俺ガイル
Q:『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』は、ここまで挙げられてきたラノベの定石とは違って、暗いキャラの象徴みたいな奴が活躍しているのではないですか?
A:そう思えるのは、やはり話の基本設計を間違ったためであり、本来の意図ではなかったのだろう。
ここに挙げてきたラノベらしさに反論するために、この作品を出してくる向きは多いだろう。なるほど、葉山や三浦というイケメンに対して、アニメ語りをやめられない比企谷八幡は暗い自分を比較的変えずに意見を通したりする。
しかしながら、そうした行動が共感を呼ぶ展開は、本来の設計意図でなかったことが、原作文庫裏の紹介文からみえてくる。友達がいない「ぼっち」という割に材木座というオタ友がいたりする八幡の活躍は、「リア充とはほど遠い0点の青春」(2巻)だったりする。他作品と同じくヒロイン陣が彩る表紙からみても、最初から孤独を賛美するつもりだったとは考え難い。
この話もやはり、現状維持な選択と解決策しか示せない暗い自分を最後に捨てて改悛するのが、本来意図されていた展開だったとみえる。そうみえないのは、適当に書き散らして後で打倒されるはずだった八幡の悪役な語録に、イケメンと集団主義の素晴らしさを説く正義の言葉が勝てていないためで、八幡の意見が通るのは作品本来の目的でなかった。即ち、ライトノベルとしての作りそこないが読者に受けただけだった。
この作品を暗いオタクの自己主張と受け止める場合、何より奇怪なのは、最も日常感覚がある由比ヶ浜というヒロインが八幡にヘイトスピーチな仇名をつけているのを誰も突っ込まないところだ。これでは、チャンコロと呼ばれて喜んでいる中国人と変わらない。葉山のように優しすぎるイケメンたちが、八幡を本当に思いやっているのなら、これを問題視しないなどありえない。
これに限らず、ラノベで暗いキャラが活躍しているように思えたら、それは作者の設計した意図でなかった。
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