリ。ランニ・ハース。エミサ・ヌデル。
ミント・ガウリト。全員が同じく伯爵家の令嬢で、クラスは違うものの同級生。
彼女達は、予想外の人物――兄様を前にして、戸惑いを露にしている。なぜなら勿論、この5人が共謀者だから。
『オズナウ殿下、ありがとうございます。パパがケチで、このイヤリングが買えなかったんですよ』
『わたくしも、ずっと欲しかった指輪が手に入りました。殿下や陛下は、小五月蠅い父や母とは大違いですわ』
『物分かりが悪い親を持つと、大変だよね。オズナウ殿下、感謝いたします』
『ネックレス、ありがとうございますっ。マリーちゃんも、誘ってくれてありがとね』
『それと、リーズさんも。貴女のおかげで、欲しかった物が貰えたんだもの。感謝していますわ』
マリーとフィルマンは、良心の呵責などを起こす危険性のない生徒――簡単に懐柔できる生徒に声をかけていて、両者はギブ&テイクの関係。もしもバレたら国際的な問題に発展しかねないから、顔から血の気が引いている。
「夜分遅くに、申し訳ありません。少しだけ、僕の我儘にお付き合いください」
「「「「「はっ、はいっっ。なっ、何なりとお聞きくださいっ」」」」」
「皆さんのご協力、感謝いたします。それではまずは等間隔に離れて頂き、こちらをお受け取りください」
兄様は5人を3~4メートル程度離れて立たせ、携えていたペンと紙を1本と1枚ずつ渡す。
これは従者のノンルさんにお願いをして、待機中に用意してもらっていたもの。ディオン兄様はこれを使って、5人を懲らしめるみたい。
「「「「「? これは……?」」」」」
「ディオン殿。どういうおつもりですかな?」
「確認の為に僕が質問を行い、それに対する答えを一斉に記入していただくのですよ。あの事件が本当に起きていて、皆さんが本当に目撃者であるのならば――。全員が、同じ回答となるはずですからね」
兄様が穏やかな顔と調子でさらりと喋り、その瞬間この場に空気が変わる。私達以外の目に、夥しい動揺が走るようになった。
「でぃっ、ディオン殿っ! そのようなやり方は――」
「おや? こちらは、人権に関わるなど違法なものではありませんよね? 何を慌てていらっしゃるのですか?」
「っ! いっ、いやっ、なんでもないですぞっ。どっ、どうぞ続けてくだされっ」
「はい、そう致します。それでは皆様、無言かつ紙面だけに集中して、お答えください」
少し大きめのボリュームにしてしっかりと釘を刺し、その上で更に5人を同時に監視。不正を行えないようにして、質問が――『追い詰め』が、始まった。
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