第三章 人間なんて大嫌い


「白狐さんは…人間が嫌いなの?」


それを聞き、白狐は、眉を寄せ、夏海を見る。


「話.........聞いてたのか。」


夏海は、コクンと小さく頷く。


白狐は、軽く息をつき、話し出す。


「人間は、嘘つきだから…。」


「もしかして…人間に騙されたの?」


伏し目がちに呟く夏海に、白狐は、静かに言う。


「知りたい?」


一瞬、考えたが夏海は、口元に笑みを浮かべ、首を振る。


「知りたい…けれど。大丈夫。人には、話したくないこともあるものね。あっ…人じゃないけれど…そういうことって、アヤカシさんも同じでしょ?人に知られたくないこと…って。」


残りの握り飯を食べ終え、夏海は、にっこりと笑う。


白狐は、夏海の笑顔を見ながら呟く。


「誓ってくれないか?」


「えっ…?」


真剣な目で見つめる白狐に、夏海は、息を飲む。


「俺も、自分のことを隠さず、全て、夏海に話す。だから、夏海も、俺に隠さず、全部、話して。絶対に、嘘をつかないって…誓ってくれ。」


悲しく見つめる白狐に、夏海は、少し驚いたが優しく微笑み頷いた。


「うん…誓うわ。嘘はつかない。」


それを聞き、白狐は、煙管を岩に打ちつけ、煙草を消すと、静かに話し出す。


「俺が人間が嫌いなのはね.........。死ぬからだよ。」


「えっ.........?」


膝を立て、寂しい瞳で、遠くを見つめる白狐を夏海は、眉を寄せ見つめる。


「何で…人間は、死ぬの?」


「それは…。上手く説明出来ないけれど…この世に生まれた生き物は、全て、寿命があって.........。」


「花や木も命があるよ。でも、枯れても、また、綺麗な花を咲かせ、緑の葉をつけるじゃない。どうして、人間は、そうならないんだ?」


白狐の問いに、夏海は、口を閉ざした。

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