第四章 河童の河太郎


「おい、河太郎。夏海は、女なんだから、手加減しろよ。」


「ちょっ…!白狐さん!」


河太郎に、引っ張られていく夏海を口元に手を当て、白狐は、クスクスと笑う。


「さぁー!行くぞ!」


「も、もう!しょうが無いわね。行くわよ。」


両手に、ペッペッと唾を吐き、夏海は、下駄を投げるように脱ぎ、裸足になる。


「やぁー!!」


「とぉー!!」


二人の身体がぶつかったかと思うと、夏海の身体がヒョイと、宙に浮いた。


「あっ!あぁ…ああっ!」


「それっ!」


草の上に投げ飛ばされ、夏海は、転がるように落ち、大の字に倒れた。


「いっ…たぁー!」


四つん這いになり、お尻を撫でている夏海を見て、白狐は、腹を抱え笑う。


「パンツ…パンツ見えた!あっはっはっは!」


「酷いわ…白狐さん。」


唇を尖らせ、ワンピースの裾を両手で下げる夏海。


白狐は、クスッと笑うと、夏海の側で身を屈めた。


「ほらっ、おぶってやる。」


「一人で歩けます!」


そう言って、勢いよく立ち上がった夏海は、身体の痛みに身を丸めた。


「アイタタタ…。」


「ほら、みろ。家まで送ってやるから、おぶされ。」


優しく言う白狐に、夏海は、両手をそっと彼の肩にかけ、おぶさった。


夏海をおぶったまま、草の上に転がる彼女の下駄を拾い、白狐は、河太郎に言った。


「夏海を送ってくる。すぐに戻るから、お前も、そろそろ、小屋に戻れよ。」


「はいよ。分かった!」


夏海をおぶって、川岸を去って行く白狐の背に手を振り、河太郎は、サササッと、駆けて行った。

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