第三章 人間なんて大嫌い


白狐は、軽く息をつくと、首を振る。


「違う.........そんなことじゃない。命あるものは、いつかは、死ぬ。それは、俺にも分かっている。それならそれでいい。だけど…そうだと分かっているのに、嘘をつく。ずっと、側にいることなんて…一緒にいることなんて、出来もしないのに。人間だけだよ、嘘をつくのは…。木も花も動物も、自分がもう駄目な時は、正直に教えてくれる。何で…何で、嘘をつくんだよ!人間なんて.........大嫌い!!」


「白狐さん…。」


肩を震わせ、顔を伏せた白狐を夏海は、悲しく見つめる。


「ずっと一緒だと言ったのに…。俺を置いていくなんて。また、会えるよ…なんて.........またなんて、ないのに。最後の最後まで、嘘をついて…。信じていたのに…!」


「.........その人のことが…好きだったのね。」


「あいつは、俺がアヤカシだと知っても、普通に接してくれた。夏海…お前みたいに。」


夏海は、そっと白狐の肩を抱き、瞳を閉じると、優しく呟いた。


「あたし…白狐さんのことが好きよ。でも、あたしにも、寿命がある。何年…何十年先かなんて分からないけれど…。だけど…肉体はなくなっても、この気持ちは残ると思うの。想いは…残るわ、永遠に。」


肩を震わせる白狐を強く抱きしめ、夏海は、言う。


「死なないとは言わないわ。それは、無理なことだから。だけど、この気持ちは、変わらない。これは、本当よ。」


白狐は、ゆっくりと顔を上げ、夏海を見つめる。


「…ありがとう。」


「…うん。」


白狐は、白い狐の姿になると、夏海の身体に擦り寄る。


「撫でて.........。俺の本当の姿を…好きになって。」


夏海は、白狐を優しく抱きしめる。


「大好きよ。どんな姿でも.........好き。」


夏海の、その言葉を聞きながら、白狐は、小さく鳴いた。


コーン…。


その声は、悲しいような、嬉しいような…そんな声だった。






ー第三章 人間なんて大嫌い【完】ー

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