幕間 リーズが信頼する理由
「ねえ兄様。ゆうべね、ヘンテコな夢を見たの」
その話をしたのは、初めて会った時から3か月後――4回目の再会の時。兄様の膝の上で本を読んでもらっていた私は、一冊目が終わると顔を真上にあげた。
「へんてこな、夢? どんな夢だったのかな?」
「えっとね。でっかいお家の前で赤ちゃんの私が抱っこされてて、すっごく泣いてるの」
この家の何倍も大きい場所で、たぶん4人くらいが周りにいて。なぜか私はとても悲しくて、大声をあげて泣きじゃくっている。
あの日見た夢は、そんな不思議な夢。
「……そう、なんだ。その夢は、それからどうなるの?」
「私は心の中で『離れたくない』『一緒にいたい』って叫んでてね、でも赤ちゃんだから言葉にできないの。何回伝えようとしても、伝わらないの」
この口から出てくるのは、『びぇええええっっ!!』だけ。おまけにどうやっても手も足も動かせなくって、それが本当に怖かった。
「でもね。そうしてたらね。近くにいた兄様がね、何か言いながら私の手を握ってくれたの」
「…………。僕が、手を……」
「何を言ってるのかは分かんないんだけどね、その手がとってもあったかいの。優しくって、ぽかぽかしててね。ギュッとしてもらってたら、怖い気持ちがなくなっていったの」
黒一色だった場所に一滴の白が落ちて、全体へと広がってゆくような感覚。恐怖心や不安心は、あっという間に消えてしまった。
「でね。それからね。兄様のことを考えているとね、心がほわっとするようになってね、近くにいてくれたらもっともーっとほわっとするようになったの。ヘンテコな夢はね、最初は怖くって、最後は兄様をもーーーっと好きになる夢になったんだよっ」
「……………。そう、なんだ……」(その時の僕は、リーズになにもしてあげられてないのに……。そう想ってくれるんだね……)
「??? 兄様? 何か言ったー?」
「ううん、なんでもないよ。……今度は、こっちの本を読んであげるね」
「はーいっ。楽しみ楽しみっ」
これが、兄様がいてくれると無条件で安心する理由。
この時からユーグ兄様への想いが強くなって、だから。そんなだから――。やがて家族としての『好き』に、異性としての『好き』が加わるのでした。
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