第一章 見世物小屋がやってきた


とある小さな町に、沢山の荷物をリヤカーに積んで、見世物小屋がやってきた。


見世物小屋は、町にある古びた神社の裏手に建てられた。木造の、どこか妖しげな小屋。


その小屋の近くで、オロオロした様子で、小屋を見ている一人の少女がいた。


少女の名前は、夏海。


夏海は、貧乏長屋に住んでいる。彼女の両親は、早くに亡くなり、長屋に住む叔父の所で、生活していた。


15歳になる夏海は、町にある薬屋で働いていたが安い給料の割には、朝から夕方まで、休むことなく働かされ、年頃になっても、お洒落も遊びも出来ず、そして、暮らしも楽にはならなかった。


今日もまた、薬屋で働き、疲れた身体で、家路に向かっていたが何故だか、この神社に足が向き、この小屋を見つけたのだ。


『 こんな所に、小屋が建ってたかしら?』


ここには、時々、参拝に訪れていたが、こんな小屋は、見たことがなかった。


しばらく、木陰に隠れて小屋を見ていた夏海だったが

一歩、また一歩と、静かに小屋の側に近付いて行った。


小屋の入口には、戸はなく、長い赤いのれんが垂れ下がっている。


その、のれんに手を掛け、中を覗こうとした夏海は、後ろから声を掛けられ、飛び上がるほど、身体をビクッと震わせた。

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