3話(1)
「ディオン殿!? これは一体……!?」
「り、リーズ……。君がなぜここに……!?」
赤色の上質なカーペットの上に、アンティーク調のテーブルや椅子が並ぶ部屋。兄様と私が会談専用の空間に入ると、二人の男性が目を丸くした。
向かって左にいる背が高く鼻筋が通った人が、王太子のフィルマン・オズナウ。向かって右にいる髭を蓄えた小太りの男性が、国王のギュータス・オズナウ。
フィルマンは私を騙した元婚約者で、ギュータスは一部の人に『親バカ』と揶揄される国王。
「ディオン殿、ご説明を願いたい。何故(なにゆえ)このような場に、罪人(つみびと)を同行させているのですかな?」
「我々は、保釈の許可を出してはいない。それについても、合わせて説明して頂きたい」
「それらは当然の責務ですので、ただちに致しましょう。ですが、その前に――。お二人に、お伝えしておきたい事がございます」
二つの鋭い目線を微笑みで流し、兄様は私の背中に優しく触れた。
「こちらにいるリーズ・ライヤルですが、本来の名はリーズ・クアノス。その名の通り僕の実妹であり、本来ならばジェナの第1王女の地位を持つ人間なのですよ」
「じっ、実妹!? 第1王女!?」
「そっ、そんなはずはない……っ。あるわけがない……っっ。ジェナは国王殿の意向で、子はお一人だけ……っ。実子は一人しかいないはずですぞ……!?」
「とある事情で生後間もなくライヤル家の養女となり、その存在は親類にさえも伏せられていたのですよ。こちらが証拠になります」
兄様が懐から取り出した、王家の印が捺された国王からの手紙。そこにはリーズは実の娘で、後日第1王女の地位を正式に与えるとあった。
「「………………………………」」
「そしてお手紙はもう一通ありまして。こちらが、妹と共にここを訪れた理由になります」
娘が罪人となった過程に看過できない点があり、貴国のレーフェル卿に協力していただいた。
我々の疑問が消え去るまでは、国際法第8条に則り、娘の身柄は息子が貴国内で預からせてもらう。
国際法第14条に則り、息子ディオンが現地で独自の調査を行う。
この件に関しては、息子に全てを任している。貴国でのディオンの振る舞いおよび発言は、王のソレと思ってもらって構わない。
両国の今後のためにも、すっきりさせておいた方がいい。ご協力をお願いする。
もう一つの親書にはそういう内容が書かれていて、フィルマン達の顔色は読み進めるたびに悪化。全てを読み終わる頃には、真っ青になっていた。
「「………………。………………」」
「それでは、早速ですが――。調査の一環として、お二人に伺いたい事がございます。いくつか確認と質問をさせていただきますね」
顔面蒼白になっている二人に対して微笑み、丁寧に一礼。そのあと兄様は私を連れて、来賓用のチェアに腰を下ろしたのでした。
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