第29話 終戦

空に浮かぶ人物は言う、

「なあ、リーキャス。このまま潰したらどうなると思う?」


「きさま! またか!」


アキラは睨む。


「俺はお前が壊れる所がまた見たいんだよ。あんなに楽しかったのに一瞬で終わってしまった。今度はじっくり、その顔が苦痛に変わるのを拝もう。そして壊れたお前をまた殺してやるよ」


締め付けられているのが分かる。苦しい……私は顔を歪める。アキラの殺気は増していく。


「いいねえーその顔。だが、まだだ、簡単には殺さない。ゆっくりだ、ゆっくりいたぶってやろう」


その場に居たスターチルドレン達が包帯の男に攻撃をするが効かない。どうしよう……どんどん苦しさが増していく、息が……出来ない……嫌だ! アキラの辛そうな顔は見たくない! ……このまま、またアキラの弱点になんかなりたくない!



誰かが私に語りかける、私は身体を丸める。その時、ガラスが割れるような音が聞こえた。そして眩い光が私を包む。光は輝きを増して行く。


包帯の男が怯む、


「‥‥‥何だこれは」


大地からも光が溢れる。キラキラと小さな粒が沢山光って舞い上がって行く。私は包帯の男に向かって大きく両腕を広げて見つめる。もう苦しくはない穏やかな気持ちだった。今度は包帯の男が苦しみ出す。


「止めろ! 止めろ! 何だお前達は? 見るな! 見るなあー!」


 何かに怯えている。アキラは男を睨みつけて言う、


「きさまは誰を相手にしているのか分かっていないだろう? あゆみはこの地球の加護を持っている。きさまは、この地球を相手にしているんだ!」


「これで、本当に最後だ!」


アキラは男に手をかざす。男は炎に包まれその姿は無くなり灰になって散った。


私は開放された喜びとアキラに会えた事が嬉しくて。


私は、光を纏まとい。ゆっくりとアキラの元に降りて行く。ごめんね、辛そうな顔をさせてしまった。長い私の髪に光は集まり絡む、その光は天使の羽のように見えた。愛しいアキラの元に近づく、それはまるで天使が舞い降りて来るような光景だった。皆は感動しながらその様子を見ていた。私はアキラの首に抱き着き耳元で言う。


「私、アキラの弱点にはならなかったわ」


「ああ、そうだな。だから言っただろう? お前は俺より凄いんだ」


2人は抱きしめ合う。敵は撤退した沢山いた、宇宙船の姿は無くなり澄み切った青空が広がる。


※   ※   ※


それぞれが帰って行く。互いに抱き合い涙し、笑顔と共に。


闘いは終わった。こちちの被害は少ない、重症を負った者はいるが死者はいない。


敵は地球を諦めたようだ。アキラの存在が敵を圧倒したのだ。英雄伝説は、敵も知っている。その英雄が再び現れたのだ、敵にとってそれは恐怖でしかない。


キング、王と名乗った者も、それから何も言っては来なかった。衛星からの映像にも何も写っていない。人々は開放されいつもの日常へと戻って行く。


アキラはまた呼ばれて、飛んで行ったきり、なかなか帰って来なかった。どうしたんだろう? 私はソファーで横になりながら、アキラの帰りを待つ。眠くなりそのまま寝てしまった。目を開けると、アキラがじっと私を見つめていた。身体には毛布がかけられていた。


「アキラ。いつ帰ってきたの? ごめんなさい。私寝ちゃっていた」


「妊婦さんは眠くなるんだって、マスターの奥さんが言ってた。昼寝をさせてあげねって言われたよ」


 起き上がろうとすると、優しく抱きしめてくれた。


「皆に言われてきたよ。天使を奥さんに貰うなんて贅沢なやつだって。総理なんて凄いぜ、天女が羽衣を羽織って降りて来た! だぜ? 羨ましいだろうって言ってやったさ」

ニコっとあの顔をする、


「あのね、あの時、この子達も力を貸してくれたのよ」

 そっとお腹に手を当てる。


「そうか、ありがとうな。ママを助けてくれて」

 お腹に当てた手が重なる。


もうすぐクリスマス、智子達はクリスマスイブに結婚式を挙げた。智子のお父さんは号泣していた。だって、1人娘だものね。私の父と同じだわ。


少し出て来た私のお腹にアキラは良く耳を当てている。話し声が聞こえるのだとか、何を話しているのか分からないが楽しそうだと言う。


翌年の夏前に私達に新しい家族が増えた。男の子と女の子の双子だ。髪は黒いけど、瞳はアキラに似ている。


「おーい! おっぱい今度は誰が先だっけ? すげー泣いてるんだけど! オムツは2人とも変えたぞ」


 アキラは器用に2人を両腕に1人づつ抱っこしながら笑顔で言う。アキラは育メンパパになっていました。



‥‥‥続きあります。次回は子供達が主役です。

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