第四章 河童の河太郎


いつものように、薬屋で働き、家路に向かっていた夏海は、川岸から何やら騒がしい声が聞こえ、そちらに目をやる。


大勢の子供達がワアーワァーと楽しげに騒ぎ、相撲をとっている。


その中に、白狐の姿を見つけ、夏海は、川岸へと駆け下りて行った。


「白狐さーん!」


名前を呼ばれ、そちらを振り向きた白狐は、夏海の姿に笑みを浮かべる。


「夏海!」


「白狐さん、何をしているの?」


側に駆けてきた夏海に、白狐は、腕を組み、フッと笑う。


「相撲だよ。河太郎と町の子供達の相撲大会だよ。」


「河太郎…?」


子供達と相撲をとっている、少し背の低い、おかっぱ頭の男を夏海は、見つめる。


「河太郎は、河童だよ。」


「えっ?!」


白狐の言葉に、夏海は、驚き、声を上げた。


「それって、ほんと?」


眉を寄せ見つめる夏海に、白狐は、チラリと冷たく見た。


「俺の言うことを信じないの?」


「そうじゃないけれど…だって、普通の人じゃない。」


「フフフ…見てなよ。」


夏海は、目を丸くして、河太郎を見つめていた。


「さぁー、次は誰が相手だ?」


河太郎が言うと、体格の良い、大きな身体の少年が前に出てきた。


「俺が相手だ!」


「よし!来い!」

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