第二章 魅せられて
「う…ん。来たいけれど…うちは、貧乏だからさ。その日を暮らすのがやっとで、ショーを見る、お金はないの。」
「そっか.........。」
小さく呟き、白狐は、小屋へ向かう。
「そろそろ、夜の準備の時間だから、またね。」
背を向けたまま、そう言うと、白狐は、小屋へ入って行った。
「.........またね。」
夏海は、しばらく、そこに立っていたがクルリと背を向け、歩いて行った。
夕飯を終え、片付けをしていた夏海は、トントンと、戸口が叩かれ、手を止めると、そちらへ向かった。
戸を開けた夏海は、そこに立つ、白狐の姿に驚き、声を上げた。
「白狐さん?!」
「こんばんは。」
白狐は、口元に笑みを浮かべ、着物の胸元から、一枚の紙を渡した。
「これ、明日のショーのチケット。」
「えっ…?」
「これがあれば、無料で見れるから。」
そう言って、白狐は、チケットを夏海に渡した。
「えっ、でも…いいの?」
戸惑う夏海に、白狐は、コクッと頷く。
夏海は、チケットをもらい嬉しかったがハッとなった。
「でも、どうして、あたしの家が分かったの?」
夏海の問いに、白狐は、クスッと笑ってみせた。
「匂いで。」
「えっ…?」
眉を寄せた夏海に、背を向けると、白狐は、歩き出す。
「明日の夜…待ってる。」
静かに歩いて行く白狐の後ろ姿を夏海は、不思議な気持ちで見つめていた。
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