第一章 見世物小屋がやってきた


「駄目だよ、お嬢ちゃん。」


驚き、瞳を震わせ、振り向いた夏海は、そこに立つ、一人の男に、息を飲んだ。


白い着物の前がはだけ、腰までの銀色の髪をなびかせた男は、スラリと背が高く、透き通るような白い肌をしている。


そして、何よりも、その顔は、とても端正で、美し過ぎて、妖しかった。


「開演は、夜だよ。ショーを見たければ、また、夜においで。」


口調は、優しいがその顔は、笑っていなかった。


夏海は、慌てたように、男に言う。


「ご、ごめんなさい!あたし.........。」


泣きそうな顔で呟き、俯いた夏海をじっと見つめ、男は、口元に、フッと笑みを浮かべると、彼女の頭をポンと軽く叩いた。


「団長に見つかると厄介だから、もう、お帰り。」


夏海は、頭を深々と下げ、その場を掛けて行った。


男は、神社の階段を駆け下りる夏海の背を見送ると、小屋の中へ入って行った。


神社の階段を駆け下りた夏海は、息を切らせながら、階段を見上げた。


『 …なんて、美しい人なの。あんなに美しい人、初めて見たわ。』


大きく息をつき、落ち着いた夏海の頬は、うっすらと赤く染まっていた。

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