第二章 魅せられて


小屋に戻ってきた白狐の元に、一人の女が近付いて来た。


女は、同じ見世物小屋で働く、蛇美(じゃみ)と言う。


蛇美は、蛇を操る女として、働いている。


「白狐、どこに行ってたのさ。」


そう声を掛けてきた蛇美に、白狐は、無表情で呟く。


「俺がどこに行こうが、おめぇには、関係ねぇだろ。」


冷たい白狐の言葉に、蛇美は、鋭い目を向け、こう言った。


「蛇は、嫉妬深いんだよ。」


「だから?」


「狐なんて、絞め殺せるってことだよ。」


それを聞いた白狐は、グッと強く蛇美の肩を両手で掴み、ドンッと壁に打ちつけた。


「やってみろよ。おめぇに、そんなことが出来るなら。俺のことをそんじょそこらの狐と一緒にするなよ。でないと、死ぬのは、おめぇだ。」


そう言った白狐の口元に光る鋭い牙に息を飲み、蛇美は、白狐の側を離れた。


「と、とにかく、勝手な行動は、控えておくれ。それと.........人間なんて、信じちゃいけないよ。」


「心配するな。俺は、誰も信じねぇ。人間も、アヤカシもな。」


フンと鼻を鳴らすと、蛇美は、小屋の奥に入って行く。


白狐は、胸元から煙管を出すと、煙草を詰め火をつける。


ユラユラと揺れる煙草の煙を光のない瞳で見つめる白狐。

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