第四章 河童の河太郎


二人は、取っ組み合い、押したり押されたりしている。


「うぐぐ…!」


ズズズと後ろに押しやられそうになり、河太郎は、唸り声を上げると、片手を頭の天辺に持っていき、サササッと素早く、頭を撫でるような仕草をした。


その瞬間、ピュッピュッと水が飛び出し、少年の目に入る。


「うわぁっ!」


少年は、声を上げ、目を押さえた。


その隙に、河太郎は、少年の身体を押し倒す。


「やったー!俺の勝ちだ!」


ピョンピョンと跳ね、喜ぶ河太郎に、白狐は、呆れたように言う。


「こらっ、河太郎!インチキは、いかんぞ。」


白狐に言われ、河太郎は、へへへと頭をかく。


「ほぇー…。」


変な声を出し、目をパチクリさせている夏海をクスクスと笑う白狐。


「白狐さんの彼女かい?」


そう言って近付いてきた河太郎に、夏海は、顔を真っ赤にして首を振る。


「ち、違います!」


焦った感じに言う夏海をフッと口元に笑みを浮かべ見つめると、白狐は、言う。


「そうだよ。俺の彼女。」


「びゃっ、白狐さん!」


カァーッと更に顔を赤くした夏海をあははは!と高らかに声を上げ、笑う白狐。


「俺、河太郎です。よろしく。」


そう言って、手を差し出した河太郎の手を握り、ひゃっ!と声を上げ、夏海は、手を引いた。


河太郎の手は、ヌメヌメしていて、指と指の間に、水かきがついていた。


「えへへー。」


明るく笑う河太郎に、夏海も笑みを浮かべ、彼の手を取り握手をする。


「あたし、夏海です。」


「夏海、相撲しよう!」


そう言って、手を引っ張る河太郎に、夏海は、焦った感じに言う。


「えっ?!あたし、相撲は…!」


「やろうやろう!相撲、やろう!」


グイグイと手を引く河太郎に、困った顔をして、夏海は、白狐の方を見る。

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