第5話 休息日
その日もアキラ達が飛び回っていた。
「太陽! そっちに行った!」
「任せろ! 捕まえた! 逃がすもんか!」
見た目、猿に似たそれは牙を剥く。アキラはパイロキネシスの炎で灰にした。
私は草木や虫、自然の声を聴きそれらの居場所を探す。それをアキラや太陽に知らせる、出現する場所や日時はマスターが予知をする。そうしてここ何日かで日本で起こる事故や災難を引き起こす原因をつき留めていた。
それがこの猿もどきだった。
その情報は他のスターチルドレン達にも伝わっていた。私はカフェでマスターと智子と一緒にいる。私も智子も加護を受けている前世でもそうだった。だが、私は死んでしまった。油断をしてはいけない。マスターがいれば危険は回避出来る、そうアキラがマスターに話した。なので私は会社を辞めて、今はこのカフェで働く事になった。昼はマスターが夜はアキラが側にいてくれる何て心強いのだろう。
こうして、ひとつの事件は解決した。
※ ※
しばらくの休息日、ある休みの日。
いつもと同じ遅い朝食を摂って寛いでいると、アキラが突然思い出し笑いをする。
「何? 急に」
「ん? 太陽には内緒な。実はセナだった時、サーシャに片想いしてたんだ。なんせおまえ達はお姫様だったし、皆の憧れの存在だったもんな。過ぎた想いと諦めていたんだよ。俺は英雄の肩書を持っていたから、ティアおまえとの結婚も王族は認めてくれた。が、サーシャはやんちゃだったからな、どうなるかと皆でよく噂してたよ。それに、良く俺達の所に来ては射撃なんかやってたんだ。その時のセナ、瞳をキラキラさせてサーシャを見てたよ。それが現世で願いが叶ってよかったなあって思う訳よ。現世で智子がサーシャって気づいてもそのままだったんじゃないか?」
「当たり! 智子が言ってたわ。太陽くん奥手だから私から告白したのって。それに、私が通い初めた頃には、智子がサーシャって知ってたわよ」
「やったじゃないか! きっと物凄く舞い上がってたと思うぞ。意中の姫からの告白だぞ」
アキラは、にかっと笑う。
「太陽くん、優しいのって、惚気てたわ。幸せそうで私も嬉しい」
智子の、はにかむ姿を思いだす。
「あいつ等、もうやったのかな? 初めての時なんかきっとガチガチに緊張してただろうな」
アキラがニヤニヤして言う。
「もう! アキラのエッチ、会って2回目でベッドへ連れて行く人には言われたくないわ」
アキラは笑顔で普通に言うけど、私はドキドキとする。アキラは口を尖らせて言う。
「仕方ないだろ、前世であれだけ愛し合っていたんだ。我慢できるかよ」
顔が熱い、まだ慣れないわ、こういうの……
「そういえば、智子最近キレイになってきたし、落ち着てきたわ」
アキラがそっと私の頬に手を当てる、
「あゆみの方がキレイだよ。今でも時々見惚れる位、益々キレイになっている」
「それはきっと貴方がいるからよ」
「そうか? 俺だけ置いて行かれるみたいで寂しくなる時があるんだ。あゆみが遠くに行ってしまうみたいな気持ちになる」
「大丈夫よ。一緒にいるじゃない」
頬に添えられた手に私は自分の手を重ねる。
「ティアーヌ、私の死はこんなにも貴方の心を傷つけたのね。これからは、その傷痕を少しづつゆっくりと癒していきましょう」
二人は何度もキスを交わす。
「これでもまだ足りない位なんだが、俺だけ独り占めしている事にちょっと罪悪感はあるんだ」
「?」
何の話かしら?
「ローランだよ。アイツは周りが驚く程、ティアに夢中で、まるで信者のようだったからなあ。俺とティアが結ばれたって知られた時、そん時俺はアイツに殺されると思ったね」
「大袈裟ね」
と私が笑うと、真面目な顔をしてアキラは言う。
「いやいやーあん時のアイツの目、本気でヤバかったぞ。それについこの前、大怪我したじゃないか。約束したんだ。ティアに合わせるって」
そう言ってはっと、口を塞ぐ。
「へぇーそうなんだ。なら、約束は守らないといけないわね」
アキラに、にこっと笑って見せた。
「今なら向こうは夕方かな?」
アキラは視線を逸らす。それを追いかけて見つめ返す。
「わかった、ローランに話すよ。いきなり行くと倒れるといけないからな」
「まあ、オーバーねえ」
「それ程なんだよ。アイツにとってのお前存在はな」
‥‥‥しばらく待つ
「あー、30分時間をくれだとさ。全く、何の準備が必要だ?」
「じゃあ、私も着替えるわ」
そう言って立ち上がるとスカートの裾を引っ張られる。
「あゆみは、そのままでいい!」
で、時間になって、テレポートする。そこには正装を纏ったローランがいた。私の前に膝まずき、
「ティアーヌ様お久りぶりです。これはまた、東洋人の姿もお美しい」
なんか思い出した。こんなキラキラした目で見られていたわ。後ろの人も私を見ている!
「今は、私は日本人であゆみと言います。なので現世の名前で呼んで下さい」
「ああ。貴方は相変わらず、ここでも自然に愛されているのですね。貴方の周りには妖精達が沢山いる」
‥‥‥確かに色々見えますよーー
「えーっと現世でのお名前、聞いてませんよね? 教えてくださる?」
「現世での名前は、ポール=クレールと言います。以後ポールとお呼び下さい」
さっと手をとられキスをされた。アキラが嫌がっているのがわかる。それが面白いのか、からかっているようにも見える。アキラってば子供みたいで可愛い。くすっと笑うと、ポールは目じりを下げる。
「やっぱり貴方は美しい! 笑顔はまるで光が弾けるようだ」
アキラにも言われた事がない言葉がポンポン出てくる。逆に可笑しくて笑いを堪えた。
「もういいだろう!」
と、アキラは引き剥がすように私を抱える。
「ちょっと待った! 帰る前に写真を一緒に撮ってもらえませんか?」
余りにも懇願する姿が可愛くて一緒に写真を撮った。
「じゃあな!」
そう言ってテレポートする。帰って来ると手を洗えと言われ、その後はベッドに押し倒された。私を見下ろすアキラの眉間にシワがよる。
「全く相変わらず気持ち悪いぜ。ティアの前だとアイツ別人になりやがる。まあ、王族の前だがらって事も解るが‥‥‥でもあの話方は気に入らない!」
そう言うと激しいキスの嵐が私に振ってくる。その後は当然のように激しく愛された。
ポールが撮ったあの写真には、前世の私の姿が写っていた。それに、気が付くのはしばらくしてからの事だった。これがなかなかの大事になっていく。その時はまだ誰も知らなかった。
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