第6話 神隠し

いつもの集まりで、マスターからある写真の映像を見せられた。どうやら奥様が発見したようだ。そこには、美しすぎる『心霊写真』とタイトルが付けられネットではちょっとした騒ぎになっているらしい。それはあのポールと一緒に撮った写真だった。

当然ポールや私の顔はモザイク、後ろに写っているのは、ティアーヌ! 前世の私がいる! 頭から胸の所まではっきりと写り込んでいる。顔まで良く見えている。それを心霊か天使かで荒れているみたい。何故天使って言われるのか分からないけど、ティアーヌだと分かる人には分かるので、当時を知っている人にもまた別な意味で高評価となっている。


あらあー、アキラの顔がドンドン怖くなる、


「あいつー!」


テレパシーで怒鳴っているのが分かる。頭がキンキンする。ネットで拡散したらもう収まるまで待つしかないわね。でも、ほんとに良く撮れてるわ。えっ? 何してるの? 智子と太陽がネット検索している。


「貴方達何やっているの?」

智子と太陽に言う。智子が大きな声でいう。


「だって! 凄ーく貴重よ! 私の待ち受けにしよう!」


これは……後から色々盛られるやつよね。案の定、待ち受けにすると幸運が訪れると。またネットで騒がれる事になった。


でも今では、ティアーヌではなく、あゆみとしての私をアキラは愛していると言ってくれる。


私もリーキャスを愛していたけれど、今のアキラを愛している。


でも、私は知っているの。アキラがあの写真をポールからもらっていたのを、モザイクなしの写真を、それを懐かしそうに見ている事も。


過去は変えられない。だから、今を大切にしようとアキラと話した。この地球を守る。それは変わらない。だからマスターが敵について話し始めると一気に緊張感が走る。


「今度は神隠しの話しだ。ここ最近都会の真ん中で人が居なくなる事件が多発している。国の首都とされる所がわざと狙われている。人が大勢集まる場所は沢山ある、おのずとその危険性は高まる。これでは防ぎ様がない。そこで、俺は考えた。どこで起こるのか予知はできる。が突然消えるとなれば、誰が消えるか何てそこまでは無理だ。だから、後は山感だ! 予知とは違うが、何とな~くってやつだよ。これもある意味予知に近い」


とキッパリいうので地図を眺めているマスターの姿をしばらく待つ……


「場所はここだ!」


皆で見る。渋谷って所を、指で指している。確かに人は多いけど特定の人を見つけるなんて……


「今回の事件は毎日起こっている。捜索願いの届けが多すぎて警察もお手上げ状態だ。が、今日も事件は起こる。誰が消えるかまでは分からないが時間は分かる。午後6時だ」


「これは単なるテレポートで連れ去っているだけだ。俺達は空間をこうやって繋げて身体全体で移動する、これを腕だけでやって引っ張るとどうなる? この防犯カメラに写っている1枚をよく見てくれ」


「腕を掴まれてる! やだ、腕だけ写ってるわよ」

と智子が叫ぶ。


「これを見つけるのには随分と時間がかかったが、これで人が居なくなる原因がわかった。そこで、これからはあゆみちゃんの出番だよ。多分移動する前に空間が揺らぐ、なんせ腕だけだからね。そこを自然の力を借りて、探ってほしいんだ。これは他の国にも伝えてあるから、今日から仲間が動く。他の国にも千里眼の様な良く見える目を持つ者も多いからね」


「わかった」


「これは一斉にやった方が効果が出る。まだ相手も油断しているから今から頼むよ」


それから皆で渋谷の駅前に来た。やっぱり人は多いわあ。


それから、それぞれ違う場所で待機をする。私はずっと自然の力を借りて耳を澄ませる。智子も目を凝らす彼女は透視が出来る。太陽はテレキネシス、物を捕らえる事が出来る。今回はマスターも来ている。何せテレポートが出来るのですぐ後を追ってもらえる。意外とそれは早かった。


「そこ!」


と私と智子が同時に言う。皆に伝える。アキラが早かった。腕を捕まえたと思ったら居なくなった。‥‥‥しばらくしてアキラが現れる。あのアキラが息を切らして苦しそうだ。


「…‥‥まずいぞ。これは、居なくなった人達は地球上に居ない。俺は一瞬、宇宙空間に出た」


そんな‥‥‥普通の人間が耐えられる訳ない。それじゃあ居なく人達は……


「間違いない完全に人類を消しにかかって来てやがる。マスター仲間に伝えてくれ。これはテレポーターしかやってはダメだ。自分が引きずられたらすぐ戻れ! 追うな! とそう言ってくれ」


「わかったわ」

と智子も仲間に伝える。


「前回は事故。今回は神隠しか。手の込んだ事をする様になったじゃないか。そんなに俺達が怖いかよ。真っ向勝負して来いよ!」


アキラそんなに殺気出したら敵が逃げちゃうよ。そっとアキラと腕を組む。全身の毛が逆立つ様な殺気が静まっていく乱れた息も落ち着いた。


「悪い、つい感情的になった」


「分かるよ。居なくなった人の事を考えると辛いわよね。でも、やっぱり凄いわ! アキラ、宇宙空間も耐える事が出来きるのね!」


「凄くないよ、自分が持って来た空気を自分にまとわせただけだ。そんなの一回呼吸したら終わりだ。まとわせる事ができなきゃそれまでだ」


※  ※



場面は変わり、そこは砂漠の中。テントで1一人息を切らしている人物がいた。


「転生後は、アキラとか言ってたな。リーキャス、やっぱりお前は化け物だ。宇宙空間で無事な奴はお前が初めてだよ。また壊れたお前を見たくなった。楽しみだ。また、君の大切な者を奪ってあげよう。今度はじっくりとね」



その僅かな狂気の気配を私は感じた。不安になり掴んだアキラの腕に力が入る。


「? あゆみ、どうした。何故怯えている?」


 マスターも、

「もう今日は帰ろう、あゆみちゃんお疲れ様」


そこで解散した。帰りもずっと腕を組んだまま家に帰る。

「うん? 何だ、このまま一緒に風呂にでも入るか? 俺は嬉しいが」

「ああ! それはダメ、あんな明るい所で見られたくないわ。恥ずかしいもの」


「それじゃあ、背中流して貰おうかな」

と、突然服を脱ぎ始める。そのまま浴室に入るアキラを見ていた。名前を呼ばれたので浴室に入る。そしてアキラの背中を流す。アキラの背中って広い、それにキレイな体型しているのよねと、考え事をしていたらアキラに腕を引っ張られキスをされた。


「服濡れたから脱がないといけないよなあ」


と、あの顔をする。結局二人で泡まみれになり、湯舟に浸かる。


「ほんと、どうしたよ」

私を後ろから抱きしめ顎を肩に乗せて言う。私は何も答えられないまま、二人でお風呂を出た。


私を抱えそのままベッドへ、いつもなら激しいキスが降ってくるのだが、


「今日はずっと下ばかり向いていたからな。ほら、顔上げろよ。おまえの顔見せてくれ」


そう言って優しい言葉を掛けてくれる。顔を上げアキラの顔を見ると涙が出た。


「おいおい、そんな可愛い顔されたら襲いたくなるだろ。これでも抑えてるつもりなんだからさ。話してみなよ」


「自分でも分からない。何て言えばいいの……怖いの……不安なの……それにずっと背中が寒い……こんなにアキラが側にいるのに」


そう言ってアキラの腕の中で泣いた。私が落ち着くまで優しく抱きしめてくれた。アキラの腕の中は安心する……いつもは、でもずっと寒い……


アキラは考える、前にもこんな事があった。ティアがずっと震えていた。あの日の前だ。


まさか……嫌な記憶が蘇る。あんな思いをするのは二度とごめんだ! 自分の腕の中にいる大切な者は絶対守る。どうすればいい! あの時、俺ではなく、あゆみがあの腕に捕まれていたら……考えたくないが、想定しないといけないのか? グッと歯を噛み締める。どうしたらいい! リー! お前はどうすれば良かった?


そんな事を考えていたら寝息が聞こえる。あゆみ寝たのか、こんなに泣いたら明日の朝、目が腫れるぞ。鏡の前で困っているのを想像したら笑える。明日から連休だ。まあいいか。これでずっと居てやれる。俺も一緒に居たいしな。休日出勤はやめよう! おやすみ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る