第25話 開戦
各国は対策を思案する。相手もアキラ達と同じ能力を持っている可能性が高い。スターチルドレン達は皆、前世で精神攻撃を受けたと言う。なので、軍隊の中に予知、テレパスの力が強い者、テレキネシスを使える者を一緒に同行させる事にした。加護持ちは対策本部の中で待機させる。その時は来た。
予知に特化した者が一斉に言う。
「来る!」
皆が空を見上げる。次第にその姿がはっきりと見えて来る。空には小型の宇宙船が無数に現れた。
世界各国の戦闘機が出撃する。同時に攻撃が始まる。それぞれの国のスターチルドレン達も参加する。アキラも地上戦に加わる。
少しでも地上戦を押さえないと、こちらが不利になる。敵は地球人は能力は使えないと思っているのだろう。やはり、精神攻撃を仕掛けてきた。こちらは対策済だ。テレパスが守る、錯乱する者には麻酔で眠らせる。
落とされた宇宙船からそれらが出てくる。どうやら、奴等はこの地球の環境が合わないと見える防護服を着ていた。それを狙う。地球人の抵抗に、相手は戸惑う。能力者の存在は予想外だったらしい。
地球に降りたそれらは、一旦撤退し母船へと帰っていった。今度は対策を再び変えて来るだろう。今、叩いておかなければ! それをさせてはいけない。
世界中が勝利を確信した。あのダミーも消えた。
ポールとアキラの前には確保した小型宇宙船が目の前にある。それに乗って母船に乗り込むとアキラは言う。
「誰が操縦するんだ? こんな風雑な乗り物は初めて見た」
ポールも唸る。
「ああ、面倒くさい! もうテレキネシスで動かせかせばいいじゃないか」
と吐き捨てるように言う。
「じゃあ。ポールに任せた。後は宜しくな」
ニカっとアキラは笑う。
「今回は俺とポールで敵船に乗り込む。テレキネシスが使える仲間集めは頼んだよ」
翌日に出発が決まる。
その夜、いつもより優しく私に触れるアキラ。ゆっくりと落とされるキスに不安が募る。
「そんなに不安か? おまえの心が丸わかりだぞ。そんなに可愛いと襲ちゃうぞ!」
ガオっと私の顔の前でおどけてアキラは顔を近づける。
「もう、襲われた後なんですが?」
少しムスッと言ってみる。アキラは私の肩を触りながら、
「おまえの肌は気持ちいいんだ。ずっと触れていたい」
アキラのおでこに指を弾いてデコピンをする。アキラはデコピンされた額を撫でながら、
「大丈夫だよ。俺は必ず帰ってくる。ジジ、ババになっても一緒だと約束したじゃないか」
アキラの頬を包みさっき指で弾いた額に、自分の額を合わせ見つめ合う。
「うん、そうだね。待っているから」
※ ※ ※
出発当日。ポールは集めた数人の仲間とあの小型船の前に居た。アキラを待つ。時間になった。アキラはアメリカに飛んだ。そこで、ポールの姿を見て笑う。
「何だよ。ポールその恰好! 何処かで見た映画の登場人物みたいだな」
「宇宙に行くんだ。この位の装備はいるだろう」
と、銀色の宇宙服を身にまとっていた。アキラは普段と同じ服装だ。
「アキラこそ、そんな簡単な格好でいいのかよ」
「そんな動きにくそうな恰好はしたくないよ、これで充分だ」
ポールとアキラは見つめ合う。ポールがアキラに言う。
「成層圏を出たら後はそんなに力は要らないからな。行こうアキラ! 前世の分まで借りを返しに行くぞ!」
私はここで家のリビングで待っているから、無事に帰って来て。今の私には、祈る事しか出来ないけれど‥‥‥。
船は出る皆と力を合わせれて。船は二人を乗せて母船に向かう。
「行こうぜ! 親友! 最強コンビの復活だ!」
ポールが言う。
小型の宇宙船が出てこちらに近づく信号を送ってきた。何処の所属かを聞いているのだろうがそこは無視。アキラ達は母船にテレポートで乗り込むと船内を破壊して回った。自分達が乗って来た宇宙船は残して、それ以外は全て破壊した。
母船の中はパニックになっていた。まさかここまで来るとは思っていなかったようだ。アキラ達と同じ能力を持つ者もいたが二人には敵わない。こんな奴らに前世の俺は負けたのかやるせない気持ちになるアキラ。奇襲って、凄い作戦なんだと改めて思う。
母船は残骸となった。
二人は残した小型船の中に戻った。仰向けに転がり息使いは荒い。
「ポール大丈夫か? だいぶ力を使っていただろう? 見ろよ! あんなに大きな母船が粉々だぞ。おまえ、容赦ないな」
「はっ! 宇宙エネルギー貰っているやつに言われたくないな。アキラ、体力は戻っているのだろう」
「ああ、まあな。早く帰ろうぜ。大気圏を抜ければ地球だ!」
「……流石、英雄だ……」
ポールはそう言うと意識を手放した。アキラは成層圏に入った赤く燃える宇宙船を調整して、海に落とした。
しばらく海で漂う。重力を感じるな身体が重い。アキラ達は海軍に救助された。ポールはまだぐったりしていたが、アキラは直ぐに元気になり艦内を楽しそうに見て回っていた。そこで海軍の艦長と握手をする。
「ありがとう。君達のおかげだ」
「違いますよ。皆で守ったんだ。これからも頼みますよ。閣下!」
そう言って爽やかに笑顔で言う。
「ポールは置いて行きますよ。俺は早く帰らないといけないんで! うちの嫁さんが待っているんですよ。帰りが遅いと泣くんで。それじゃあ!」
アキラは帰って行った。
艦内はアキラの話で盛り上がっていた。当然ポールは質問攻めにあっていた。
自分の家に帰って来たアキラ。私は、現れたアキラにしがみ付いて嬉しくて泣いた。
「ただいま。ほら帰って来ただろう? 泣くなよ。相変わらず泣き虫なんだから、そんなお前も可愛いんだがな」
地球は救われた。その嬉しさでしばらくお祭り騒ぎのようになっていた。ニュースでも幾度となく軍の関係者にインタビューがされた。だが、その口からはスターチルドレンも名もアキラの名も出る事はなかった。
だが、まだ終わってはいなかったのだ。これから本当の恐怖が訪れる事に、あのマスターでもこの時はまだ分かっていなかった。
ここは砂浜、その砂浜の砂の中から人が這い出てくる。あちこち皮膚は無くなり骨が見えている。その骨も一部が溶けているのがわかる。
「よくも俺を……母船ひとつ破壊したからといっていい気になるなよ。俺を灰にしなかった事を後から後悔するがいい」
その姿は何処かに消えた。
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