第三章 人間なんて大嫌い


『 …暖かい。フワフワ…。』


うっすらと目を開けた夏海は、真っ白な狐が夏海の身体を包み込むように眠っているのを見て、驚く。


「春とはいえ、風は、まだ冷たい。風邪、引いてないかい?」


「えっ?白狐さん?」


「これが俺の本当の姿さ。」


目を閉じたまま、白い狐の姿の白狐は、言った。


「怖い?」


尋ねる白狐に、夏海は、優しく微笑むと、白狐の柔らかい毛の中に顔を埋める。


「怖くないわ。暖かい…。」


「…そうか。」


「いつの間にか、眠ってしまったのね。」


呟く夏海に、白狐は、言った。


「泣いてたかと思ったら、いきなり、寝てしまうから、驚いた。」


白狐の言葉に、夏海は、まだ眠そうな目で呟く。


「ずっと、眠れなかったの。白狐さんのことばかり考えて。」


黙ったまま、白狐は、夏海の話を聞いていた。


「正直…最初は、怖かった。でも、もう白狐さんに会えなくなるかも…そう考えたら、もっと、怖かった。」


「会えなくなる? 」


「何だか…白狐さんが遠くに行ってしまいそうで。」


ギュッと強くしがみついた夏海に、白狐は、クスッと笑う。


「俺は、どこにも行かないさ。」


「ほんと?」


不安な表情で見つめる夏海に、白狐は、頷く。


そして、大かな欠伸をする。


「もう少し…寝よう。眠い.........。」


「うん。」


静かに目を閉じた白狐を見つめながら、夏海も、再び眠りに落ちていった。

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