第10話 ボーナスタイム?


 *ステータス*


 名前:ライラ・エアルドレッド(ジーク)

 種族:エルフ(ナメクジ)

 性別:女性

 年齢:238歳


 Lv:25

 HP:27/27

 MP:221/221

 STR:52

 INT:187

 DEF:82

 MDF:92

 スキル:詠唱、高速詠唱、マナカット、ファイアボールLv5、サンダーボルトLv5、アイシクルランスLv5、ヒーリングLv1、トーチ

 耐性:塩特効



「やりましたわ」


 俺は自分のステータスを確認し、手足を動かしてほくそ笑む。


 HPだけ俺の方のが反映されているせいで悲惨なことになっているが、ナメクジだった頃と比べれば十分過ぎるほどに強くなっている。


「サンダーボルトォッ!」


 俺は杖を手に取り、足を塞いでいた岩を魔法で破壊する。


 あくまで身体に寄生しているだけの俺は、ライラが受けたダメージを痛みとして感じないので、問題なく立ち上がることができた。


 ……まあ一応、こいつが覚えてるヒーリングで手当てくらいはしといてやろう。


「ヒーリング」


 俺は、負傷している部位に回復魔法を使用する。地味だが、傷口がみるみるうちに塞がっていく様を見るのは少し楽しい。


「この体、しばらく借りるぞ。……気が向いたらどっかの町に帰してやるから安心しな」


 一通り寄生した身体の点検を終えた俺は、ライラの声でそんな独り言を呟く。


 さてと……これからどうするか。


 この身体で洞窟の出口を探して脱出するのが最善策か……?


 いや、その前に、魔物を狩りまくってナメクジの状態の俺を強化するべきだな。


 だって、俺が町に行ったところで塩をふりかけられるだけだし。


 それならいっそ、ツムリンの仇の仲間であるこいつを、レベリングの為に散々使い倒して、ボロ雑巾のように捨ててやる。


「フハハハハハッ!」


 俺は下衆な高笑いをした。


 *


「ファイアボールッ!」「アイシクルランス!」「サンダーボルト!」


 俺は、行く手を阻む魔物達を魔法で蹴散らしながら、洞窟内を探索する。


「アイシクルランス!」


 とはいえ、一度ライラでも勝てないであろう圧倒的な強さを持つ魔物達と遭遇しているので、攻撃を仕掛ける前にレベルの確認はしているが……。


「ファイアボールッ!」


 しかし不思議なことに、あれ以来この洞窟でレベル15以上の魔物は見かけていない。


「サンダーボルト!」


 ステータスだって基本的に二桁程度の奴らばかりだ。


「ファイアボールッ!」


 ……俺が最初に遭遇した化け物どもは、一体何だったのだろうか?


「アイシクルランス!」「サンダーボルト!」


 もしかしたら俺は、知らぬ間に弱いモンスターしかいない階層に逃げてきていたのかもしれないな。


「ファイアボールッ!」「アイシクルランス!」「サンダーボルト!」


 だとしたら、ラッキーだ。


「サンダーボルトッ!……チッ、ガス欠か」


 そうこうしている間に、MPも尽きてしまったようだ。


 だが、こんなに沢山魔物を倒したのに、レベルが一切上がっていない。


 もしかして、誰かに寄生している間はレベルアップしないようになってるのか……?


 だとすれば、俺の計画はまたもや失敗にしたことになる。


 やはり、世の中は上手くいかないものだ。


「……だが、落ち込んでる場合じゃないな」


 こうなったら、プランBに変更だ。


 この身体で強そうな魔物を倒し、一度ナメクジに戻ってそいつを吸収する。


 そしてこの身体に再び寄生して、更なる強者を求めて洞窟内を散策。


 ……我ながら完璧な計画だ。


 覚悟していろライラ。散々使い倒して、ボロ雑巾のように以下略。


 とりあえず、まずは今まで倒した魔物を吸収するか。


 俺はそう考え、一度ライラへの寄生をやめる。


(改めてこの体……クソ動きにくいな)


 ナメクジボディにそんな文句を言いつつ、魔法を食らって黒焦げになっていたり、氷漬けになっていたりしている魔物を順番に吸収していった。


 ――赤いスライム、青いスライム、蝙蝠、蜘蛛、浮遊してる目玉フローティングアイ、謎の触手。


 そんな感じの悍ましい魔物どもを吸収し尽くした現在の俺のステータスはこんな感じだ。



 *ステータス*


 名前:ジーク

 種族:ナメクジ

 性別:不明

 年齢:不明


 Lv:4

 HP:51/51

 MP:18/18

 STR:16

 INT:20

 DEF:25

 MDF:22

 スキル:鑑定、説得、吸収、防御、寄生、変容

 耐性:水耐性、氷耐性、炎耐性、塩特効



 ……見ての通り、耐性が増えたのと、『変容』とかいう謎スキルが追加されている。


 実際に『変容』を試してみると、俺は蝙蝠っぽい羽や、触手っぽい腕や、虫っぽい脚をいつでも好きなときに生やせるようになっていた。


 移動力は飛躍的に向上したが……これはもはやナメクジではなく、ただの化け物である。ただでさえ気色悪い見た目を、これ以上気色悪くするのはやめていただきたいものだ。


 さて、ライラの身体に戻ろうかな。


 そう思って振り返ったその時、俺は光に照らされ、あまりの眩しさに硬直した。


「……な、なにコイツ? 新種の魔物かしら……?」


 どうやら、ライラが既に目覚めていたらしい。


 ……あれ、まずくないか?

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