第二章 魅せられて


次の日の夜。


白いワンピースを着た夏海は、下駄ではなく、ヒールを履き、神社へ向かった。


神社の階段を上ろうとした夏海は、女に声を掛けられ、足を止めた。


蛇美である。


「あんたに、話があるんだ。少し時間、いいかい?」


「…何でしょう?」


眉を寄せた夏海に、蛇美は、クスッと笑う。


「ショーの時間までには、まだ時間があるよ。…白狐のことで、ちょっと…。」


「白狐さんのこと…?」


フイッと背を向け歩く蛇美の後を夏海は、ついて行った。


二人は、神社を離れ、人気のない川岸に来ていた。


「あのう…話って?」


問う夏海に、夕日に赤く染まる川の水面を見つめながら、蛇美は、静かに言う。


「突然、こんなことを言って、変な奴だと思うかもしれないけれど。…あなた、白狐のこと、どう思っているの?」


「えっ…?どう…って。」


少し顔を赤くした夏海に、蛇美は、フッと笑う。


「好きなのかい?」


蛇美の言葉に、夏海は、少し焦った感じに、こう言った。


「好きっていうか…とても、優しい方だなって。それに、美しい方だな…って。」


頬を染めて言う夏海に、蛇美は、クスクスと笑う。


「…白狐が人間じゃないって知っても…そんなこと言えるのかい?」


「えっ?どういうことですか?」


訳が分からず、眉を寄せる夏海に、蛇美は、腕を組み、ニヤリと笑う。

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