第13話 お仕事は?

今日は全員でマスターのお見舞いにやって来た。顔色も良い、いつものマスターね、安心した。


「マスターありがとうございました」


「あゆみちゃんには、心配をかけてしまった。申し訳ない」


「そんな事ありません。私の為に、こんな事になってしまって」


「気にする事はない。その為にアキラには話してあったのだから、今回の予知では、相手もどうすればいいのか迷っていたようだ。これからもきっと狙われるのは免れないだろう。あゆみちゃんは俺達の希望なんだ。前世のようなあんな思いをしたくないと思っているのは、アキラだけではないのだよ。それに明日には退院だ。医者達も驚いていたよ。回復が早いってこれはあゆみちゃんのおかげだよね」


「マスターはどんな病名だったのですか?」


「良く分からないらしい。農薬中毒の症状に似ていたから、その対応をしてもらったみたいだ。医者には除草剤を使ったからと言ったが、不思議な顔をされたよ。それにあの時不思議な夢を見た。俺は大草原の中で大きな犬と寝ていた。とても気持ちが良かった」


アキラはその話しに、対して

「ああ、俺も見たよ。あゆみを追いかけて来たらマスターが九尾の狐と寝ていたんだ。びっくりしたよ」


「何とまあ神秘的な」


智子も驚く、アキラは続ける。

「ここ最近ずっとその狐、あゆみに付いているんだ。こいつも何かを感じているのかも知れない」


ため息の後、太陽が、

「そうなんだ。でも、まあね。あの後あゆみちゃん叫んでただろう? だから、アキラに対して苦情やら嫉妬が凄くてね。多くは嫉妬なんだが、うちのサーバーがパンクしたよ。智子が熱を出した!あの日あゆみちゃんの感情が少し漏れてて、テレパスの能力が高い人には刺激的だったようだよ。アキラの名前を連呼してて可愛いってさ」


アキラとのアレが中継されてたの? もう! 顔から火が出そう、恥ずかしいー!

「大丈夫だよ。俺がすぐ遮断したから」


 太陽はテレパスで、アキラに言う。


“お前の体力どうなってんだ! ずっとだったよな、あゆみちゃんの感情が少し漏れていて時々伝わって来てたから……全く、聞こえていたけど、恥ずかしいより呆れたよ。他の人には聞こえないように遮断したがな!”

“あんまりあゆみが可愛いからついな”

“お前はいいかも知れないが、あゆみちゃんの身体を心配してやれよ”

“確かにあれからぐったりで夜は爆睡してたわ”

“全く、おまえは女をよく知っていると思っていたが、良く分からないよ”

“あゆみは責任を感じて心を潰されていた。ずっと自分を責めていたよ。いいんだ、朝にはいつものあゆみに戻っていたしな”


智子は少し拗ねたように、はあっと息を吐く、


「アキラがリーキャスって事はもう皆知っているから、これ位で済んでいるけど、痴話喧嘩も程々にしてよ。私の身体は一つなのだから」


「ごめんなさい」


 私がしゅんと肩を落とすと智子が、


「アキラが悪いのだから! あゆみがそんなにしょげる事はないのよ」

とアキラを睨む。アキラは頭を搔きながら、


「俺もテレパスで直接文句を言われたよ。そりゃあー凄い数だったよ~ティアファン恐るべしって感じだ」


「そう言えばティアファン、今凄い事になっているらしいじゃないか。うちのワイフが言っていたよ」


「あの爆弾騒ぎの後から、一気に増えたらしいじゃないか」

太陽も気まずそうに言う。そして智子は優しく、


「そうね。あの頃を知っている人にとって、特に女子の中では、おとぎ話みたいで素敵って言われているのよ。リーの最後を知っている人は多いから、壊れた英雄、彷徨う生きた亡霊なんて言われていたもの。だから、あなた達の事を祝福してくれる人も多いのよ」


「勿論、私達もよ。だからいいの! アキラはあゆみは俺の者だって胸を張りなさい! ティアはティア! 過去の人よ。リーもね」


 と、アキラをパシッと叩く。私達二人を見て、


「で? 結婚式はいつ頃の予定?」


「それが‥‥‥父や母なんか張り切ってて、こちらが困ってしまう」


マスターが、

「俺達が世話になった神父さんがいるのだが、相談してみては? 教会の隣にホテルがある。披露宴はそこでやるっていうのはどうだ?」


「いいんですか? 俺達、良く分からないから助かります」


「そうと決まれば明日、俺達と神父さんの所に行かないか? 久しぶりに挨拶に行こうと話しをしていたからね」


アキラは少し考えて、


「そうだな。俺は明日仕事だが、丁度明日で大きな仕事が終わる」


そこで、智子が首を傾げて、

「そういえばアキラって何の仕事をしているのだっけ?」


「建築士だよ。一級を持っている、クライアントの家が完成したから明日引き渡す、それで終わりだ。雑務はいくらでも何とかなるその後、直ぐにカフェへ行くよ」


私も首を傾げる?

「家の中にそんなお仕事道具みたいな物は無いわよ?」


「オンオフしっかりしたいから家には持ち込まない。だから、残業は凄いよ。泊まったりなんかよくあった」


「だから、あんなに遅い時間に帰って来るのね」


「悪いないつも、社畜と呼んでくれ」


「まあ、あゆみったら聞いてなかったの?」

と智子が驚く、


「だって会社行ってくるしか言わないし、建築のお仕事をしてる位しか聞いてなかったから‥‥‥」


「はあーもう! あゆみったら、アキラもアキラよ! ちゃんと収入に関しては話さないと!」


「俺のマンションは俺がオーナーだから、生活には困らない。両親が残してくれた物だ。だから、ローンは無いよ。建築の仕事は俺が好きでやっている。あゆみには苦労はかけないさ。あゆみの親父さんにも会って話してある」


「アキラのマンションってメゾネットタイプで部屋も多いわよね。駅近いし家賃高そう」


「そこそこはな、俺達は下の部屋しか使ってないがな」


 そんな話しを聞いていた太陽は、

「そんな事を言ったら、この中で年収が一番なのはマスターだよ。他にも店を何件も持っていて、それも星付きだぜ! 知った時はビビったよ。その若さでやり手だよなあ」


マスターはメガネを直しながら、

「有難い力を授かったからね。カフェはワイフの趣味だよ。お菓子作りが好きだからね」


一番大きなため息えを付いたのは太陽だった。


「俺だって、弁護士やってるよ。事務所も持ってる。なのに何だろうこの敗北感……」


ドンマイ! と智子から、背中を叩かれた。


 マスターは微笑む

「あゆみちゃん、明日はカフェは休業日だが、仕込みとかある。手伝ってくれるかい? 明日は何も起こらないよ。奴等も困惑している。今回の事も考えずにとっさにあんな形で行動したのだろう」


 アキラはニヤッと笑い。


「あゆみのガードは硬い。しっかりしているって分かっただろう。奴等もこれで簡単には手を出せまい」


私はマスターにお辞儀をした

「それでは、明日お願いします」

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