第9話

僕は、今回も仕事を休んで彼女の傍に居ることにした。でも、やっぱりどこに居れば安全なのかが分からない。

僕が腕を組んで考えていると彼女が、

「折角休んだならお家でゆっくりしよ」

と微笑んだ。

僕は、この笑顔を守るためにも対策を考えなきゃいけない。とりあえず家中の鍵を閉め、カーテンも閉めた。強盗に襲われることを防ぐためにチャイムも鳴らないようにした。リビングへ行きソファーで一息ついていると。ふと、先程の彼女の発言を思い出した、そして、僕はそれに違和感を覚えた。前回、会社を休んだ僕には買い物に行こうと言っていた。しかし、今回は、家に居ようと言っている。僕が戻しすぎて変わってしまっているのか、そんな事を考えていると彼女はDVDを5、6本持ってソファーに座りに来た。僕は考えるのをやめてDVDの準備をした。それから、僕たちはアクション物や恋愛物の映画を見ていた。3、4本見た後に僕たちはソファーの上で眠りについた。

僕は、ソファーで寝たことによる身体の痛みから目を覚ますと辺り一帯、火の海だった。なんだよ、これ僕たちは火なんて使ってない、どうしてこんなことに、僕は回らない頭を無理やり動かし、隣で眠っている彼女を起こした。彼女は、眠そうにしていたが目を見開いて驚いている。消防署に電話を入れたいがスマホは二階の寝室に置いたままだった。僕は彼女を守りながら脱出を試みたが、出れそうな場所は見当たらない。リビングに掛けてある時計は16時32分を差していた。後5分で彼女は死ぬ、そんな事はさせない。そんな時、突然、天井が崩れ落ちてきた、僕は彼女を庇ったが、彼女を狙っているように天井が次から次へと落ちていく。大きな破片が落ちてきた瞬間、彼女は僕を突き飛ばした、僕は驚いた、彼女がなぜそんな事をしたのか分からなかったからだ。破片に埋もれた彼女は

「逃げて、棗くんだけでも、お願い」と叫んだ。僕は、彼女にそんな台詞を言ってほしくなかった、僕が犠牲になるべきなのに、僕は彼女を助け出そうとしたが、持ち上がらなかった。僕が何度も持ち上げようとしていると彼女は見たことのない形相で、

「私はいいから逃げなさい、貴方だけでも助かってほしいの、だからお願い、最期の私のお願い聞いてよ」

と叫んだ。僕は泣きながら出られそうな場所を探し、脱出に成功した。僕が脱出したと同時に家は跡形もなく崩れ落ちた。

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