読む意義
Q:ライトノベルを文学志望の大人が読む意義とは何ですか?
A:自分では斬新で高尚と思っても、実は「ライトノベルで出来る程度のことだった」という執筆事故を防ぐこと。きちんと向き合えば、ラノベの表現限界が見えてくる。
青少年文化で最も難易度が高いジャンルは何かといえば、活字なだけにライトノベルと答えるのが正解だろう。「図書館戦争」あたりは難しい言葉も結構用いるし、作者の有川浩はやがて人気作家に昇進した。
2000年代以降、中高生向けの小説なはずのライトノベルの表現水準が進歩し、大きな物語を喪失した一般文学との境界線が薄れていった。有川や森絵都をはじめ、広義のラノベ出自の作家が、年をとるファン層を引き継いで読み物小説界を制覇している。
ライトノベルが文芸界に注目されて以降、ラノベ界の興味はハーレム小説とゲーム世界を舞台とするなろう小説へ変わって文芸界の関心を失ったが、男の出番の多い心理系の作品はキャラクター小説へと進化していった。
これらは一見多様に見える。しかしながら、舐めた気持ちでなく正面から見据えてみると、キャラクター小説を含めライトノベルは結局のところ、
「暗い」から「明るい」に話が流れる
「やらない」を嫌悪し、どんな不合理でも「やる」を選ぶ
学校で教わる学知よりも、バイトする庶民の素朴な道徳に奉仕する
などの限界を超えていかない。(限界の具体例は前作へ)
では、難しい言葉をこねくり回せば文学になれるのか。
否、いくら難しい言葉を使っても、ラノベの限界を超えられなければラノベの範疇に収まってしまう。
ラノベを超える文学の原則は、
整った表現でラノベの表現制約、またはなかなか表現できないことを多く描く
だ。流石に全てをラノベの表現領域外に置くのは無理だろう。しかし、逸脱を繰り返せば繰り返すほど、作品は実体をもって文学に育っていく。
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