ディストピア


Q:特に純文学で描かれるディストピアな絶望世界の人物たちは、どうして絶望世界から脱出した矢先に死んでしまうのですか?漫画やラノベだったら、そこから新たな世界を切り開こうとするのに。
















A:凡庸な主人公集団にあっさり転覆されてしまうほど、文学級の絶望世界は脆くないようだ。



 ライトノベルやアニメ、ゲームの絶望世界(ディストピア)は、主人公が明るく積極的に行動する正しさを賛美するために制作陣が設計したメタファーだ。それ故、いくら試練が降りかかっても、明るく模範的に振る舞う限り、命を落とすレベルの危機にはならない。試練は消極的行動を罰し、積極さを祝福するために存在する。


 文学界の絶望世界はより深い。実際の社会と同じように、英雄でもない数人の凡人の発言や積極的行動程度ではびくともしない。社会から自由になるには、社会への迎合こそ自由と思い込むか、死ぬしかない。ディストピアの強度が実社会と同じなら、そうなってしまう。

 オーウェル「1984」の結末は、ディストピアが実社会と同じ強度だった場合に起きてしまうことなのだ。



 この国に絶望し、明るく積極的に行動したら、国家が転覆するのだろうか。

 「明るく積極的な行動が道を切り開く」と信じて、反逆精神を捨てて社会秩序に合わせ、自分は自由だと思い込み、やがては社会に絶望する者を嘲笑う・・・実際には迎合しているだけだ。





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