第五章 究極の正義/Apocalypse(2)


▼ Day4 03:00 EST ▼


 ニューヨーク市、バッテリーパーク。

 マンハッタン島の南端に位置する、有名観光スポットの公園である。

 公園からは、広大なハドソン川が一望でき、それを隔てた向こう側を見渡せば、100万ドルの夜景と名高い摩天楼が見える。さらには、純金のたいまつを頭上に掲げた、米国の自由と民主主義の象徴たる巨大な女性像――自由の女神の、凜々しい姿も望めた。

 白い吐息を唇から漏らし、いっそう冷え込んでいく夜気に耐えるよう、マフラーへ首を埋める。襟を立てたロングコート。白頭鷲の仮面で隠した顔。もはや誰もが知る出で立ちで、川辺の手すりに寄りかかり、男は独りきりだ。そうして夜景を眺め続けていた。

 いつか、絶望の渦中で、橋から眺めた夕陽を思い出す。

 あれから、もう何年が経つのだろうか。濁った雲に覆われた空。星1つない闇の中で煌めく高層ビルの数々を見つめ、胸中にあるのは……喜びでも悲しみでもない。

「……」

 夜間外出禁止令が出ているニューヨークの夜景は、人出が少ないせいだろう、いつもより少し暗く感じた。外を出歩く者が皆無のため、大都会の夜でありながら、耳が痛くなるほどの静寂で満ちている。警邏している軍の車両に見つかれば、誰であれ、たちまち捕縛されてしまうだろう。自らが捕まるかもしれない、つまらないリスクを背負ってでも、今夜はこの夜景を眺めて過ごしたいと思っていた。

 今夜が、米国が米国である、最後の夜になるかもしれなかったからだ――――。

 ふと。背後で、地を踏みしめる音が聞こえた。

 無人と思っていた公園内に、突如として他人の気配を感じた。

 驚くことはなかった。なぜなら、その気配の正体に、男は何となく察しがついたからだ。

「……さすがだよ。この場所に、私がいることを突き止めてくるとは」

 振り返れば、案の定である。

 不揃いな黒髪。悪い目付き。羽織ったコートのポケットに、両手を突っ込んでいる。日本人の少年だ。ふてぶてしく、愛想がない態度は、もうよくわかっている。園内に灯る街灯に照らし出された姿は、まるで都会に出現した漆黒の獣のように、危険な気配を放っている。

 男は手すりに背を預け、少年の登場に苦笑した。

「……想定していなかったわけじゃない。君ほどの知性の持ち主なら、むしろここを突き止めてくる方が自然だ。やはりこうして辿り着いたわけだ。私の居所へ」

 男の言葉を聞くと、少年はその場で立ち止まる。冷ややかな視線を男に向けて言った。

「想定していた割には、護衛の1人も付けていないのか。ずいぶん余裕だな」

「もちろん“勝算”があるからだよ」

「……」

「それにだ。護衛を付けていても無駄だろう? この場所に君が現れたということは、君は、もう私と対峙する準備が整っているということだ。内通者たちの正体は割れ、ニューヨーク市内の拠点は押さえられ、私の部下たちは捕まっているはずだ。この公園も、すでに軍の兵士たちによって包囲されていると見るね。君は勝利を確信して、この場に現れた。違うかな?」

 男――ジェイク=カーター元大統領は、すでにそのことを見越していた。

 それ故の、余裕の態度である。

 少年――カナタは、愛想もなく、素っ気なくジェイクへ答えた。

「概ね、お前の推察する通りの状況だ。だが1つ間違っているな。ここに軍の兵士は来ていない。いるのはオレ1人だけ。他には誰も来ていない」

「どうかな。君の言うことは信用ならないからね」

「お前の言う、勝算があるというのも疑わしい話だ」

「とぼけるじゃないか。君なら、私の言う“勝算”の正体に察しがついているはずだが」

 見抜かれている。

 試されたカナタは、それを鼻で笑って答えた。

「……お前が捕まるか死んだ場合は、インターネットを通じて、自動的に真実の目録バイブルが世界へ公開されるようになっている。そんなところじゃないのか」

 ジェイクは、わざとらしい拍手でカナタを皮肉した。

「その通り。さすがエリスの見込んだ男だ。この指輪が見えるかね?」

 ジェイクは右腕を軽く持ち上げる。人差し指に付けた指輪を、カナタから見えるように掲げた。その指輪を見やり、勝ち誇った笑みを浮かべる。

「この指輪は、うちのハッカーが製造した特別製だ。私の位置情報と生体情報を、ニューヨーク市内の、ある場所へ、暗号通信で送り続けているそうだ。私の身に何か起きたことを感知すればすぐさま、そこに設置されたネットワーク端末が、真実の目録バイブルの内容全てを、自動的に全世界へ公開発信する仕組みらしい。私の任意のタイミングで公開することもできるよう、手動のスイッチまで付けてくれた」

 指輪の宝石部分が、プッシュスイッチになっているようである。

 真実の目録バイブルの公開を盾にして、自らの身を守る。それがジェイクの戦術だった。

 指輪がある限り、カナタたちはジェイクを捕らえることも、暗殺することも難しい。周辺の無線ネットワークを遮断したなら、ジェイクの生体信号も途切れてしまい、異常検知される。情報は自動的に公開されてしまう仕組みのようだ。つまり、ジェイクを目の前にしながらも、誰も手出しができない状況なのだ。米国の心臓を、今すぐ握り潰せるのに等しいのだから。

 カナタは面倒そうに嘆息を漏らした。そして、手近なベンチへ腰掛ける。

 ジェイクを見やり、言ってやった。

「お前がオレの来訪を予見していたのと同じように。オレもお前の作戦なら見抜いていた。そうくるだろうことに、驚きはない」

「ほお。では、私の作戦をどうにかできる知恵を携えてやって来たのだろうね。面白い。なら君の作戦を披露してもらおうじゃないか。私は米国最大の秘密を握っている。致命的な弱点を押さえられたまま抗う術など、果たして君たちに見つかったのかな?」

 答えず沈黙するカナタ。その態度を見て、ジェイクは改めて、自身の優位を確信する。

 ――いかに天才といえど、勝てる条件が皆無の勝負を、ひっくり返すことなどできない。

 天才はただの天才であって、神ではないのだ。

 せいぜい、こちらと折り合いをつけられるような妥協点と条件を出してきて、取り引きするくらいのことしかできないだろう。ジェイクはそう予想した。

 だがジェイクに、取引するつもりなどない。

 カナタはしばらく黙っていた。やがて、曇った夜空を見上げ、ポツリと語り始めた。 

「……初めて会った時から、お前には違和感があった」

 これまでの経緯を思い出しながら、カナタは続けた。 

「お前のたいそうな演説をいくら聴いていても、お前自身が“本当に望んでいること”が何なのか、オレにはわからなかった。お前は何度も主張したな。自身の行動がいかに正しくて、いかに意義があるのかを。国民が本当は何を望んでいて、社会がどう変わっていくべきなのかを。だが、その中にお前の望みは何もなかった。お前の想いがどこにあり、何を望んでいるのか。一度も口にしなかった」

 カナタは視線を転じ、無表情でジェイクを見やった。

「この国の内戦を目論んでいるだのと言うのは、CIAや政府の閣僚が、勝手に分析して見立てている思い込みだ。お前自身の本当の目的が何なのか、オレは考え続けていた」

 冷ややかな眼差し。2人の目線が合い、互いに互いの思惑を探り合う。 

「お前は平和的に現政権を葬り、新たな政権を誕生させるべく、政府へ要求を出したな。だが最初から、その要求が拒否されるとわかっていたんだろう? 既得権益にしがみついて私腹を肥やしている議員や富裕層。そいつらが今さら利権を手放してまで、お前の提案する世直し案に乗ってきたりなどしないことを。社会の上層が腐っていれば腐っているほど、既得権益者たちは、人々の平穏より自身の利益と保身を優先する。もしも政府に良心が残っていれば軍政が始まり、もしも政府が腐りきっていれば要求は無視され、この国は内戦へ向かうはずだ」

「……」

「お前は賢い。だから結果は予想できていたはずだ。拒否されることがわかっていて、それでもなお政府へ要求を出した。予想通り。お前の指定した期限が近づいてきても、米国政府内は何一つまとまっていない。そんな風に、この国が内戦に突入する、大局が予想できていたと言うのに、お前は敢えて“選択の機会”を与えたな。おかしいだろう。まるで結果がどちらに転んでも、構わないみたいだ。心底からこの国の内戦を願っていたなら、最初から政府に取り引きなど持ちかけず、黙って真実の目録バイブルを公開すれば良かっただけの話だ」

 カナタは、視線を鋭く細めた。

「だからこそ、ようやくわかったよ」

「私の本当の望みを、かね?」

「ああ。お前は初めから、舞台に立つ演者じゃなかった。ただの観客に過ぎなかったんだ。だからこそ、明確な意思や目的なんてものを持っていなかった。観客が舞台に関わる理由はただ1つ――――“見たいから”だろう? この国の行く末をな」

「……」

「お前のやっていることは、ある意味で大いなる“実験”だ。巨大な不正がうごめく社会で、人々が正義を追求し続けたなら……世の中はどうなっていくのか。どんな結果になるのかわからない未来を、お前は見届けようとしていた。それだけだったんだろう?」

 尋ねられたジェイクは、しばらく黙り込んだ。

 2人が喋らなくなると、静寂はその濃さを増す。眠らない大都市と呼ばれるニューヨークは、信じられないほどに静かな夜を迎えていた。

 ――まったく、何という少年だろうか。

 思い入れのない綺麗事を並べ立てて、ただ人々を煽動していたことを見抜かれてしまった。自分の行いによって、世界をどう変えていきたいのか。大した理想を持たないことを、知られてしまった。自らの作り上げた、第四執行者フォース・カインドという虚構の英雄の仮面を剥ぎ取られた。

 それを悟ったジェイクは――白頭鷲の仮面を取り外した。

「いつの時代も……人々は自身の選択が正しいことを願っている」

 老練の素顔を露わにしたジェイクは、僅かに微笑んで語り始めた。

「正しい人生を歩み、正しい伴侶を選び、正しい親でありたい。自身が正しくあることで、いつしか幸せになれる。人々にとって、つまり正義とは“信仰”の1つなのかもしれない。どんな境遇に生きていても、それは、どこにでもありふれた人の願いだろう?」

「……」

「私の息子も、他の多くの人々が信じるように、正義というものを信じた。だが残念ながら、息子はその信仰によって、命を奪われることになった」

 そのことを、いつまでも悔しく感じてきた。だからこそ、表情を顰めてしまう。

「息子が信じた正義の正体を、私は突き止めたかった。私も、息子の信じた正義に近づこうと努力したんだ。その結果、今度は妻も失うことになった。私は何もかもを失った」

「知っている。お前の過去なら、ゾーイから聞かされた」

 カナタは、ジェイクにそう教える。ジェイクは苦笑した。

「私の求めた正義とは、私の愛する者たちの命と釣り合うほどに、果たして重大なことだったのか。ずっと、それを知りたいと願っていた。だからさ。大統領になることで、その真実を突き止めようとしたのさ。そして私はついに……知るべきではなかったことを知った」

 ジェイクはゆっくりと息を吸い込み、吐き出す。

 それは大きなため息だった。

「息子が突き止めようとした事実は、米国の息の根を止めかねない、政府の巨大な不正についてだった。その秘密を守ろうとした政権の一部の人間たちによって、私の息子と妻の暗殺は決められたんだ。国を失うか、議員の妻子を殺して口を封じるか。選ぶべきは決まっている。私は認めてしまったんだ。この国にとって、私の家族を殺すことは“正義”だったのだと」

 告白しながら、息苦しそうに胸元を掴む。

「私は愛国者だ。最大多数の幸福のために、奉仕することを厭わない。この国の国体を守護するために、汚いことに目を瞑らなければならないことも、時にあるのは理解している。だが、だからこそ、わからなくなった。不正をなかったことにすることが正義で、そのために私の家族が死ななければならなかったのなら――――私の信じてきた正義とは何だったのだ?」

 細めていた目を、やがて険しく血走らせていく。行き場のない、ドス黒く激しい憤りの気持ちが、胸中を滾らせてきたからだ。ジェイクは、カナタを睨んで言った。

「不正の数々を見逃し、私の家族の命を奪うことで維持される今の社会を、私は認めることなどできない! これが正義であるはずがないんだよ! この国は今、“偽の正義”によって成立している。なら本物の正義はどこにある?! 息子が求め、私が求めた真の正義だ!」

 その答えを欲していたのだ。

「こんな例え話があるよ……。戦争で、大勢の敵を倒した剣士の話だ。祖国の人々にとって、剣士は多くの敵から国民を守った救国の英雄だ。だが敵国の人々から見ればどうだろう。剣士は多くの仲間を殺した大量殺人者だ。人の考える正義とは、見る者の視点によって決まる。唯一無二ではない、不確かで曖昧な、形のないものだ。つまり個人の目で、真の正義を見極めることなどできないということさ。様々な立場。あらゆる者。それらが集まり、議論し、ぶつかり合い、そうすることで今、見いださなければならないんだよ――“究極の正義”を!」

 激しい怒りと情熱に胸を焦がし、ジェイクは自身の思いを口にする。

「社会が汚職と腐敗にまみれ、多くの弱者たちが、富める者たちの刹那の戯れに振り回され、全てを失う。そんな狂ったこの時代だからこそ、我々は今一度、真剣に思い出さなければならない! 正義とは何だったか! 究極の正義とは何か! その答えがないまま、何も考えずに俯いて生きようとするから、狂った社会が何も変わらないことを認識するべきなのだ!」

 拳を固め、熱弁は続く。

「最大多数の人々が心底から正義を追求することで、この国は本当に正しい姿に戻ることができる。そう信じて、私は各地で人々を煽動した。今の法は正しいのか。守るべきは権力者たちのルールなのか。改めて人心に問いて回ってきた。今この国では、数え切れない人々が、正義とは何だったのかを思い出そうと立ち上がっている! 誰もが正義を求め訴えている!」

「そうして人々が、お互いの正義をぶつけ合うことで生じる蠱毒こどく……。それを実現するための手段として、内戦を起こそうということになるのか。気に食わないものを暴力でねじ伏せようとは、元大統領様が、ご立派なテロリストに成り下がったことだ」

「法の統治になど興味のない、犯罪者の君に言われたくはない皮肉だね。それに、暴力によって社会を変えてはならないというのは、今の権力者たちが考えた、彼等にとって都合が良い“ルールの1つ”に過ぎないだろう? それを守ることが、本当に正義であるとは限らない」

「そうかもな」

 素直に認めるカナタの態度に、ジェイクは苦笑する。

「君は少し誤解しているよ。私は観客などではない。大衆の正義によって、これから裁かれるこの国。その裁判の判決がどうなるのかを見守る“傍聴者”なのさ。そう。この国に、究極の正義を生み出したかった。その正義が、成し遂げられる様を見たかったのさ」

 そして何もかもを、裁いて欲しかったのだ。

 息子を殺されたこと。妻を殺されたこと。その原因を作った者たち。その作戦を立案し、遂行した者たち。それを「仕方がないことだった」と認めてしまった自分。真実を隠蔽し続けることで、生きながらえている腐った国。そして……正義を失い、安穏と暮らす国民たちを。

「そうだ。全てが裁かれなければ、私の家族は“報われない”じゃないか……!」

 一通りの話を聞き終えたカナタは、それら全てを鼻で笑った。

「…………何がおかしいのかね」

 ジェイクは、カナタのふざけた態度で露骨に苛立った。

 カナタは肩を竦めた。

「長々と演説するわりに、お前もベイリル大統領と同じように、米国の秘密とやらを具体的に明かそうとはしない。まだ国を守ろうとする意思は残っている。その律儀さに感心したのさ」

「言っただろう。私は愛国者だ。人々がこの国をどのように裁いていくのか。その行き着く先を見守っているだけだよ。万が一にでも政府が、私の要求通りに軍政への移行を認め、予定通りに内戦へ至らなかった場合……君のような危険人物に、真実の目録バイブルの中身が知られていることは、この国の国益にかなわないだろう?」

「なら残念だったな。真実の目録バイブルの中身について、オレはもう、おおよそ見当をつけている」

「…………?」

 カナタの発言が、一瞬、理解できなかった。

 今、目の前の少年は何と言ったのだ。真実の目録バイブルの中身を……すでに察している?

カナタは説明してやった。

「歴代の大統領にのみ伝えられてきた、米国の破滅を招き得る情報兵器。それがいつから存在しているのか、詳細は知らないが、誰にも知られてはならない秘密が、現代にまで存在していること自体が奇妙だろう。そんなに危険な秘密であるなら、誰にも伝えずに闇に葬っておくべきだったはずだ。だがそうすることはされなかった」

「……」

「だから、こう考えられるはずだ。その秘密とは、大統領が大統領の職務を遂行する上で不可欠な情報であり、後世に残し続けることが最善だった。大統領なら必ず理解しておかなければならない現実がそこにある。それは今もなお、米国が曝されているであろう“危機的な状況”に関する情報なんじゃないのか」

 街灯の乏しい光だけで照らされているカナタは、陰影の多い顔に、不敵な笑みを浮かべる。「結論から言おう。米国はすでに――――“破産状態”にあるんじゃないのか?」

「…………」

 ジェイクの肌が粟立った。

 堪らず、胸中で叫びを上げてしまう。

 体面は冷静さを保とうと努力するが、額からにじみ出る脂汗は、隠しようがない。

 咄嗟にとぼけようと、苦し紛れの相づちを打った。

「……面白い考察だ。だがなぜ、そんな突拍子もない推測を考えたのかね?」

「連邦準備銀行の地下金庫へ案内された時、銀行総裁の話を聞いて妙だと感じた。ゾーイの話では、米国の国内には全部で10000トンの金塊があるらしい。その内の8000トンが、ニューヨーク連邦準備銀行の地下に保管されているということだった。だが総裁は、2000トン“しか”保管されていないと言い、事実、空っぽの棚がずいぶんと多い印象だった」

 ジェイクの内心の焦りに気が付いているのだろうか。

 カナタは余裕の態度で語り続ける。

「この国は、世界中で基軸通貨として使われているドルを自国通貨にしている。米国は、外貨準備として、他国の通貨を持つ必要がない特殊な国だ。その代わりに、ドルの価値を裏付けるものとして、無国籍通貨と呼ばれる“金”を保有しなければならない。その金の保管量が聞いてた話よりもだいぶ少ない。ゾーイの知識が間違っていたとしても、ずいぶんな差異だ」

「……連邦準備銀行はニューヨークだけでなく、米国内の各地にある。たまたまニューヨークの金塊保管量が少なかっただけかもしれないだろう?」

「いいや。あれだけの金塊を保有できる大がかりな金庫が、国内のあちこちに設置できるとは考えにくい。実際にイーグルアイにも調べさせたが、米国で金塊の保有をしている拠点銀行は、フォートノックスと、ウエストポイント。それにニューヨークの3箇所だけだ。ニューヨークはその中でも最大の金庫を持っている。そこに金が少ないというのは、やはり妙だろう。あるはずの金塊は、いったいどこに消えてしまったんだ?」

 カナタはベンチに背を預け、膝を組む。ふてぶてしく推論を披露した。

「ためしに時系列にして考えてみたら、全てが繋がった。過去に起きた世界的パンデミックによる大不況の際に、連邦準備銀行は、いつ倒産するかもわからない弱小企業のハイ・イールド債を大量購入して、米国経済を支え続けた。それを推進したのが、ハドソン上院仮議長だ。ハドソンはその後、クランスモア総合研究所の中東支店に“物資”と呼ばれる何かを、大量に密輸した。それこそが、連邦準備銀行に保管されていた“金塊”だったのだと考えたらどうだ」

 あまりにも鋭すぎる考察。

思わず、ジェイクは二の句を失ってしまう。

「そもそもドル紙幣とは、実体はただの紙切れに過ぎない。それ自体には何の価値もないが、その紙切れがあれば、等価の金と交換ができることに価値があった」

 カナタは、懐からドル紙幣を1枚つまみ出した。

「ドルの価値を裏付けるために必要な金塊。それを米国外に持ち出して隠す理由は何だ? 金塊を守るためだ。では何から守る? ドル紙幣を、金塊に換金しようと銀行へ殺到する人々から守るためだ。ではなぜ、そんな事態が起きるのだと、ハドソンは想定した? 銀行の抱える借金が、返済能力を超えてしまったからだ。おそらくは、大量に購入したハイ・イールド債が焦げ付いて、連邦準備銀行が何らかの破綻状態に陥ったんだろう。借金を穴埋めするため、ドルを大量に刷れば未曾有のインフレ。もはや“ドル紙幣の価値はなくなっている”に等しい」

 取り出した紙幣を、カナタはその場に放り捨てて見せた。

「米国は、その事実を隠して誤魔化す選択をした。世界中の決済に用いられている、ドル紙幣の価値の喪失。おそらくそれこそが、真実の目録バイブルに眠る情報兵器だ。近年。米国が、急速に中央銀行デジタル通貨CBDCを推進した目的は、世界中で、より多くの人間にドルを使わせることで、中央銀行のドル発行量を増やし、ドル決済のマーケットを極大まで拡大するためだ。ドルの価値が喪失すると困る“仲間”を増やすためという側面もある。電子ドル決済というシステムを失えない国々が増えて結託すれば、ドルの価値は永遠に維持することができるからな」

 芳しくないジェイクの表情を覗き込み、カナタは、眼光をギラつかせて尋ねた。

「以上は全てオレの推測だ。証拠はない。だが――――どの程度合っていた?」

 何も答えられなかった。

 何を言っても、この少年には見破られてしまう。その確信があった。

 まったくもって、震えさえこみ上げてくる人外の知性である。

 遙かに年下の子供と対峙しているはずだというのに、胸中に余裕はなく、まるで強大な相手に立ち向かうような心境である。だが気を取り直し、ジェイクは笑みを浮かべた。

「フン。……今さら、そんな推測が当たっていようが、外れていようが、君たちの側が不利なことに変わりはないさ。外国人の君にとって、この国の行く末など取るに足りないことかもしれない。だが、今の君の立場は米国政府側だろう? 米国社会の腐敗に怒る、圧倒的多数の世論が形成されている上に、政府は最大の弱みを、私に握られている。もはや為す術など残されていないはずだ。今さらここで私を捕まえたところで、それが何の解決になると言うのかね」

「たしかに何の解決にもならないだろうな」

 やはり自分の優位が揺らいでいないことを、改めて確信する。

「フフ。大局がわかっていてなお、この場に君が現れた理由を知りたいね。だが、それももはや、どうでも良いことさ。何をするにしても、もう全ては手遅れだ」

 ジェイクはコートの裾を翻し、自身の腕時計を見下ろした。

「私が指定した時間まで、残り6分」

 米国内戦の引き金が引かれるまで、猶予は微塵もない。

「憐れなものさ。いまだ緊急会見が開かれていないことから見ても予想通り、政府職員たちは自らの保身にひた走るだけで、自分たちが創り出した、歪な社会を省みることなどなかったのだろう。間もなく自動的に、インターネットを通じ、全世界に向けて真実の目録バイブルの中身は解き放たれる。残念だが、私は遠慮なく機密情報の全てを公開するぞ。そうすれば間違いなく、この国への国民の信頼は吹き飛ぶだろう」

「……」

「君の推測が当たっているかどうかを知りたいのなら、その時に自分の目で確認すれば良い。間もなく真実は公開される。この腐った国に下される、裁きの結末と共にな」

 ジェイクは祈りを捧げるように、曇天の夜空を見上げた。

 1つの星の輝きも見られない、祝福されない空。その重々しい黒の空を背負う都市は、数分後に訪れる新しい世界の気配を感じ、怯えているようにさえ見えた。

 ジェイクも同じ心境である。

 自身が求めた究極の正義。

 それがこれから、世界をどのように変えていくのか。憂うのは当然である。

 だが、ジェイクは勝利を確信して告げる。

「さあ、間もなく内戦が始まる。この国は大いなる初期化グレートリセツトへの道を選んだ。多くの血が流れるだろう。それは正しい社会が生まれるための、産みの苦しみに他ならない。身勝手に弱者を食い物にしてきた者。欲に溺れてきた者。悪徳に興じ、人々を虐げてきた者たちは軒並み今の地位を追われ、引きずり下ろされ、裁きを受けることになる。新たな米国が誕生するんだ」

 できることなら、それを家族と共に見届けたかった。

「君たちは敗北したんだ。しかしそれを嘆くことはない。世界はこれから、良い方向へ変わっていくのだから。さあ、せっかくだ。ここで私と共に、この国の終わりを見届けよう」 

「――――――――残念だったな。敗北するのはお前の方だ」

 そんな言葉を聞くことになるとは、微塵も思っていなかった。

 何事かと、ジェイクは再びカナタへ視線を戻す。

 カナタの反応は、予期せぬ哀れみの表情だった。

 怪訝な顔をするジェイクを見やり、カナタは冷ややかな態度で続けた。

「勘違いしているようだな。お前は致命的なまでに、現状を正しく認識できていない」

「…………いったい何の話をしているんだ?」

 意味不明としか言い様がない指摘。

 カナタの言わんとすることに、ジェイクは、まるで見当がつかない。

「さっき、ここでお前を捕らえても意味がないと言ったのは“現時点では”という話だ。間もなく状況は一変し、この形成は逆転する。窮地に立たされるのは、お前の方になるだろう」

「……言っていることが、まるでよくわからないね」

「なら、わかるように言ってやる。間もなく、政府を批判している圧倒的多数の世論は逆転し、人々は政府ではなく、お前のことを非難するようになる。お前の切り札である真実の目録バイブルは失われ、それが世間へ公開されることもない。そうして腐った政府は、腐ったまま存続し、腐った社会も、腐ったまま維持されるだろう。内戦など起きようはずがない」

 奇跡のような話だ。カナタたちにとって都合が良すぎる。

 それはもはや、妄想としか言えない展開だ。

「……私が長らく第四執行者フォース・カインドとして活動を続け、練り上げ、成熟させてきた世論だぞ。それがどうすれば、これから間もなく、ものの数分でその全てをひっくり返せると言うのだ。しかも同時に、切り札である真実の目録バイブルが失われるだって?」

「ああ」

「馬鹿な……! 私はこの場に、データを持ってきていない。いくつかのバックアップを取って、ニューヨーク市内の複数の場所に隠しているんだぞ。しかも、ネットワーク公開に備えて、時限装置に接続している状態でだ。私を捕まえてもデータは回収できない」

「わかっている」

「データの保管場所は部下の誰にも教えていないんだ。君たちが捕まえた手下を尋問したところで、保管場所には辿り着かないぞ。今から探すにしても、明らかな時間切れだ」

「だろうな。だが、お前から切り札を奪うために、わざわざ保管場所を探して赴く必要なんてない。そうする必要がないから、オレはこの場に現れて、ただお前と話をしているんだ」

 ……不安が生まれる。

 ハッタリだとしか思えない。それは普通の相手が言うのなら、そうなのだろう。

 だがこうして対峙しているのは“人類史上最悪の天才”ではないか。

 ジェイクは、固い唾を苦労して飲み下す。

「どう考えても……君たちが逆転する可能性など皆無に等しい。何を企んでいる」

「別に。オレは何も企んでいないし、何もする必要がない。ただここに立って、お前と話をしているだけだ。それだけで良い」

「……」

「だがそれでもお前は――――これから“敗北”するんだ」

 理にかなわないことを言っている。

 カナタの言うことを全て鵜呑みにするわけではないが、味方も引き連れず、この場にやって来ていると言っていた。たった1人で現れて、ジェイクと話をするだけで、自分たちの全ての不利を覆してしまえるというのは、想像もつかない。

 冗談や酔狂で言っているのではない。カナタの真剣な表情から、それだけは見て取れる。

 カナタは間違いなく、何かしらの確信を持って、ジェイクに警告しているのだ。

「……わからない。その自信は、いったいどこから――――」

 ――――目が眩む。

「!?」

 最初は、目眩がしたのかと思った。だがそうではない。

 赤い閃光。その眩い光が網膜を焼くように、視界を、赤一色に埋め尽くしたのだ。

 理解不能な現象。何の光なのか。ジェイクは慌てて目を擦り、瞬きを繰り返しては、視力を取り戻そうとする。光の出所と正体を探ろうと、懸命に周囲へ目を凝らした。

 強烈な眩い閃光は、雷のような一瞬の輝きだったようだ。すでに光量を落としている。

 光量を落としたと言っても、周囲の景色は、まるで昼が訪れたかのように明るくなっている。ジェイクの周囲のあらゆるものは、輪郭をハッキリと視認することができた。

 まるで、血のように赤い昼だ。

「なんだ……何なんだ、これは……!」

 遙か頭上、上空を見上げながら、ジェイクは愕然と呟いた。

 赤い、太陽のように眩い光を発する点が見える。それを中心に、空に立ちこめていた雲は円形にくり抜かれ、消し去られていた。大空で、何かが爆発した跡だ。その爆発の衝撃によって、湖面に広がる波紋のごとく、雲は遠くへ押しやられてしまっているではないか。 

 信じられない光景を目の当たりに、呆けてしまっているジェイク。

 ただ涼やかに、カナタが宣告した。

「――――高高度核爆発による“電磁パルス攻撃”」

 ジェイクは驚愕する。

 慌ててカナタへ向き直り、そしてジェイクは、心底から恐怖する。

 背筋が凍り付くほどの冷たい眼差し。血のような赤い光に照らし出され、漆黒の少年は、研がれた氷塊のような目で、ジェイクを見つめてきていた。その頬には不敵な笑みを浮かべて。

 何とおぞましい姿だろうか。この世に顕現した悪魔のようだ。

 カナタは、困惑しているジェイクへ教えてやった。

「高層大気圏で爆発させた核爆弾は、広範囲に強烈な電磁パルスを放つ。それによって、地上にある電力を使ったインフラや設備は全て破壊される。米軍の計算によれば、ニューヨーク市と隣接する都市の一部を、完全にブラックアウトさせることができるという話だった。見ての通り、この市内における、あらゆる電子機器は破壊されたようだ」

 カナタの視線に促され、ジェイクは周囲のビル群を見やる。周囲が明るくなったせいで気付くのが遅れたが、どのビルも照明が消えていて、見渡す限り停電しているように見えた。

 いいや。これは、ただの停電ではない。

 電力網ごと、地上に存在する全ての電子基板が破壊されたのだ。 

「まさか……電力インフラごと、ニューヨーク市の都市機能を破壊したのか!」

 震える声で、その事実を口にする。カナタは、そんなジェイクを嘲笑う。

「ベイリル大統領は渋っていたが、まあ、結果として今のところ、人は死んでいなさそうだ。この様子なら、都市機能は完全に壊れただろう。自動車も動かせず、インターネットへ接続できる機器も根こそぎ壊れているだろうな。もちろん、お前の大事な切り札、真実の目録バイブルも」

 堪らず、ジェイクはカナタに向かって喚いた。

「イカレている! まさか真実の目録バイブルの公開を阻止するためだけに、核ミサイルを発射して、ニューヨーク市へ電磁パルス攻撃を仕掛けただと! 都市機能の停止とはつまり、病院や消防、警察の機能も麻痺させたことに等しいんだぞ!」

「たしかに、それによって何百人と死ぬかもしれないな」

「それだけで済むわけがない! これからいったいどれだけの犠牲が出ると思ってる! こんな、祖国を攻撃するなど……! こんな蛮行、ますます国民たちの怒りを買うだけだぞ!」

「おいおい。何を“他人事”のように言っているんだ?」

 怒り狂うジェイクを馬鹿にするよう、カナタは肩を竦めて言った。

「忘れたのか? アレはオレたちが撃った核ミサイルじゃない。“お前が撃った核ミサイル”だっただろう?」

「………………?」

 カナタは、座っていたベンチから腰を上げる。

 狐につままれたような顔をしているジェイクへ、やれやれと告げた。

「エリスが、オレの性質を分析していたと言ってたな。ならオレも、お前の性質を分析してやろう。性格は誠実で真面目。そして政治家として演説をすることに慣れているせいだろう。繊細な事案について“婉曲に話す癖”のようなものがある。そこがお前の欠点だ」

 言いながらカナタは、ゆっくりとジェイクに歩み寄っていった。

 無意識に、ジェイクは後退ってしまう。

「ホワイトハウスへ要求を突きつけた時だ。お前は、ベイリル大統領の周囲に、真実の目録バイブルの存在を知らないであろう閣僚たちが控えていることを察していた。情報の危険性を熟知していたお前は、直接的な表現を避け、ベイリル大統領にだけ伝わるであろう、言い方を選んで使った。真実の目録バイブルのことを敢えて“破滅の鍵”と表現した。おそらく無意識の配慮だろう」

「それが……何だと言うんだ……!」

「破滅の鍵というものは、真実の目録バイブルのことを指す。それはベイリル大統領にしか伝わらない表現だった。その言い回しを聞いた他の人々にとっては、お前の言う破滅の鍵が何を指すのか、わからなかった。それは、統合参謀本部にいた者たちだけに限った話しじゃないだろう。たとえば、何も知らない国民たちに対して、それが“核ミサイルのことだ”と教えれば、どうなると思う?」

 心底から恐怖した――――。

 なんと非道なことを思いつくのだろう。

 なんと非情なまでに、卓越した頭脳なのだろう。

 カナタが何を言おうとしているのか、ジェイクには理解できた。

「あの時、お前はこう言っただろう? 我々は、今の米国の根本を揺るがし得る破滅の鍵を入手した。それを使われたくなければ国家非常事態宣言を出せ。あの脅迫電話は、もちろん全て録音されていた。悪意ある編集を施せば、お前が米国に対して“核攻撃”をするのだと脅迫したようにも聞こえる。そして実際に核は放たれ、こうしてニューヨークは攻撃されたわけだ」

「……あ……あぁ…………」

「今頃、編集された通話音声は、全米メディアに拡散されている頃だろう。これでお前は晴れて、正義を体現する英雄から、大衆を騙し煽動していた“薄汚いテロリスト”だ」

「ああああああああああああああああああ!」

 崩れ落ちるように、カナタの前に跪いた。

 そして空に向かって叫んだ。こみ上げる絶望を吐き出すように喚いた。

 喉の奥が裂け、血の味が滲み、血管が張り裂けるまで。声の限りを上げて叫んだ。

 破壊された。

 これまで練り上げてきた計画も。

 積み重ねてきた活動も。

 何もかも全てを、文字通り完膚なきまでに叩き潰され、覆されたのだ。

 たった1つの失言と、たった1手の策謀によって。

 叫ぶのを止めると、まるで声と共に、魂まで抜け出てしまったように脱力した。

 ただ、煌々と赤く染まる夜空を仰ぎ続け、頬を涙が伝った。

「………………わかっていたさ。私が正義でなかったことなんて」

 息子のために、何もしてやれなかった無力な父親である。

 息子の死を受け入れられず、無謀なことをして、妻を失った愚かな夫である。

 自分勝手な振る舞いで家族を傷つけた。罪深い存在であるというのに、それなのに自身は正しかったのだと思いたかった。だからこそ探そうとしていたのだ。

 本当の正義という、ありもしない――――“自分を正当化できる理由”を。

 跪くジェイクを見下ろしながら、カナタは告げた。

「正義なんてものは“願望”だ。気に食わないものを悪に見立てて、攻撃することを正当化する身勝手な決めつけだ。法に合致しているか、人道に則しているのかなんて、みんな本当はどうでも良い。自分の価値観と都合を、他人に押しつけたい。オレたちはいつだって、自分と相容れぬ者を“傷つけて良い理由”を探してるだけだ」

「私も、そうだったと言いたいのか?」

「自分の境遇を社会のせいにして、それを罰したかっただけだ。正義を名乗ってな」

 馬鹿馬鹿しいほどに、納得した。

 だからこそ、言わずにはいられなかった。

「………………矮小だな、私は」

 遠い空での核反応が収まり、周囲に暗がりが戻り始めた頃。

 しばらくして、遠くから、ヘリのローター音が聞こえてきた。

 武装した兵士たちを満載したヘリの編隊が、公園に向かって飛来してくるのが見えている。

 軍は、電磁パルス攻撃の影響が及ばない場所に待機していたのだろう。だからこの場には、カナタだけが現れていたのだ。電磁パルス攻撃の影響が少なくなった今のタイミングで、ようやくジェイクを捕らえるため、駆けつけようとしているに違いない。

 懸命に国を救おうとした英雄。

 だが皮肉なことに、その英雄を救おうとする者はどこにもいなかった。

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