第一章 見世物小屋がやってきた


夕日が山に沈む頃、町にドンカンドンカンと、太鼓や鐘の音が響き渡る。


「さぁさぁ!今夜は、見世物小屋の初舞台!今夜は、特別、無料ときた!こりゃあ、見なきゃ損だよ!」


チラシをばら撒き、華やかな衣装を身に着けた何人もの者が声を張り上げ、町を回る。


長屋の戸を勢いよく開け放ち、外へ飛び出た夏海は、キョロキョロと辺りを見渡す。


『 .........いない。あの人、見世物小屋の人じゃなかったのかしら?』


神社で会った男を探したが見当たらず、夏海は、ガッカリしたように、顔を下に向ける。


見世物小屋の者達がばら撒いたチラシが足元に絡みつく。


それを手に取り、そこに書かれているのを見る。


【火を吹く男!手足の多い男!蛇を自由に操る女!妖しい者達のショーを目にするのは、あなたです!人間離れをした彼等のショー!お楽しみに!!】


『 …人間離れした.........。』


チラシには、言葉とイラストが書かれてある。


夏海は、チラシを赤いワンピースのポケットに、そっとしまった。


夕飯を終え、片付けも終わらせた夏海は、息を切らせ、神社へ走った。


『 遅くなっちゃった!まだ、ショーは、終わってないかしら?』


カンカンカンと下駄の音を響かせ、神社の階段の途中まで上った夏海は、次々と階段を下りてくる人々に、足を止めた。

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