第15話 新年の日に悪魔は笑う
クリスマスも終わり大晦日も2人で過ごした。この1年色々あったけれど、忘れられない1年になった。
お正月。私の実家に来た。アキラと一緒に両親に新年の挨拶をする。
「明けましておめでとうございます」
2人で挨拶をする。
「おめでとう、久しぶりだね」
と父は嬉しそうに私の顔を見る。
「やだ、パパったら。結婚式から1か月も経っていないわよ」
すると父とアキラが見つめ合う‥‥‥そして、父が目を逸らす。アキラはドヤ顔をする。何これ? 父はふんっと横を向き、
「嫁にはやったが、私の娘には変わりはないからな! いつでも帰って来ていいのだぞ! あゆみ」
そんな父達を見ていた母は、
「もうあなたは、アキラくんも私達の家族でしょう? 息子よ」
拗ねる父に対して、
「お父さんの事は気にしなくていいのよ。こんな事言っているけれど、アキラくんの事は気にいっているのだから。褒めていたわ」
気まずいのか、父は1つ咳をした後、
「ああ~なんだ。その、お婆さまは元気かな」
アキラは、ドヤ顔から笑顔になる。
「はい! 元気ですよ。今、ハワイに居るそうです。冬の間はいつもハワイにいるんです。寒いのは好かん! って」
そう言ってスマホを見せてくれた。写真には綺麗な海と一緒に、お友達と楽しそうな笑顔を見せているおばあ様がいた。
「人生を楽しんでいますよ。世界中あちこちに行って飛び回っています。だから、知らない間に友達が沢山出来ていて、こっちがビックリです。語学は堪能な人なので苦労はしていません。ちょっと聞いただけて覚えてしまうのですよ。これはもう特技ですね」
「ほう、それは凄いなあ」
「時々、通訳も勝手出るようです。ハワイは沢山の国から観光客が来ますからね。暇だから話相手をしているんだと、本人は言ってますが。結構お礼を言われるのでこっちが恐縮してしまいますよ」
凄いは、おばあ様! そういえばメイド長だった時も色々な言葉を知っていたわ。テレパシー使えばいいのにって言ったら、お郷の言葉を話すと通じるものが違うのです! と言っていたかしら。
その日は夜遅くまで実家に居た。始めは居心地悪そうにしていたアキラも、今は楽しく父と話しているまた、今度また、父がイタリアに行くらしい。なので、簡単な単語や日常会話を聞いていた。初めて聞いたわ。アキラがイタリア語を話しているのを、不思議と違和感がない。まあ、ハーフみたいな顔立だから余計かしらね。
父が困った顔をしている。発音難しそうね。私には無理だわ。母と後片付けを終わると、アキラに帰ろうと声をかける。父は名残惜しそうに眉を八の字にする。そんな父に、アキラが、
「困ったら英語でしっかり伝わるので大丈夫ですよ。悪戯好きな人が多いですが、多目に見てあげて下さい」
そう言って家を出た。歩いて帰る、私はアキラと腕を組む。
「アキラの悪戯好きは血かしら?」
と聞くと、アキラは空を見上げて。
「かもな、小学生まで爺さんと一緒に居たし可愛がってもらった。爺さんは悪戯好きで、俺から見てもお茶目で可愛い人だったよ」
空を見上げて言うアキラが寂しそうに見えた。
「初めてね、アキラが家族の話をするの。やっぱり寂しいわよね」
「いいんだ。これからは少しづづあゆみにも俺の家族の話しをするよ。俺に新しい両親をくれたんだ。あゆみとも思い出を共有したい。飛んで帰るか? 寒いだろ?」
雪がちらついてきた。
「そうね、でもまだこのままこうして歩いていたい」
「そうか」
しばらく歩いていたら、あの狐が目の前に居た。
ここから先には行くなと言っているように、九尾の姿で立ちはだかる。
「危険を知らせてくれているのね」
もうすぐ地下鉄の駅だわ、嫌な予感がする。
すると地鳴りのような轟音が聞こえた。それが次には悲鳴に変わる。
「飛ぶぞ! あゆみ帰るぞ! 気にはなるが、お前を危険な目には遭わせたくはない」
私は何も言えなかった。
部屋に帰って来た。スマホを取り出す。連絡は来ない。智子と太陽が気になる。嫌な予感がして気持ちが落ち着かない。そうだ、マスターに連絡をしてみよう。そう思っていたら智子からテレパシーで何か言われたが、聞きとれない! アキラの顔が強張る……。
「今度はそう来るか」
「智子と太陽をここに呼ぶぞ。あゆみ。気をしっかり持って俺を信じろ!」
すると、智子と太陽が部屋に現れた。
2人共酷い怪我をしている。私は血の気が引くのがわかった。アキラは言っていた。自分を信じろと、アキラは2人に向かって手をかざしている。私はその場に座り込んだ。
長い時間が過ぎた。アキラはまだ2人に向かって手をかざしているスマホが鳴った。マスターからだ。私はスマホに出る。
「俺達は大丈夫だ。そっちはどうだ、智子達と連絡が取れないんだ」
マスターに言う、
「今、2人はここに居ます」
「良かった。無事なのだね」
「……2人共酷い怪我をしています。今、アキラが治癒をかけていますが……」
「何?」
マスターも絶句する。
「分かった。情報が集まったらまた連絡する」
2人の前世の記憶が私に伝わえる。そこには倒れているサーシャとその横にはセナがいる。近衛隊員だったセナはサーシャを庇うようにその身を寄せていた。私は辛くて悲しくて絞り出す様な声で、
「……もう止めて、……私の大切な人達を傷つけないで」
涙が流れる。と、チリンと鈴の音が聞こえた。すると、部屋中に花が咲く、そして、九尾の狐が現れる。次に、美しい立髪を持った麒麟が現れた。智子達を囲むように2体は寄り添い優しい光が2人に注がれる、アキラも手をかざし続けている。私は祈った。小さくウッと唸りアキラが両膝をついた。が、手はそのまま2人をかざす。
どれ位経ったのはかわらない。私は祈り続けていた。
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