第三章 人間なんて大嫌い


あれから、二日が過ぎた。


あの後、どうやって戻ってきたのか、夏海は、いつの間にか長屋に戻ってきていた。


朝飯を終え、茶碗を洗いながら、夏海は、ぼんやりと考え事をしていた。


『 俺は、400年も生きている化け狐だよ。』


白狐の言葉を思い出し、夏海は、手を止める。


ぼぉーとしている夏海の側に叔父がやってきて、心配な面持ちで、こう言った。


「お前、具合が悪いんじゃないか?」


「う…ん…。」


上の空で返事をする夏海に、叔父は言う。


「今日は、仕事、休みな。薬屋には、俺が伝えとくから。」


「う…ん。」


ぼんやりとしたままの夏海に、叔父は、軽く息をつき、仕事に行く為、出て行った。


夏海は、赤いワンピースのポケットから、ぐしゃぐしゃになったチケットを取り出し見つめる。


『 結局、ショーは見ずに、帰ってきたのだわ。…覚えてないけれど。』


チケットをじっと見つめながら、夏海は、フゥーと息をつく。


『 俺のこと、怖い?』


白狐の言葉が頭に響く。


あの後のことは、はっきり覚えていないが黙ったまま、震える目で見る夏海を白狐は、悲しく見つめていたのを覚えている。


そう、とても悲しい目だった。


『 白狐さん…。』


夏海は、チケットを握りしめたまま、長屋を飛び出し、駆けて行く。

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