第二章 魅せられて


小屋の中で、浮かない顔をしている蛇美に、狛絵が話し掛ける。


「また、喧嘩したのかい?」


狛絵に言われ、蛇美は、溜息をついた。


「白狐は…あたしのことなんて、嫌いなんだ。」


いつになく弱いことを言う蛇美に、狛絵は、力無く笑う。


「好きになった男を間違えたね、蛇美。白狐は、誰も好きにならないよ。」


蛇美は、黙ったまま、狛絵の話を聞いていた。


「その証拠に、いつも一人で行動してるじゃないか。私達とも、あんまり話をしないし。何も、嫌われてるのは、蛇美だけじゃないよ。」


「そうだけど…。あたしだって、女だよ。自信無くしちまうよ。」


悲しく笑う蛇美を眉をひそめ、狛絵は、見つめる。


「蛇美さ。あんた、いつも強いこと言ってるから、駄目なんだよ。白狐みたいな男はさ、弱い女が好きなのさ。…まっ、男は、白狐一人じゃないんだし。元気出しなよ!」


ポンと軽く肩を叩かれ、蛇美は、軽く笑ってみせた。


「私は、もう寝るよ。あんたも、早く身体、休めなよ。」


「…うん。」


小屋の奥に向かいながら、狛絵は、手を振る。


蛇美は、再び、溜息をつくと、何か考え込んでいた。

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