千歳くんはラムネ瓶のなか


Q:この作品の中のイケメンな千歳くんは、ラノベの中では例外中の例外なのですか?ラノベの主人公って地味なものですよね?
















A:ライトノベルがずっとイケメンの味方だったという真実を隠そうとしてない点が斬新だ。


 男子生徒の千歳くんはイケメンで校内秩序の頂点におり、美女のクラスメート3人をヒロインにして、不登校な不細工の部屋を破壊して感謝される。ガガガ文庫の間違ったラブコメの主人公の造形に対して、なんと模範的なことだろう。


 2000年代以降のライトノベルは表向き、暗き陰キャの味方を自称してきた。しかしながら、実際にはその行動様式を自己否定し、イケメンの行動様式を受け入れろと説教するメディアだった。モンスターと戦うだけの寡黙な軍人なんてものは存在しない。訓練で鍛えた屈強な身体で、訓練の場で声を張り上げる軍人のどこが寡黙なのだろう。


 そうしたストーリー作りの極意をむきだしで提示すると、たちまち面白さを失うので、そのような真理は覆い隠すべきと考えられてきた。だが、千歳くんはそのような掟を無視した方が上手く売れるということを示した。これに気付いた売り上げ至上主義の2020年代のラノベ市場は以後、驕れるイケメンを主役に据え、不細工な奴らに嫌いな価値観を象徴させてから斥邪する作品を主軸に据えることだろう。ネット小説の基本はこれだ。

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