第16話 人類消滅計画
あれからどの位経ったか、私の側に狐が寄ってきた。その姿は子狐だった。私の膝にすり寄っている。その姿の狐をそっと抱き寄せる私の涙は止まっていた。狐が頬ずりしているのが分かる。
「わかった。もう泣かないから」
隣にいるアキラが息を乱して汗をかいている。その汗が床に滴る。こんなアキラを見るのは初めて、私はアキラの手を取るアキラも深呼吸を繰り返していた。
狐が消えた、麒麟も消えた。そこには、知子と太陽の姿だけが残った。アキラはまだ手をかざしている。すると、知子が咳をする、太陽は小さな唸り声を上げ。、私は智子達の所に駆け寄った。知子がゆっくり目開けた。
「太陽は?」
と私に聞。、隣で微かに唸っている太陽が見えたようで、安心した様だった。アキラはまだ太陽に手をかざし続けていた。太陽の唸り声が無くなるとアキラはガクッと両手を着いて肩で大きく息をしていた。
「いてぇ…」
と太陽の小さな声が聞こえた。太陽は、
「智子」
と呼び手を伸ばす、2人は手を取り笑顔になる。太陽が、
「……アキラ……お前が……俺達を……ここに……連れて……来て……くれた……のか」
と切れ切れに話す、
「まだ、喋るなもう少し寝ていろ。起きたらあゆみにも礼を言えよ」
アキラは太陽に向かって言う。2人は静かに眠った。
「俺は汗を流してくる」
とアキラが立ち上がる、少しふらついて見えるけれど、大丈夫みたい。私は汚れた智子と太陽の顔を拭いて、出ている手足も拭いた。あんなに血だらけだったのに綺麗になっていた。
そんな姿を見て、今度は嬉しくて泣いた。
アキラが戻って来た。2人を見て安心したようだ。アキラは、
「しばらく寝かせて置いてくれ、そのうちに起きる。ここは床暖で空調もしっかり効いている」
私は座ったままでいた。アキラは私の側に来て自分の片腕に抱き寄せる。まだ心配で2人を見ていた。と、智子が起きた。私と目が合う、知子にしがみ付いた良かった。
「あゆみ、太陽は大丈夫?」
隣にいる太陽を見て心配しているアキラが、
「もう、大丈夫だ。すぐ、起きる」
太陽が目が覚めた、知子が太陽にしがみ付く
「いてぇー!!」
と叫ぶ、
「叫ぶ元気があるなら、もう大丈夫だな」
アキラが笑う、
「あゆみちゃんありがとう、俺にも見えたよ。狐と馬? が居た。花が沢山咲いていたから死んだと思ったよ」
太陽が私に言う。
「馬じゃないわ、麒麟よ。今は智子の側にいるわ」
アキラは太陽に、
「お前は心臓が止まっていたよ。時間は掛かったが何とかなった。知子は心臓は動いていたが、呼吸が止まっていた」
ビックリする事を言う、
「あゆみの力がなかったらお前達はここには居なかっただろうな、お前達は地下鉄に居たのか?」
「そうだ」
「今度も人混みを狙ったな」
マスターから連絡がきた。
「皆大丈夫?」
「はい!」
その声にマスターも安心したようだった。
「俺がそっちに行こう。話しはそっちでした方が早そうだ」
マスターが来た。2人の事をまず話した。マスターは再び絶句する。
「止まった心臓を動かした! アキラ簡単に言っているが、お前自身もヤバイだろう? 大丈夫か?」
「ああヤバかったよ。でも大丈夫だよ」
「あのリーでも出来なかったんだぞ。それで、ティア姫は死んだんだ」
「そうだな、もう俺は何も失いたくない! どんな事だってやってみせるさ」
その言葉を確認するように、マスターは、
「分かった。それでは、ここまでに集まった情報を話そう。今回は公共の乗り物が狙われた。地下鉄、バス、列車だ、犠牲者は多い。この時間でも外はへりが飛んで取材中だ。明日の報道は規制出来ない。それぞれの国がどうするか、今、会議中だ。多分、犯罪集団によるテロと言う事になるだろう、犯行声明は出ているが公には出来ない。敵の存在自体、我々だってこの目で確認はしていないのだ、アキラ以外は」
「おかしいわ、何故? 船や飛行機は狙わないの?」
知子が言う、それを聞いたアキラは、
「奴等は地球の自然は壊したくない、理由は分からないが、環境破壊は望んではいないのかもしれない、チマチマ小細工を仕掛けてくる辺り、そう考えていいだろう。そうじゃなければ、核ミサイル打ち合えば終わりだろう? その方が簡単だ」
「そうね、じゃあこれからどうする?」
「敵の動きを見よう、今回の成功で、きっと今頃大喜びだ」
※ ※ ※
そう、その1人は高らかに笑う。
「やったぞ! まだだ! 今度は猿もどきより小さいからな、分かるまい。この地球の資源を我が王に捧げて、俺はこの地球の王となる。これまでリーキャス、奴の星を何度も狙ったが、奴のせいで邪魔されたからな今回は今までとは違うぞ」
事故は無くならない、毎日何処かで起きている、何重にもチェックをしているにも関わらず、事故は起こる。公共交通機関を利用する人は減っていった。車での事故も多く、ニュースで毎日流れている。リモート化は一層加速した。その中ネットでは、怪しい噂が広がるようになる。 『人類消滅計画』 と。
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