第三章 人間なんて大嫌い
神社の裏手の木々の向こう。
広い野原に立ち、白狐は、眩しく輝く太陽を見上げていた。
『 あれから、夏海は、こなくなった。…当たり前か。』
フッと力無く笑った白狐は、人の気配に振り向いた。
息を切らせ、夏海が立っている。
その姿を見て、白狐は、一瞬、瞳を震わせる。
「白狐さん…。」
ゆっくりと近付いて来る夏海に、白狐は、冷たく言った。
「何しに来たんだ?」
「白狐さんに…会いに来たの。」
顔を流れる汗も拭わず、近付いて来る夏海に、白狐は、フッと笑う。
「俺に…?」
夏海は、黙って頷く。
「あたし…嬉しかったの。これ。」
握り締めた手を開く夏海。
そこにある、ぐしゃぐしゃのチケットを見て、白狐は、ハッとなる。
「本当に、嬉しかったの。とても、楽しみに…お出かけ用の服を着て、すごく、お洒落をしたの。」
そう言っている夏海の瞳から、涙がこぼれた。
夏海は、白狐の前に立つと、汗と涙に濡れた顔で、優しく微笑む。
「あたし…。白狐さんが好きよ。大好き。」
「俺は.........化け狐だよ。」
静かに言う白狐に、夏海は、頷く。
「うん…。たけど、好きなの。」
「夏海…。」
白狐は、腰に下げた手拭いを取り、夏海に差し出す。
「顔…ぐちゃぐちゃだよ。」
クスッと笑う白狐を見て、夏海は、顔を歪めると、思いきり、抱きついた。
「.........嫌われたのかと、思っていた。」
泣きじゃくる夏海の髪を優しく撫でる白狐。
二人は、しばらく、その場で抱き合っていた。
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