第一章 見世物小屋がやってきた


「わぁー.........。」


瞳を輝かせ、夏海は、その光景を見つめていた。


いつの間にか、男の姿が消え、白い狐の姿がまざっていた。


月の明かりに、キラキラと輝く、白い狐の毛並み、地を宙をクルクルと回る狐達。


「素敵.........。」


あまりの感動に、夏海は、立ち上がり、その狐達から、目が離せなくなった。


どのくらいの時間が流れたのか、辺りは、元のシーンとした静まりにかえっていた。


「如何でしたか?お嬢ちゃん。」


いつの間にか、男が側にきていた。


夏海は、まだ、ぼぉーとした顔をしている。


男は、フッと笑い、乱れた着物を整える。


「さて.........夜も更けた。そろそろ、お帰りよ、お嬢ちゃん。」


そう言った男に、夏海は、小さく言う。


「夏海.........あたし、夏海よ。」


「.........俺は、白狐(びゃっこ)だよ。」


『 .........白狐。』


頬を染めた夏海の額に、そっと口付けると、白狐は、先に、その場を去って行った。


妖しく輝く月を見上げ、夏海は、しばらく、その場に立ち尽くしていた。






ー第一章 見世物小屋がやってきた【完】ー

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