第20話 コンサートと神の祝福 

 ヒーラー達が待つ場所に戻ると先ほどの話しをする。


「そっかー当日楽しみね。私達の所にもモニターを置いてくれるそうだからステージは観れるわよ」

知子が太陽から聞いただろう情報を教えてくれた。智子が、


「長い時間力を使う事になるから、交代でやりましょう! ここでは9人でやるわよ。後は、ホテルや空港、護衛に就いている人の所などに分かれて行くわ。そちらの守りも必要だから」


「3時間だから、3人で1時間交代にしましょう」


 私と智子は最後にアメリカから来たヒーラーと3人でやる事になった。


「私はアンジェリカ、アンジーでいいわ」


 その人からとても良い香りがする。バラ?


「アンジーとても良い香りがするわ。これは香水のたぐいではないわね。貴方の自信の香りだわ」


「そうなの。でも子供の頃は分かってもらえなくて、子供のくせにコロンなんか付けてってよく虐められたわ」


 彼女の周りには沢山の花が見えている。


「あゆみ、貴方には敵わないわよ。だって、貴方の周りにはこの地球の全てが見えているのだもの」


「アンジーも色々見えるのね」


「そう見えるわ。あゆみ貴方の前世の姿も、あの天使は貴方だったのね。私はこの地球でずっと生きてきたから貴方達の言う物語は他の人から聞いたの。悲恋で終わった悲しい話しだけど今は幸せそうで良かった」


そう言ってくれる笑顔はとても優しい。


コンサートが始まる前からも忙しい、前入りしているゲストは沢山いるからだ。前日の夜も、アキラからの愛をうけ幸せに包まれていた。アキラと見つめ合う予定より早く準備が出来た。4月の終わりにコンサートが開かれる。テレビ、ネット、どこからでも見る事が出来る。




「良かったわね。こんなに早く出来るなんて思わなかった」


「ゲストのミュージシャン達がこぞって手を挙げてくたそうだ。皆、ボランティアだと言ってくれたそうだ。有難いよな。あゆみ、地球の自然に、地球上すべての生き物達に癒しを与えてくれ。お前の笑顔で返してやってくれ、俺はお前の傍に居る。安心しろ」


そう言われ抱きしめられ優しくキスをされた。身体が軽くなる。


「本当はお前をもっと感じていたいが明日の事があるからな。しっかり寝ろよ」


「うん。アキラの腕の中は安心するから大丈夫だよ。良く眠れるの」




コンサートの当時は早目に会場に行く。そこではもう色々準備がされていた。すごーい! 舞台裏ってこんな風になっているのね。私達は会場の裏に作られた。別の建物に入った。


「久しぶり! あゆみ」


そう声をかけてくれたのは、アメリカから来たヒーラーのアンジーだった。肩にはアメリカの国旗が貼られていた。


「久しぶりアンジー! 今日は皆さん宜しくお願いします」


「あのー私、メイメイと言います」


 そう言う彼女の後ろには龍が見える。この子ね龍の加護持ちは、


「ティアーヌ様お会いしたかったです。私はお城に仕えるメイドの1人でした。姫さまはどなたにも優しくて美しくて、お亡くなりになってしまわれた時どんなに悲しかったか……リーさまもあんなになってしまわれて……でも今はとても幸せそうで嬉しくて……」


と言って涙ぐむ。そこを割って入って来たのは、


「私はカノン。あの時近衛兵としてサーシャさまのお側に居ました!」


と智子に握手をする。そう言えば女性の兵士って珍しいからサーシャと仲が良かったわね。


「チャーチル?」


「はい」


そう言って抱き合う。ここにいる彼女達は私と同じで色々見えるみたい。他の4人は、


「私達は違う星なので、話題は無いです」


とうつむく。私は皆に、


「そんなの過去の話しよ。これからも今までと同じように皆でこの地球を守りましょう! 今を大切に生きて行けばいいの」


「大丈夫。この作戦はきっと成功する。こんなギスギスした空気は絶対変えなくてはいけないもの」


皆が頷く。


コンサートが始まる。オーケストラの演奏からだ。沢山の楽器から紡ぎ出される音楽、それに合わせてヒーラーが呼びかける。音楽だけの心地よさとは違う。凄い3人だとこんなに心地良いのね。次から次へと色々な国からのミュージシャンが、演奏をして歌声を聴かせてくれる。あんなにギスギスした空気が徐々に変わっていく、他のヒーラー達も祈る。


最後に私達がヒーラーとして出る。私は祈る。この自然の美しさを知って欲しい。そして、それを守って欲しい。愛を、この地球上に生きるすべての者達に祝福を……最後は、あの少年合唱団が美しい声で歌ってくれた。その時、世界中から争いの音は聞こえなくなっていた。代わりに皆が幸せに包まれていた。


 ……コンサートは終わった。

 世界中が歓声でいっぱいになる。アキラが建物の中に入って来て私を抱きしめる。


「力を使い過ぎだ! 立てないだろう? 無理に笑おうとするな、顔が引きつっているぞ。もう終わったんだ。心配する事はない」


私は力を使い過ぎた笑顔さえ作れない。そんな姿の私に、いつもの様に優しいキスで力を分けてくれる。身体が軽くなる。


そこからあの時と同じ様に世界中で花が咲き乱れる。蝶が舞い、鳥が歌う、世界は再び奇跡を目撃する。


知子達には見えていた。そこには、ティアーヌとリーキャスが抱き合う姿を。



感動の余韻を残して終了する。沢山のミュージシャン達も国へと帰る。すべてが終わった。


世界中でまた騒ぎが起こる。それは嬉しい騒ぎだ。ニュースもあんなに散々争い事のネタで持ち切りだったのに、今度はあの自然現象についての話題で一杯になる。


誰もが言ったこれは我々に『神が祝福を与えたのだ』とそして勿論今回も多くの者がティアの姿を見る事となった。それは天使からの贈り物、神の祝福と共に言われるようになった。


世の中ではこの事がきっかけとなって争い事は神々の意向に反するものであると唱える者が多く現れる様になり世界平和を唱える者も徐々に増えていった。


それからは、不思議と争いはなくなり暴動は治まっていった。

その後、天使を崇める者も多くティアーヌのファンクラブの会員数は一層増加した、その事は当の本人は知らない。

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